熱は温度の低い方にのみ流れるのか?
放射熱日記 2005-01-13
◆放射製氷失敗
昔の人のマネをして放射冷却で氷を作ってやろうと、発泡スチロールに水をかけて、〈上空に邪魔のないところ〉に置いておいたがダメだった。〈凍らなかった水〉の温度を測ることもしなかったけれども
さわった感じでは、大して冷えることすらなかったのかなぁ、というところ。気温が零下になって凍ってしまうことを心配していたのがおかしい。
マンションの1階の庭に出しておいたのだけど、「広い野っ原じゃないとダメなんじゃないの?」と息子に指摘された。たしかに「真上」には何もないものの、まわりには建物が迫っているではないか。これではまわりから放たれる熱線は防げない。実は、「まわりの空気で暖められないように」と思って、発泡スチロールの「箱」の底に皿を置いたものもあったのだが、こんなの箱の内側の熱線がバシバシ降ってくるではないか。
◆放射冷却ネタ
「放射熱」で検索してもあまり面白くなかったが「放射冷却」だと、出るわ出るわ。気象の記事はもとより、建築でも「ビルの谷間は放射冷却は少ない」なんて話がでていた。(これを読んでいたにもかわらず、上の製氷実験では谷間に置いていたのだな)
放射冷却に関する研究結果もいろいろでていたし、さらには「パラボラクッカー(パラボラ型の反射板の(文字通り)焦点に食料を置いて焼く器具)」による製氷を試みた実験(ダメだったそうですが)も見つかったので、どうやらぼくの出る幕はなさそうです。
■熱は温度の高い方から低い方に流れるとはいうけれど
さて、今日のメインはこれ。
きのうの温泉カワセミさんのコメントを読んでいて気がついたことだけど、「熱は温度の高い方から低い方へ流れる」というのは誤解を招く表現だと思えてきた。実際放射冷却の説明で「絶対零度付近の宇宙に対して熱を放射するので」などと書かれているのを見ると、物体があたかも〈自分より温度の低い物を探して、そこに向かって赤外線を放射〉しているかの如き印象を受ける。そんなバカなことはある筈もなく、モノはまわりが熱かろうが冷たかろうが、そんなことは何も知らずに淡々と熱を放出し続けるわけで、まわりの方が熱ければ〈放出する以上の熱を吸い込む〉ということでしょう。宇宙が相手だからといって、特別にたくさん熱を放出するわけではなくて、単に「もらう熱が少ない」から冷える(凍る)ということ。
お天気キャスターの森田さんのHPにこんなことが書いてあった。「放射冷却現象」について、という質問に対して、こう答えています。
「現象」などという大それたものではありません。テレビで放射冷
却「現象」という人がいたら、それは気象をまったく理解していな
い人といってもいいと思います。
すべての物体は、たえず熱を出しています。この熱を出して冷える
ことを「放射冷却」と言っているのです。なんのことはありません
。誤解を承知でいえば当たり前のことを難しい言い方に置き換えて
いるだけなのです。
たとえば熱いフライパンがあるとします。そのままにしておけばフ
ライパンはどんどん冷えていきます。このとき「放射冷却によって
フライパンは冷えている」といいます。ただこの冷え方は条件によ
って違います。もしフライパンにドライヤーの熱い空気をあててい
たら、あんまり冷えないでしょう。
大地も同じで昼間は太陽が出ていますから、放射冷却していてもあ
まり冷えないのです。逆に夜間雲がなくて風が弱いと、放射冷却が
妨げられないので、温度が下がることになります。
少々乱暴な書き方だとは思いますが、放射冷却を「絶対零度の宇宙」とかごちゃごちゃ言わずに「モノはそもそも冷えるものである」という切り口で説明しているところがなかなか新鮮。もっとも、熱の放射ということをよく知らない人(つまりはほとんどの読者)が読むと、〈晴れた冬の日〉には何もかも冷え込みそうに思えちゃいますね。
『熱は、温度の高い方から低い方に〈のみ〉流れて、冷たいものからは〈一切発せられない〉』と思っている人って、案外いるのではないのだろうか?
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Comments
>モノはまわりが熱かろうが冷たかろうが、そんなことは何も知らずに淡々と熱を放出し続けるわけで、まわりの方が熱ければ〈放出する以上の熱を吸い込む〉ということでしょう。
そうですね。物質は熱(というかエネルギーと言い換えるべきかな?)を周囲に発散(伝達)し、かつ同時にヨソからのエネルギーを吸収してるので、全部の要素を考えるとややこしいから、「差し引き」することでモデルを単純化して考えてるだけですもんね。
Posted by: 温泉カワセミ | 2005.01.13 11:03 PM
「熱を発しもするし、吸収もする」ということは、わかればどうということはないので、その後単純化してもいいけど、教えられなければわからないぞ。誰が「氷から熱が出ている」などと思うか。
ここいらを考えていくと「平衡」というものが大切だなと思えてくるなぁ。
Posted by: のぶ | 2005.01.16 04:35 PM
ううむ。ちょっと、まずくなってませんか?
話のポイントは、放置しておけば、温度は均一化していくということですよね。「モノはまわりが熱かろうが冷たかろうが、そんなことは何も知らずに淡々と熱を放出し続けるわけで」というのは、かなり意味不明。そんな熱の放出は実測できないのだから、言っているだけになります。
それよりも、まずいのは、引用にあった「フライパンが冷めるのを放射冷却という」というやつ。電磁波を放射して冷えることを「放射冷却」というんじゃないの? フライパンの場合、空冷がどれくらいの割合で、電磁波の放射による冷却がどのくらいの割合かは知らないけど、いずれにせよ空気の対流で冷めることを「放射冷却」とは言わないんじゃないのかな? それとも、そういう言葉の使い方があるのかな??
Posted by: たざき | 2005.01.20 05:35 PM
たざきさん、コメントありがとうございました。
まず後の方の「放射冷却」の件。「学術用語」ではなさそうなので厳密な定義はないと思いますが、
「〈電磁波放射による冷却〉を主として冷えること」ではないかと思います。まわりの空気の対流や、他の伝導でも冷えているかもしれないけれども、放射の効果が大きいであろう時に言うのではないでしょうか。気象の他、建築関係で使われているのを見ました。
《「モノはまわりが熱かろうが冷たかろうが、そんなことは何も知らずに淡々と熱を放出し続けるわけで」というのは、かなり意味不明》 という件、何か大きな勘違いをしているかもしれませんが、ぼくの理解は、
・物体はその温度に応じた電磁波を放射している
(同時に、まわりからも電磁波を吸収している)
・まわりの温度の方が高ければ、もっと熱くなるし、まわりの方が低ければ冷たくなる。
・〈ある温度において放射する電磁波(の量や種類)〉は、まわりの温度にはよらない
というもので、この最後の部分を「何も知らずに淡々と…」と書いたわけです。
どうして「何も知らずに」などと書いたかと言えば、「熱は温度の高い方から低い方へ流れる」ということから、電磁波放射も「自分より温度の低い相手を見つけて、そこに対して放射する」というイメージを持っていたからでした。
説明になっているかなぁ。
Posted by: のぶ | 2005.01.21 01:21 PM
なるほど。
電磁波の放射による熱のやりとりだけを考えるなら、「モノはまわりが熱かろうが冷たかろうが、そんなことは何も知らずに淡々と熱を放出し続けるわけで」と言ってもいいでしょうね。
でも、現実の世界では、物質どうしが接触して熱をやりとりすることも多い。そういうときは、「どちらも熱を出していて多い方が勝つ」とかいうイメージは通用せず、二つの物質がどう接触してどう相互作用するかが効いてくると思います。
森田さんの「フライパンも放射冷却」はトンデモ発言でしょう。やっぱり。
Posted by: たざき | 2005.01.21 06:23 PM
「電磁波放射熱」に熱中するあまり「他の熱移動はとりあえずおいておいて」という発想が過ぎました。
コーヒーカップが冷める話も考えているのですが、
・空気との伝導
・カップと机との伝導
・気化熱
などに対して、カップからの放射熱がどの程度なのかな、というのが興味があります。でも、実は「カップ自体を暖めるのに使われる熱」がかなり大きくて、そこでの温度の低下が問題だということもわかりました。(だから「予熱」するんですけどね)
森田発言引用あたりは、後ほどコメント追加しておきます。
Posted by: のぶ | 2005.01.22 10:51 AM