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2004.09.09

液体の圧力

水圧について悩んで考えたことがあるので、メモがわりに書いておきます。
教えてもらえることがあればコメント観迎します。

海の深いところに行くと、「水圧」が高くなります。だいたい10メートルにつき1気圧で、水深100メートルなら、水の10気圧に加えて大気圧分を足して11気圧になります。というか、そう教わっています。1気圧というのは「1cm2あたりにかかる力」だから、底面1cm四方で高さ10メートルの水柱の重さ(+大気の重さ)が11気圧というわけです。

さて、それだけ重いものが上にあれば、重みがかかるのは、まあ直感的にわかります、頭の上に石を置かれたようなもの(したことないけど)だから。 ところが「水圧」というのは、「上から下」にだけ、かかるわけではありません。横方向にも、上方向にもかかってきます。100キロの石が横にあっても、その下敷きにさえならなければ心配ありませんが、水(液体)ではそうはいきません。

実はこんなこと、特に不思議に思わない方が普通でしょう。ところが「気体の場合」を知ってしまうと、かえってわからなくなるのです。

大気圧は「空気の重さ」と表現することがあります。水圧と時と同じように「空気の柱」を考えれば、空気といえども1cm2あたり1kgくらいの重さがあるので、タタミ1枚(約1.61m2)の上なら、1.6トンくらいの重みがかかっているのですが、人もタタミも生まれた時から、こうした大気圧にさらされているので、重くも痛くもありません。

さて「空気の重さ」といいましたが、単純にそう考えてしまうと「部屋の中はどうなの?」という疑問がわきます。だって、屋根には重みがかかるかもしれないけど、支えられている部屋の中にはかからないんじゃないか、と。
もちろん実際には部屋の中にも大気圧がかかっているし、大気圧は横向きにも上向きにもかかっています。
それは、地表近くの空気は上空の空気の重さのために押しつぶされて、その結果として1気圧の空気としての「粒」が飛び回っているからです。(ああ、やっぱり原子論なくしては説明できない)この空気の粒が四方八方にはね回ってぶつかった結果が「大気圧」なので、下向きだけでなく、あらゆる方向を押しているのです。

こうして、大気圧の場合は「空気の重さ」を直接意識しなくても「とにかく。そこに1気圧の空気があるからだ」と納得することができます。 ところが、水の場合は水深100メートルの水だからといって、ふつうの水の10倍も密度が高いわけではありません。つまり、地上の水と比べて10倍の数の水分子があるわけではありません。

流体ということで気体と同じように考えようとしたけれども、ここでは固体のイメージで考えてみよう。
固体、水の話をしているのだから氷がいいや、の上に重いものを載せたら氷の表面の分子は必死に押し返します。耐えられなくなれば壊れてしまうでしょうが、そうでなければ上からの重みと、押し返す力がつりあいます。
つぶれる時、横方向にも多少は伸びるかもしれませんが、上からの重みがそのまま横向きにもかかるということはありません。

液体の水に戻ると、重みがかかると水分子は押し返す。押し負けると下の分子にぶつかって、そいつとも押しあうけど、そうこうするうちに横の分子ともぶつかって結局四方八方に動いて、「まわりじゅう」に向かって「上からの重みの分」の圧力がかかる、ということなんだろうか。

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Comments

もっとも身も蓋もなく答えてしまえば、気体も液体も話は同じで、ただ単に状態方程式(圧力、密度、温度の関係)が異なっているだけ、ということになります。液体だって、もちろん、局所的に見ただけで圧力の高い低いはわかります。圧力の高い液体は密度が高い。ただし、その密度変化が気体ほど大げさなじゃないということでしょう。
明日から学会で出張であせって準備しているので、「ゆるみ」のない書き込みになってしまったわい。すみません。

Posted by: 田崎晴明 | 2004.09.10 06:33 PM

しかし、パスカルの原理って、「原子論なくしては説明できない」ものなのかな? マクロな流体っていうのは、そういう性質のものなんだと言ってしまってそれで論理的に(あるいは、気持ち的にも)困るということはないような気がするのだけれど。
言い換えれば、原子を信じない賢い奴(マッハとか)と論争したとき「パスカルの原理は原子論じゃないと説明できないよ」とか言っても速攻で論駁されてしまうんじゃないか、ということです。
学会の準備で忙しいとかいいながら、書いてしまう・・

Posted by: 田崎晴明 | 2004.09.10 06:40 PM

わーお、田崎さんからコメントをいただけるとは!

液体の密度の変化が「気体ほど大げさでない」というのが新鮮でした。圧力が密度に反比例しなくたっていいわけだし、そもそもホントにpv=nRTが成立するのは理想気体だけですよね。

ぼくにとっての驚きというか、あきれてるのは、理学部化学科の修士課程まで行っておきながら、このあたりがまるでわかっていないってこと。さらに、(憶測ではありますが)それはぼくだけではないだろうっとこと、です。

Posted by: のぶ | 2004.09.11 11:06 AM

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