放射熱日記 2005-01-26
赤外線温度計で測った「空の温度」が、放射冷却の理解に役立つのでは、という話をこの前書きました。
たしかに、晴れている時は-30℃をさしているものが、曇った日には+1℃などになりますから、「違い」はよくわかります。しかし「空の温度」を表わしているわけではありません。宇宙のかなた(絶対零度に近い)ほどではないにしても、雲のあるあたりは、-30℃どころではなくもっと冷たいでしょう。つまり、純粋に「空からの赤外線」だけを測ることはできなくて、まわりから反射してくる赤外線も一緒に測っているものと考えられます。これは、気温が下かってくるにつれて、「空の温度」も下がってきたことからも想像できます。
「空の温度そのもの」でないことが気に入らなかったのですが、さらに進めて考えてみると、ある物体(特に放射冷却を問題にしようとするモノ、クルマなど)の上で、赤外線温度計を上に向けて測った時の温度というのは、「物体が受け取る放射熱」そのものなのではないかと思えてきました。空からの赤外線はもちろんのこと、まわりから反射してくるものだろうが何だろうが、実際に「受け取る」のですから。
こんな時は、安物の赤外線温度計は、ありがたいことに測定角が大きいので「まわりからの赤外線」をしっかりと捕えてくれそうです。こうして測った温度が例えば「プラス3度」であれば、放射冷却で凍ることはなさそうですし、「マイナス30度」であれば、たとえ、まわりの気温が少々高くても、物体が放射する熱を補い切れなければ、零度以下になることが期待できます。 念のため、ですが、物体から熱が放射される速さや量は、「空の温度」とは関係なく決まります。ただただ「空からの放射熱」による、補給が多い少ないか、という話です。
試しに、木かげや、屋根の下で同じように上を向けて測ってみると、「空」よりも、高い温度を示すはずです。だから、放射冷却も少なくなるはず。
これは面白い、と思って、昼間にもいろいろな物体の「受取っている放射熱の温度」を測れるかと思ったのですが、多分それはダメでしょう。何故なら、赤外線温度計は一定の波長の赤外線しか測っていないのに対して、昼間の光は太陽から受取る熱は可視光線からなので、この温度計では測定されないからです。太陽に真っすぐ向けて測っても「0度」などという数字がでます。測定者にはガンガンと陽が当たって暖かいにもかかわらず。
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Comments
>太陽に真っすぐ向けて測っても「0度」などという数字がでます。測定者にはガンガンと陽が当たって暖かいにもかかわらず。
へぇ~。やっぱり太陽光の成分で赤外線のエネルギーは少ないんですねぇ。まぁ表面温度は6000℃や言うし、エネルギーの中心は黄色くらいらしいしなぁ。
参考 http://www8.ocn.ne.jp/~yohsuke/solar_physics.htm
でも、のぶさんの放射温度計ってドッチもレンジが低い方は-20℃ってなってるみたいですけど、一応-30℃まで表示はするんですね。
Posted by: 温泉カワセミ | 2005.01.27 12:07 AM
>へぇ~。やっぱり太陽光の成分で赤外線のエネルギーは少ないんですねぇ
これ、正確に言うと「地表に届く(遠)赤外線は」です。
実は、ぼくも勘違いしていたのですが、太陽(6000度)からの電磁波エネルギーのピークは黄色だか緑色だかのあたりにあって、地表温度(300K)のピークが赤外にあるのとは大きく違うのですが、よく見れば裾の方の赤外領域でも、しっかりと300Kよりも強いのですね。にもかかわらず、地表に届かないのは大気中の水分や二酸化炭素に、ほとんど吸収されちゃっているからというわけです。このあたりは地球温暖化の話で出てきますが、なんとチンダル先生が1800年代にすでにそのあたりをことを書いています。
(地球温暖化と二酸化炭素の話には、ここ2週間ほど凝っていたので、近々少し書きます)
ぼくの細長い方の温度計は、スペック上は-20~+110になっているのですが、実際には-32~200くらいまで表示されます。精度のほどはまったくわかりませんので、-32が-20より低いのかどうかだってわからないのですが、何か数字が出てます。
Posted by: のぶ | 2005.01.27 09:20 AM