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2004.10.03

熱力学いろいろ

チンダルの「熱」の話を読むのに、「ふつうの熱力学」もわかっていないのはまずかろう、と今さらながら熱力学の本をいくつか読み始めた。

□『熱力学 -現代的視点から』(田崎晴明著)
 2月に買って20ページくらい読んで放置してあったのを引っぱり出してピストンで重りを持ち上げるところとか、カルノーサイクルなどを見てみる。前よりはかなりわかった気がするけど、「数式が・・・」と一般的な反応をしておく。

□『熱とはなんだろう』(竹内薫著 ブルーバックス)
 図書館で見つけて読んでみてます。この人、たくさん本書いている有名な人だったんですね。先生ではなくて「著述業」だって。 パラパラと読んでいたら〈示量変数の時間変化が非常にゆっくりしているために…〉というようなことが書いてあったので、「ふうん、田崎さんもよく〈示量変数が〉とか書いていたな」と思ったら、田崎さんの本からの引用だった(140ペ)。 このあとに、こんなことが書いてあった。

すでにでてきたが、この本を読んで、僕は大いなる衝撃を受けた。なぜなら、熱力学の専門家と量子力学とか素粒子とかをやっている専門家とのあいだには大きな見解の相違があることを知ったからである。
この前には、『エントロピーから化学ポテンシャルまで』(渡辺啓著)が引かれているので、それとの対比なのかな。実は、まだどちらが「量子力学とか素粒子とかの専門家」なのかわかってないんだけど、田崎さんのことなんだろうなぁ。田崎さんの本で印象に残っていたのが〈ミクロな世界についての知識を「カンニング」せず、マクロな手段で観測できる量だけに基づいて、完結した体系を描き出したい〉と「量子力学などに頼らない立場」をとっているんだろうなと思っていたんだけど、そういう問題ではないか。田崎さんの「熱力学と普遍性」については、別途ちゃんと感想を書かなくちゃ。なんて、そんな大それたこと書けないが。

□『なっとくする熱力学』(都筑卓司著)
 紀伊国屋の「物理学--熱力学」の棚で買ってしまった「いかにも」というようなシリーズの本。ブルーバックスでおなじみだよなぁ、この人。「この書は教科書の副読本として使われることを意図して書かれている」なんて、いきなり書いてあったので、ちょっとドキッとしたが、まあ、教科書じゃないんだからいいでしょう。

□『熱学思想の史的展開 -熱とエントロピー-』(山本義隆著)
 田崎さんの本の中で紹介されていたので買おうと思ったら、出版社で在庫切れみたいだったので、ネットの古書店で買いました。4800円→3000円。題名がスゴイから、ふつうにな手に取ることもなかっただろうけど良い本です。って、ちょっと読んだだけだけど、ラムフォードの実験が「熱素説」を打ち破ったことを強調しすぎるのは「神話」であるなどなど面白い。この「ラムフォードが熱素説を消滅させた(annihilate)」とはじめに主張したのがチンダルらしい、と書いてあるのだけど、これは、まさに今読んでいるチンダル本に書いてあることで、たしかに、そんなことが書いてある。
この話に絡めて、こんなことが書いてある(231ペ)

これまでの--少なくとも1950年代までの--物理学史は,現代から見て「正しい」理論につながる経路にのみ脚光を当てるきらいがあった,現代から見て意味のある研究のみを重視し,加うるに,あたかもそれらが後の「高い立場」での統合を予見してなされたかのように現代的な解釈を施し,他方でその経路から逸脱したものを単なる誤謬や異端として片づける立場といえよう。

いわゆる「後付け」ってやつですよね。ヒドイ話だな、と思いつつ、自分もついついそんな立場をとっていそうなので、真摯な気持ちで読んでしまった。

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Comments

そうそう。「後付」は高橋さんもされてますよ。そして、ぼくも。ぼくらの読むものがそういうのばかりで、どっぷりと毒されているんだと思う。
この前、つっこもうと思ってタイミングを逃したんですが、前に高橋さんが書かれていた「原子論者は skeptic であった」というのも、「後付」の最たるものじゃないかな? たとえば19世紀後半で、実証的であろうとし、合理的であろうとし、懐疑的であろうとしたのは、まさにマッハらの反原子論者だったのだと思います。実証されなくてもイケイケで楽観的に理論をすすめていったのが原子論者たちだったのでしょう。

Posted by: たざき | 2004.10.05 07:27 PM

「後付けの時代」かぁ。マージャンじゃないんだが。
田崎さんからのコメント(ツッコミ)はドキドキするけど、誘っているような書き込みなんだから、期待してたんだろうなぁ。でも、予定外の方向でやっぱりドキドキもの。
「実証されなくてもイケイケで楽観的に理論をすすめていった」
ってのが面白いなぁ。
こうして次々と、知らないことがでてくると、「勉強してないなぁ」と思う一方、「おたのしみはこれからだ」って感じでウレシイね。「イケイケで楽観的」ってとこだけは原子論者並み?

Posted by: のぶ | 2004.10.05 08:46 PM

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