ヘラクレイトスの言葉
板倉聖宣さんが雑誌『たのしい授業』2005年2月号に「ヘラクレイトスの言葉」という話を書いています。
5BC頃の人といわれるヘラクレイトスが、言ったとされる言葉を集めた「断片集」(fragments)の中に、こういうのがあります。
田中美知太郎訳『ヘラクレイトスの言葉』弘文堂(アテネ文庫 1950, 1)
予想しなければ、予想外のものは見出せないだろ。それは
そのままでは捉え難く、見出し難きものなのだから。
これについて、
1.他の訳では「予想」ではなく「期待」になっている。
2.こんなに良い言葉なのに、引用されているものを見たことがない
という話があります。
1については、例えば
日下部吉信編訳『初期ギリシア自然哲学者断片集(1)』ちくま学芸文庫(2000.11) 302ペ,「クレメンス『雑録集』II 17」
期待しなければ、望外のものを見出すこともないであろう。
それは[その時には]探究されないもの、道の通じないもの
にとどまるから。
となっています。「予想」や「期待」は恐らく英語の expect を訳したものと思われます。
英訳(原典はギリシア語)の例は、例えば以下。
Charles H.Kahn "The art and thought of Heraclitus"
He who does not expect will not find out the unexpected,
for it is trackless and unexplored.
T.M.Robinson "Heraclitus"
If
not discover
and intractable.
以上は板倉さんから紹介されたものですが、さらにwebを検索してみることにしました。
Heraclitus(Heracleitus, Heraclitis等、綴りがイロイロあって少し苦労)と"expect unexpected"で探すと、あるわあるわ、たくさんでてきました。
その多くは「名言集」のようなものでしたが、いくつか興味深いものを発見、中でもこれ、
"HERACLITUS The Complete Fragments"
Translation and Commentary and Greek text
by William Harris, Prof. Emeritus Middlebury College
http://community.middlebury.edu/~harris/SubIndex/philosophy.html
断片集の全訳と解説、しかもギリシア語原文までついた42ページのPDF.
しかも、この解説が、アインシュタインなどが登場する科学っぽいものなので嬉しい。

【試訳】
予想できないことを予想しなければ、真実を見つけることはできない。
なぜならば、それは発見し難く、成しえ難いものなのだから。
もうひとつ、ビックリしたのがこれ、
『Expect the Unexpected or You Won't Find It:
A Creativity Tool Based on the Ancient Wisdom of Heraclitus』
Roger Von Oech
件の言葉をタイトルにした本が出ていたのです。それも、このOechさんというのは、いろいろ書いている人で、翻訳もでていたのです。
『創造力のスイッチを入れろ!』
ロジャー・フォン イーク
ダイヤモンド社
ヘラクレイトスは、日本でよりも、アメリカでの方がずっと人気があるように思えます。
February 4, 2005 at 10:55 AM in 科学 | Permalink
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