2004-05-25 復氷
ココログの題名に「復氷」とつけておきながら、このところ氷のことを忘れていたけど、そろそろ「氷の季節」ということで、去年書いたのを読み返したり、webを探したり。
スケートが滑るのは「圧力のため」という説は、大分前に却下されているのだけど(でも、いろんな本に残っているらしい)、それに代わる「摩擦説」も決定的ではないらしい。富山大学の対馬教授によれば「とけた水ではなくて氷そのものが滑りやすいのだ」ということなんだけど、それ関連した「摩擦説矛盾論」が面白い。
1.摩擦を減らしてよくすべるためには水が必要
2.氷をとかして水にするためには摩擦が必要
つまり、目的どおりよくすへるようになったら、摩擦がなくなって氷がとけないんじゃないの?という話です。
ここまでは去年読んでいたんだけど、今頃になってあれこれ読んでみたら surface melting(表面融解)という話がでていた。つまり、融点以下であっても氷の表面には薄~い水の層ができている、というもの。これは氷に限らず、あらゆる結晶についていえることだそうです。(Wettlaufer, J.S. 1999 Ice surfaces: macroscopic effects of microscopic structure Phil. Trans. R. Soc. Lond. A(1999)357,3403-3425 )
でもまだ、この水だけでスケートが滑っているのかどうかはわからない。
surface meltingは、氷点以下でも起きるとはいっても、温度が低くなればなるほど水の層は薄くなっていって、最後には単分子層になるらしい。〈ドライアイスでものすごく低温にした雪の坂道〉を車が滑らずに走った、という話を聞いたけど、それも説明がつきそう。
もうひとつ、ひっかかっているのが「氷点以上でも凍る」こと。これも復氷なのか、ファラデー、ティンダルが唱えるように、「まわりに氷があると、薄い水の膜は(氷点以上でも)凍る」という話なのか。
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Comments
前野紀一著『氷の科学』北海道大学図書刊行会 が届いた。
半年くらい前に会社の近くの図書館でたまたま見つけて借りたんだけど、最近になってあれこれ調べていたら、この本をちゃんと読むべきと悟った。出版元のwebで売り切れていたのだが、amazonのマーケットプレイスで手に入った。同じところで古本まで買えるのだから便利なもの。
あらためて読んでみると、表面融解のこととか、スケートの話なんかも新鮮に読める。問題意識が違ってたんだろうなぁ、あの頃は。
氷を糸で切る「復氷実験」にもまだまだ謎が多いという話に納得。
Posted by: のぶ | 2004.05.28 01:47 PM