2004-06-15 空気を含まない水
Tyndallの "Heat considered as motion"が面白い。といってもそこいらで売っている本でもないので書評ではないのだけど、これまでは復氷のところばかり読んでいたが、今日読んだところに「空気を含まない水」がどういう性質を持つかいろいろ書いてあった。 pp127あたり。
われわれがふだん「水の性質」だと思っていることのいくつかは、実は「空気を含んだ水」の特徴であるという。水を熱した時に泡がでてくる。沸騰した時になべの底からボコボコ出てくるのは水蒸気。沸点になると水全体から出てくるのだけど、通常は底が一番熱いので底から出ている。 そこまで熱くなる前に、なべのへりなどにくっつく小さい泡、あれが〈水中に含まれていて空気〉である。これが結構重要な役割を果しているらしい。氷が透明になるず白くなるのは、水の中の空気が追い出されて氷の結晶のすき間に残ったものらしい。(どうしてそれが白いのかは知らないけど) このあたりまでは知っていたけど、今日読んでびっくりしたのは「水中の空気は、クッシヨンの役目をしている」ということ。空気を含まない水をガラス管に詰めて、トントンと叩くと、まるで粉を詰めるように水が落ち着いてきて、ちょっとゆらしても動かなくなる、というのである。かたい物の上に落とした時の音も変わるそうである。やってみたいなぁ。 あと、空気を含まない水は「突沸しやすい」という話も。突沸とは水が100度以上に「過熱」された状態で、何かの拍子に激しく沸騰することなのだけど、空気が入っていないと100度では沸騰しにくくなる(過熱しやすく)そうです。蒸気機関車のボイラーが突沸することがあるそうで、これは、長い間ボイラー内で加熱されて空気が追い出された水(湯)を加熱した時に起きらしい。
さて、その「空気を含まない水」の作り方だけど、よくかき混ぜながら熱するのがひとつ。同じく混ぜながら減圧するのもよさそう。やりすぎると沸騰しちゃうけど。もうひとつ「混ぜながら氷を作る」というのもいい。こうして出来た氷は透明のはずで、これを油の中に入れて加熱すると「空気を含まない水(お湯)」になる、というわけ。そして100度以上に過熱されやすい。最後に突沸した時は油もろとも飛んでくるので、恐ろしい実験である。
「空気のような」というくらいで、あってもなくても同じようなものかと思ってしまうが、〈水の中に溶けている〉というのは考えてみると大変なことで、水の分子のスキ間をうろうろしているわけである。体積は増えるのかどうなのかわからないが、この空気(つまりは酸素と窒素)が水分子の間にクッションのように入っている、という考えは面白い。
1800年代にこんなことを調べる人たちは本当にすごい。最近はこのあたりのことを書いたものはあるのだろうか。
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Comments
数年前、水処理に取り組んでいたときは溶存酸素計を使ったことがあります。この値が微生物によるプロセスの重要なパラメータでした。たしかセンサには白金が使われていたと思います。
しかしチンダルさんのやった物性の問題はとても新鮮に感じました。
Posted by: 271828 | 2004.06.17 07:07 PM