« 2004-06-15 空気を含まない水 | Main | 2004-06-19 日本トンデモ本大賞 »

2004.06.18

2004-06-18 犯罪と確率

『トンデモ本の世界S』(と学会編)のあとがきに、と学会会長の山本弘氏が、こんな趣旨のことを書いている。
 山本氏は「ロリコン」であることを何年か前にカミングアウトしている。しかし、違法行為は一切していない。他の多くのマニアたちも同様である。 幼児に対する犯罪があった時に、容疑者がロリコンだったり、アニメオタクだったりすると、「だから犯罪をおかした」というようなことを言うが、大部分のマニアやオタクは犯罪者ではないのだから、こうした扱いは不当である、と。

「のぞき」容疑の植草氏の裁判の冒頭陳述で、検察側は、植草氏が「のぞきビデオ」を持っていたり、セーラー服を着せた女性の写真を撮ったりしていたことを述べているそうである。 ビデオは合法的なものであり事件とは何の関係もない、ということくらい承知のうえで「心証を悪くする」ために書いているわけである。 上記の本が出たのがつい先日で、山本氏の文章に感心していたところに、今日、この話がでてきてタイミングの良さにビックリ。
植草氏には、不利な証拠がいろいろあるようだし、〈のぞきに興味を持っていたこと〉は間違いないと思うけれども、それと「実行する」こととの間には天と地との開きがある。横浜から後をつけてきて逮捕した、とかいうことがから、十分証拠はあるかと思うのに、ビデオのことなど持ち出すと、かえって「自信がないのではないか」と疑いたくなる。

ところで、あの冒頭陳述が「心証を悪くするため」と書いたけれども、それだけではない可能性もある。つまり、「のぞきビデオを持っていた」ことが「犯人である確率」を高くする、と思う人がいるだろうということ。

ちょっと計算してみよう。まず、以下を仮定する。

日本の全成人男性のうち1%が「のぞきビデオ」を持っている。
「のぞき犯罪」をするのは成人男性の0.01%(10万人にひとり)である。
「のぞき犯」のうち、80%が「のぞきビデオを持っていた」。

この時、「のぞきビデオを持っている人」が「のぞき犯」である確率はどれだけか?
さすがに、こういう聞き方をした時に「80%」と答える人はいないと思うが、
のぞき容疑で捕えられた植草氏を調べたところ、大量の「のぞきビデオ」が見つかった。
というあとに、上の「仮定」を並べて、では「植草氏が犯人である確率は?」と聞いたら
「80%」と思う人が多いのではないだろうか。

どこが間違っているか?

成人男性の数を5千万人とすると、
・のぞきビデオ保有者(0.1%) 5万人
・のぞき犯(0.001%)      500人
    犯人のうち ビデオ保有    400人
            それ以外     100人

「のぞきビデオを持っている人」が「のぞき犯」である確率は、
400/5万=0.8% である。

ビデオを持っているかどうかわからない段階での確率が0.001%であったのと比べると、「ビデオを持っている」だけで、たしかに確率は高くなるが、それでもまだ「100人にひとり」以下である。

上の話は、「のぞき犯の80%がのぞきビデオをもっていた」ということから、「のぞきビデオ所有者一般」が「それ以外の人」よりも「のぞきをする確率」が高い、ということを前提としている。このことも気に入らないのだけど、こうしないと話が進まないから仕方ないか。

なんだか、あまりうまい話にならなかったけど、備忘録のつもりで書き込み。

|

« 2004-06-15 空気を含まない水 | Main | 2004-06-19 日本トンデモ本大賞 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 2004-06-18 犯罪と確率:

« 2004-06-15 空気を含まない水 | Main | 2004-06-19 日本トンデモ本大賞 »