放射熱日記 2005-01-11
チンダルの本("Heat considered as A Mode of Motion")には、まだまだたくさん radiant heatについて書いてある。「放射冷却」に関する話で、ベンガルでの氷の作り方がでている。浅い穴にワラを敷いた上に置いた皿に一度沸かした水を入れておく。水は放射冷却され、ワラは熱伝導が悪いので地面の熱をもらうことなく、朝までには「氷になる」というわけ。このことは、Dr.Wellsが書いているそうで、そこには「晴れた空」が条件だと書かれているが、チンダルはそれに加えて「乾いた空気」であることが必要だと書いている。水蒸気が強力な「熱吸収(放射)体」であるから。
逆に放射冷却を防ぐためには、「何かが上にあればよい」ので、他は凍っているのに葉の陰は凍っていない、ということも起きるそうで、「クモの巣があるだけでも防げる」とか。
[Lecture XII より]
その気になって読んでみると、いろいろなところに放射熱の話はあるもので、近角聡信さんの『日常の物理事典』、同『続・日常の物理事典』(*)を久しぶりに開けてみたら、いくつもがでていた。中でも「ガスの炎のうち、青い炎は気体なので放射熱が少ないが、赤い炎は炭素の粉が入っているので放射熱が高い」とか「赤外線コタツは、中の空気を暖めるのが目的ではないからふとんは、厚くなくてもいい」とか「アルミ箔による断熱の効果」とか、いろいろと嬉しくなるような話が書かれている。この本は索引に「熱」とか「放射熱」という分類があるし、文中にもリンクが張りめぐらされているので、こうした探し方には非常に便利である。
料理の話がよくでてきて、「ローストビーフを切り分けるのは主人の仕事」なんて書いているのだけど、ぼくは40年くらい前に近角さんの切り分けたローストビーフ(多分ね)を食べたことがあります。
(*) 05-02-16 当初、書名をあやまって『日常の物理学』と書いてしまいました。その後『日常の物理学』という同じく近角さんによる別の書物を読んで、「同じ題名とは変だなぁ」と調べているうちに、自分が間違えていたことに気付いて本日修正しました。
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Comments
「青い炎」と「赤い炎」の話を読んで思い出したことが一つ。
私の亡父は生まれ育った地域の地場産業として知られるガラス細工の職人をしていたのですが、最初は蜻蛉玉とか動物の小さな置物を作製していたのです。これらのモノは融点の低い鉛含有ガラスを原材料としていたため、灯油燃料のバーナーを使っていましたが、これは正に上記の「赤い炎」で、毎日毎日朝から晩までこの炎に曝されていた父の手の指は、表面が黒く炭化していました。
これが後に作っている製品の主体がガラス製のマドラーに変わると、人の口に入るもの(お酒)を掻き混ぜるためのモノに鉛含有ガラスは使用出来ませんので、高融点の原料に変わるとともに、バーナーもプロパン+酸素のバーナーになったのです。もちろん、このバーナーの「青い炎」の方が温度は高い訳ですが、放射熱が減ったのか、私が物心ついてからずっと黒く焦げていた父の指が、次第に普通の肌に戻っていったのです!
まぁコレと放射熱が、私の頭の中で繋がるのは、だいぶ後になってからの話ではあるのですが・・・・・
Posted by: 温泉カワセミ | 2005.01.11 11:16 PM
>温泉カワセミさん
青い炎と赤い炎の、まさに絵にかいたようなお話、ありがとうございました。ガラス細工そのものは炎の伝導でやっていたとしても、お父様の指には放射熱があたっていたのかもしれませんね。
いつも楽しいコメントをいただいていますが、今回ばかりはビックリの嬉しさでした、ありがとうございます。
Posted by: のぶ | 2005.01.11 11:26 PM