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2004.09.07

最後まであきらめない

オリンピックで何度も何度も聞いたなぁ、この言葉。
実際その時言われていた人やチームは最後まであきらめなかったのは確かなんだけど、これってあえて言うことなのかなぁ?

サッカーの残り1分で10対0でリードされているチームがあきらめないのならともかく、ふつうの意味で「勝つ可能性がある」時にあきらめないのってふつうじゃないの? ましてや4年に一度、やっと勝ちとったオリンピック代表選手ですよ。柔道の最後の1秒で逆転の一本や技ありをとったのを見ると、「ひょっとしたら、他の選手なら諦めたのかも」と思わないでもないけど、たいていは、相手が警戒しているから技がかからないのであって「あきらめている」ことはないだろう。残り時間が少なくてリードされていればリスクは気にしなくてよいのだから、捨て身の攻撃はむしろ楽です。
そんなわけで、「最後まで諦めない気持ちがメダルに繋がりました」というような話はきらいです。
ましてや、日本人が特にそうであるかのような表現もね。

あ、そんなことを書きながらも「これはあてはまるかな」というのもあるな。たとえば、
・サッカーのはじめの10分で5-0でリードされた
・バレーボールで2セットとられて3セット目も8対0でリードされた
という状況から逆転するかどうかは、たしかに「最後まで諦めない」気持ちがあるかどうかで差が出てくるかもしれない。
・柔道で技あり、有効×5、有効×3、効果×3
になった、というのは似ているようでちょっと違う。なぜなら「1本勝ち」という、逆転の必殺技があるから。レスリングならフォール勝ち、ボクシングならノックアウト。こういう競技では「諦め」なくてもよい。むしろ、〈まだ、ふつうに戦っても間に合う〉にもかかわらず、「一発狙い」に走ってしまうことの方が問題かもしれない。

サッカーやバスケットボールのような時間制のゲームで得点差がつくと面白くないのは、「1本勝ち」がないからかもしれない。野球は、時間ではなくイニングでやる上に、「1本」ではないが、ホームランというものがあるので、終盤の逆転が起こりやすい、ということでしょう。

最後にちょっと違うけど、「最後まで諦めない」系の話で、きらいなものをひとつ。
バスケットボールの残り30秒、10点差でリードされているチームのコーチが「最後までしっかりやれ」と怒鳴る。相手チームが攻めてくれればまだ格好がつくが、ボールを回しはじめているところに、ガムシャラに向かっていってファールをする。フリースロー……。

バスケットに詳しくない方のために言いますと、残り時間が少なくてリードされている時に「わざとファールする」のはひとつの戦法です。特に相手のフリースローになるケースでは、フリースローを落としてくれればこちらのボールになる可能性が高くなります。そうでなくても、とりあえず時計を止めるだけでも意味があります。 しかし、逆転の可能性のない時にやるのはナンセンスです。

「試合は勝つためだけにやるのではない」ということではありましょうが、そういう時こそ「ファールをしないディフェンス」をするとか「ふだん打ったら叱られるようなシュート」をする、とか、時と場合を考えていただきたい。 まずいことに、この時間帯には「ふだん試合に出ていない」選手たちが出ていることも多いので、ますます事態は悪化するんだよね。

元の話にちょっと戻るけど、サッカーやバスケットのように「点差がつくとつまらなくなる」競技は、そのかわり「最後まで僅差の時は特に面白」という利点がありますね。そう考えると、野球は「大逆転もあれば、0対0の試合も面白い」という、実にエンターテインメントとしてよくできた競技であります。

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