『現代日本の問題集』 日垣 隆
『現代日本の問題集』 日垣 隆 講談社現代新書 720円
日垣さんの本はどれも買うので、これを買った動機、というのは特にないし、「どういう本か」と聞かれると、とても説明の難しい本である。ホントにいろいろなことが、それも順不同かよ、と思うようにどんどん書いてある。で、
どれもが「問題である」のだから、やっぱりこの本は「現代日本の問題集」に違いないのだろう。
新書であるにもかかわらず、新聞か週刊誌を読んでいるような錯覚をおぼえるのは、イラク問題、北朝鮮拉致問題などの情報が「異常に新しい」から。2004年6月20日発行だというのに、橋田信介さん小川功太郎さんが殺された話が書いてある。今調べてみたら、亡くなったの(「殺された」の方がいいのか)は5月27。奥さんの「本望だったと思います」と語ったのはさらに後だからいうから、ほんとにギリギリの話が載っていることになる。
実は有料メルマガの6月3日に「校了直前に原稿を挿入した」と予告はあったのであるが、イザ出版されてみると、その「新しさ」に驚くばかり。もっともこの新鮮さを感じられるのは今だけなんだなぁ。
ところで、ここでいう「校了」というのは、
出版社の編集者+校閲と校正のプロ+著者による初校、再校などの末、出版社から印刷所に原稿データを手渡す前の最終的な校正作業のことだそうで、要するに「トンデモナク」ギリギリの作業だったということみたいです。
おっと、肝心なことを忘れそうになった。
かくして、いろいろと読み応えのある本なのだが、一番気に入ったのは、
第5章 「ショッピング・リテラシーを身につける」の中の「可処分所得をどこに投資するか」の話である。
親の小遣いを減らしてでも、子どもの学習塾や習いごとには金をかける。子ども部屋は作っても書斎は作れない。という事態を嘆き、こんなことを言っている。
大人が犠牲になって子どもに期待をかける、という家計のあり方は、明らかに後進国のメンタリティでしょう。子ども部屋も父親専用の書斎もない、というのならわかります。しかし、世界一の個人金融資産を保持しながら、自宅新築時に子どもの勉強部屋をつくっても大人の書斎空間がつくれない、という事態はもはや現代史的スキャンダルと言うほかありません。うまいこというなぁ。さらに、
ここでよく考えていただきたい。ここにシビれました。日垣さんは、自信をもって「自分がそうだ」と思っているから書けるのでしょうが、ぼくも、この部分は「いい線いっているな」と思えるのである。(おっと、「都合の良い意見はすぐに受け入れる」は、「だまされる第一歩」)
多少の学力偏差値アップが、このご時世でいかなる幸福を保証してくれるのか。そして何より、次世代から見て、「自分を磨く」ことに貪欲でない大人が魅力的に映るかどうか。自分を磨ぎ続ける「かっこいい大人」が身近にいることほど、家庭教育で重要なテーマはほかにないのではないか---。
実際には書斎はないのだけど、何度か息子(22才)に「おとうも、おかあも、年とってからもいろいろやりたいことやってるよね」というようなことを言われたことを思いだすと、「自分を磨いている」と見てもらえているのかもしれない。
息子いわく「以前のお父さんは『週末は寝ていて、ふだんはいつも夜遅く帰ってくる』というイメージだった」そうである。(毎日遅くまで「自分を磨いていた」としても、そうは見えないってことだな。実際、磨いてなかったんだけど)
なんだか、照れくさいことを書いてしまった。
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