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2005.03.30

絵のかけない大人にもかけた

VFMI0130

この写真の左側は「もやし」そのもの、右側は、それをぼくが写生したものです。
「それがどうした」と言われると困るのですが、ぼくにとって「絵をかく」というのは、・・・と何かにたとえようかと思ったけど、たとえる相手に失礼だからやめた、というくらい苦手なことなのです。小学校以来、まともにかけたことはないし、中学生の時は、同じものの写生ばかりしていたし。

どうしてかけたか&「かく気になったか」といえば、「キミ子方式」というやり方に従ったからです。「キミ子方式」というのは松本キミ子さんという人が考案した「絵のかき方」で、詳しくは「キミ子方式とは」を見ていただくとして、その特徴は、
1.絵の具は三原色と白しか使わない
2.下書きはせず直接絵の具でかく
3.描きはじめの一点を決め、となりとなりへと描く
4.画用紙がたりなくなったら、たせばいい。あまったら、切ればいい
5.タイトルをつければ、どこでやめてもりっぱな作品
などです。

「輪郭」というものを描くことはなくて、いつでも中身ごと描きます。
「構図」というものを決めないで、いきなり「部分」から描きはじめるので、途中で紙が足りなくなったり、逆に小さいままで終ってしまうこともあるけれども、速にかれば紙をつぎ足し、小さければ切ればよい、という潔さです。


松本キミ子・堀江晴美『絵のかけない子は私の教師』(仮説社)という本があるのですが、キミ子さんはご自身も夫も芸術家で「絵をかけるのは当たりまえ」と思っていたのに、わが子が絵をかけなかったことをがキッカケのひとつとなってこのやり方を考案したと聞いています。

上の写真の絵は、ぼくが先日(2005-03-27,28)に八王子で行われた「東日本たのしい授業フェスティバル」の講座の中で描いたものです。筆や絵の具にさわったのは20年ぶりくらいかもしれません。はじめに「色づくり」といって、「三原色と白」だけで、15種類以上に色をつくって紙にかくことをして、次にこの「もやし」をかきました。そこまでで2時間くらいはかかっているでしょうか。

もやしの描き方の面白いところは「生えた時と同じ順番に描く」というところ。
「もやしはどこから生えるか知ってますか?」と聞かれるのですけど、「根」からです。で、その根がどこから生えるのかといえば「種から」なのだけど、現時点ではもう種のカラは上の方に行っちゃってるんですね。というわけで、白くて太い茎の部分の下の根から下に向かって描いて、次に同じ起点から上に向かって茎を描くのです。これも「成長する時と同じ方向で」というわけですね。

「キミ子方式」はもっともっと「深~い」のですが、ぼくのような人が3時間の講座を受けるだけでも、突然〈絵をかけるようになる〉ことがあるというだけでも、すごいことだと思います。
キミ子方式については、キミコ・プランドゥのページをご覧くどさい。(上のリンクのホームです)

Windowsの「ペイント」で強引に描いてみました。
moyashi

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ハンコは誰のため?

印鑑登録したハンコ(実印)は、「本人が押したものである」ことを、かなり信頼できるものなので、意義はよくわかります。銀行印も同様。これらは、「照合」するために印影が登録されているから、本人ないしは名義人の特定に使えるわけです。

ところが、いわゆる「三文判」の使われ方というのはどうでしょう。
・書留郵便などの受取り時
・アルバイト料をもらった時
・回覧板
・署名運動
などなど、最近は「サインでいいです」ということが増えてきたとはいえ、ハンコを要求されることはまだまだ多い。しかし、「三文判でいい」ということは、「誰にでも買える」ということだから、「本人である」かどうかの証拠にはまるでなりません。そもそも、そのハンコの印影は他のどこにもないかもしれないから、「照合」しようにもやりようがありません。あるのは「高橋さんらしい人が、[高橋]というハンコを押した」ということだけ。

いくら「誰でも買える」とはいっても、自分の名前以外のハンコを持っていることは少ないので、「そのためにわざわざハンコを買う労力」分は、ハンコがない人よりも「本人である率は高い」と言えないこともないけれども、あまり説得力はありません。

こんなどうでもよいことなのに、郵便局で保険の支払いをもらう時など「ハンコがない」と決して許してくれません。 そのために引き返したこともあります。

この「登録されていないハンコ」の意義が、ずーっとわからなかったのですが、ようやくこの頃わかってきました。

実印や、銀行のハンコは「押す人」を「こいつは本当に当人だろうか?」と、いわば「疑っている」わけですが、三文判の場合は、そうではなく、どちらかというと「押させる側」の担当者を「疑っている」のだろうということです。

つまり、[高橋]というハンコを押した人が、実は「山本」であるかどうかを心配しているのではなくて、例えば配達員が「高橋に渡してもいないのに、渡したフリをする」ことを防ぐためのものなのだろう、と。

もちろん、「ハンコは誰でも買える」のですから、配達員が人のハンコを買ってくることもできますが、たくさんのハンコを揃えるのは大変ですから、「大量配達サギ」はやりにくい。

 似たような話で、郵便局でお年玉付年賀ハガキで当選したハガキを持っていって賞品と交換する時のことがあります。10年くらい前まで、当選したハガキの下端の番号の部分はハサミで切り取られていました。おかげで、ハガキの裏に書かれた住所や絵などが切られれしまうということで、不満が出ていました。郵便局側は「不正を防止するために仕方ない」というのだけど、「それなら、番号のところにスタンプでも押せばいいだろう」と反論(誰が?)して、結局、今はそうなっています。

 この時思ったのですよ。ああ「不正」というのは、われわれのことではなくて郵便局員のことなんだと。われわれ(客)にとっては、番号の上にスタンプを押されれば、もう2度と交換にはいけないから切り取られたのと同じことですが、これだと郵便局側には「交換した証」が残らないんですね。つまり局員か「交換したフリ」をすれば、いくらでも賞品を出せちゃうわけです。(ごめんなさい>郵便局のひと)
 今はその状態といえばそうなんですが、交換した人は名前を書かされます。三文判みたいなもんですね。

 「ハンコを押してください」と言われると、なんとなく自分が疑われているような気がしていたものですが、実は、目の前にいるかわいそうな担当者が疑われないためなのだ、と思えば少しは気持ちがラクになるかも。


しかしよく考えてみると、この説には無理なとこるがあるのですが、こう考えることによって、「ハンコを押してください」と言われた時に「ああ、この窓口の人が疑われたいなめに仕方ないな」と思えるなら、それもいいかなぁ、思うのでした。


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2005.03.26

「今年の新入社員は○○○型」っていうけど

「今年の新入社員は○○○型」というのが毎年発表されるけど、あれは「社会経済生産性本部」というところが出しているんですね。財団法人だそうです。

で、今年は、

「発光ダイオード型」
 電流を通すとよく光るが、熱くならない。
→指導をすればよく働くが、冷めている

ということだそうです。ちなみに去年は

「ネットオークション型」
 大学のブランドや売り込みに釣られて「落札」した企業は、
 当てがはずれることがあるかも
 
だと。

ぼくが入社した1980年は

「コインロッカー型」(←これ、覚えてました)
  小じんまりと画一的で、外見も反応もすべて同じ。

2002年までは「現代コミュニケーション・センター」ということろで出していたそうで、過去のものはこちらにあります。
http://www.jpc-sed.or.jp/cisi/mailmag/m020_pa6.html

さてさて、本題(そんなもんあるのか?)です。

この標語?は、

1.その年の新入社員の特徴を捕える
2.その年に流行ったものを織り込んでうまい標語にする
3.もっともらしい解説をつける

というステップで作られていそうなんだけど(2と3は一緒みたいなもんか)、よく考えてみると「1」なんかなくて「2と3」たけなんじゃないだろうか?

もともとぼくは「今年の○○は××である」的な「強引一般化」は嫌いなので、新入社員全般を「○○型」と決めること自体ナンセンスだと思っているんだけど、これは、そういうレベルですらなくて「その年の新入社員」はどうでもよくて「その年に流行ったもの」から、いかに面白そうな標語を作るか「だけ」なんじゃないだろうか。

上の「1」と「2」は、実は逆で、

1.その年に流行ったものを捕える
2.無理矢理新入社員(というより若者だな)っぽいことを織り込んで標語にする

なのではないか、と。

去年の「ネットオークション型」は、「ネットで就職情報を調べる」ということと「オークションの当たり外れ」がうまくひっかかっているから、まだまし(しかし、この年に限って「当たり外れ」が多いわけではない)だけど、「発光ダイオード型」の「よく働くけど冷めてる」なんて、今年の特徴でも何でもないだろうがっ。

ところで、この標語自体は面白くてうまいもんだと思うし、(実は新入社員に関係なくても)それを「今年の新入社員は」として見せるテクニックは大したものだけど、これを真に受けたかのように、入社式で「今年の新入社員は、○○型と言われているそうでありますが、たしかに昨今の新人を見ていると、××であり・・・」なんて、しゃべるやつがいると思うとバカって感じ。 はい、25年前に「今年はコインロッカー型でぇ・・・」って言っている人がいました。

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2005.03.21

放射温度計疑惑は濡れ衣だった

3150円の温度計が「低温が高目に出る」ということがわかり、少々ショックを受けていた。「0度とわかっているもの」が0度とでないことは、実は大して困らない(だって0度ってわかっているから)のだけど、気持ちの悪さとしては相当なものであったのだ。
04-11-01_23-27.jpg
今日は、いい天気で空は雲ひとつなく真っ青。温度計を向けてみると、[-4~-8度」あたりを示す。「ん、ちょっと変だぞ」。まわりのビルの影響があるにしても、このくらいの青空であれば「-20度」より低く出るはずだから。真冬に比べるとまわりが暖かいので、高目に出るのはわかっているのだが、これはちょっとおかしい。〈ひょっとしてこの季節の太陽光にはいつもより強い赤外線が含まれているのだろうか〉と、また調べなければいけないなぁ、などと思いながらふと温度計の受光部を見てみた。
VFMI0119懐中電灯の反射板のように円錐形の銀色をしたものの奥に受光部と思われるところがある。
 銀色の部分を見ると、なんだかボツボツと斑点のような汚れがついている。まるでスギ花粉のようである。いつもポケットに入れっぱなしなので汚れるのは当然か。「そもそもここは銀色でいいのだろうか」などとぶつぶつ言いながらティッシュを出してふいたらきれいになった。丁度東急ハンズに向かう橋の上に来たところだったので空に向けて測ってみると・・・果して、「Lo」と表示された。-20度(かな)より低いという表示である。「おおお、なんという明らかな違い」 その後家族と落ち合って「桂花」で「ターロウメン」を食べる時にお茶に入っていた氷を測ったら、なんと「0度」!! やったぜ。

つまり、受光部まわりの銀色部分(アルミ蒸着だろうか)は、本来非常に放射率が低く、そこからの赤外線放射は問題にならないはずのところが、汚れのために放射率が高くなって赤外線を多く発していたのだろう。「多く」というのも変だが、その時の温度計自体の温度に相当する赤外線だろう。

その赤外線の量は何を測る時も同じように受光部に入ってくるのだが、測る対象の温度が温度計本体の温度とあまり変わらない時や、もっと高い時には影響はほとんど無視できる。ところが、氷や「空」のように0度付近のものを測る時には、大きく効いてきてしまうのだろう。

この「受光部まわりからの放射」は前から気になっていたのだが、実は、むしろ逆のことを心配していたのである。つまり、まわりに飛び交っている赤外線が、銀色部分に「反射して」余分な赤外線を測ってしまうのではないかということ。これは、(放射率の低い)金属面を測った時に(予想とは逆に)本来よりも高目に出る、ということから類推したものである。だからその時は、「反射傘(と呼ぼうか)は、(まわりの赤外線を反射しないためには)むしろ黒い方がいいのではないか」と思ったほどである。 もし黒くしたら、ひどいことになっていたのだな。なんて思ったら、別の機種(例のオカシナAD-5615)は、ツヤ消し黒の階段状になっていた。ひょっとしてこいつが寒いところでおかしくなるのも、同じような話かと思ったのだが、ちょっと違うようである。(本来よりも低目に出るので)しかし、「指を密着させて測ると、やればやるほど高くなる」という珍現象は、この受光部まわりが暖められてそこから放射される赤外線によるものであろうと、今確信した。(これは欠陥とは言わないが、ちょっとアブないと思う)

そんなわけで、教訓。

「放射温度計の測定値が低温域でおかしくなった時は、反射傘を掃除しよう」

まあ、そこまで汚れるほど持ち歩く人は少ないだろうけどね。

こうして、「放射と反射」をまた少し理解するのであった。

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2005.03.16

山形浩生さん 2005-03-15

TBS「サイエンス・サイトーク」今年最後の収録のゲストは、山形浩生さん。アシスタントの有村さんが
「今日のゲストは○○○の×××さんです」といつもいうのだけれども、今日は単に「やまがたひろおさん」だった。日垣さんの話から、「評論家」「翻訳家」「オタク」という肩書きがあることがわかった。さらには本業としての勤め先はシンクタンク。

作品として一番よくみえるのが著書と翻訳書なのだけれども、とにかくその分野は多岐に渡る。とりあえず面白そうなものを挙げると、
ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』(日経ビジネス人文庫、2003.11)

ビョルン・ロンボルグ『環境危機をあおってはいけない:地球環境のホントの実態』(文藝春秋、2003.6)

ケン・スミス『だれも教えてくれない聖書の読み方』(晶文社、2001)

ローレンス・レッシグ『CODE』(翔泳社、2001)

など。(全部amazonしちゃったよ、高いのに)

ぼくは今日までまったく知らなかった人なのだけど、いろいろいな意味で興味があり、また、みならいたい人であった。

翻訳する本の7割(正確だな)は、「自分で面白いと思って選んだ本」だそうである。たしかに、これだけいろいろな本が日本語になっている中でも、「翻訳されない本」は、山のようにあって、その中には面白い本がたくさんある。図々しくも、「ぼくもまじめに翻訳しなくては」と思った次第で。

今日も12時をまわって、ふつうであれば寝てしまうところ「今日の感想は上げておこう」と気合いを入れて何とか書いている。

チンダルの翻訳がいつまでたっても進まないのは、間違いなく「やっていないから」であるが、「時間がない」などという言い訳は通用しないからなぁ。

「どうやって、そんなに面白いものを見つけてくるのか」というような質問が出ていて、山形さんはそれなりに答えていたけれども、ぼくから見れば「そんなもの、ふつうにしてりゃ見つかるじゃん」という感じ。それは「誰でもできる」という意味ではなくて、山形さんのように英語が読めて、好奇心の強い人であれば特に苦労もなく見つかるのではないか、ということ。それを、さっさと読んで、企画書作って翻訳に持ち込んで、実際に翻訳するのが大変なんだってば。

というわけで、これまでで一番「影響を受けた」ゲストでした。
(質問はしなかったけどね。共感するところが多いと、かえってそうなること多し)

今日は、今期最終日ということで、飲み会。いつもよく話すOさん、ディレクターの崎山さん、お世話係のMさんらといろいろ話して、最後に日垣さんとも少し話す。「週休3日実践してますか?」という質問を、初めての飲み会(つーことは3年前か)にしたんだけど、実は日垣さん、それが気になって何とか休めるように努力したとかいってたけど、結局聞いている限りはあんまり休んでいるようには見えないな。「休みたいと思わない」のだからいいと思うけどね。明日からはお嬢さんとふたりでタンザニアに16日間の旅行にいくそうです。

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2005.03.06

放射で冷める実験

桜木町のダイソーで買ったステンレスマグ(フタ付)を使って放射熱の実験をしてみました。

同じマグを2つ使って、うちひとつはスプレー塗料で黒く塗りました。(室内でスプレーして臭いがたちこめて家族から大非難を欲びました)

フタの真中にツマミがついていたのを外して、穴を少し大きくしたところに温度計を差し込みました。これがなかなか具合が良い。
VFMI0098

それぞれに、沸かしたばかりの熱湯を8分目くらいいれます。入れた直後の温度はどちらも「87度」ほど。(沸騰している時は100度なのだと思いますが、注いだ直後にここまで下がってしまうのですね。)

あとは、それぞれの温度がどう下がるかを観察します。
間抜けなことに時間を測らなかったので、グラフにもできませんが、とりあえず「黒い方が何度の時に、銀色の方か何度」という対応だけはとりました。


前にやった実験ではステンレスと磁器のカップを比べたので、いろいろと条件が違って厄介だったのですが、今回は同じ材質で表面が違うだけなので、熱容量や熱伝導率はほぼ同じだろうということでわかりやすいと思います。(そのかわり、「磁器」の方が「金属」より冷めやすいか、というような直感的に意外なことを見せられるわけではありません)

カップは発泡スチロールの上に乗せてあります。
結果は以下のとおり。

黒 銀 差
87 87 0
78 82 4
74 79 5
61 69 6
53 62 9
50 60 10
48 58 10
31 41 10
24 32 8

思っていた以上の差がつきました。たった1回しかやってませんが、次にやるときは時間も測ってみよう。

発泡スチロールの上に置いたことで、底からの熱伝導はかなり小さくなっていると思われますし、フタをしたことで、気化熱の影響も減っているので「マグの表面からの放射熱」の違いが大きく出ているのではないかと思います。

知らない人から見れば「意外」だと思いますが、「理屈どおり」でもあるので、これだけだとあまり面白くありません。 「ヤカンをよく磨いておくと冷めないよ」とかいえれば面白いけど、あまり実用には関係ありませんね。

あとは「布を巻いたマグ」も実験予定。これの方が意外性は高いと思います。(先に冷めれば、の話ですが)

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2005.03.04

「脳を鍛える」話 川島隆太さん

2005-02-28TBS「サイエンス・サイトーク」の収録、今日のゲストは「脳の研究」で有名な川島隆太さん(東北大学)

『脳を鍛える大人の計算ドリル』とか『頭よくする本』などを書いている売れっ子でもあるということは後で知りましたが、話は上手でわかりやすくて楽しかったです。

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2005-03-04 雪の日の放射熱日記

雪の温度が3~5度くらいと出るのがどうにも気持ちがわるい。
いや、その程度の誤差はいつも気にしていないのだけど、「寒いところで異常になる」という温度計の話をしていただけに、気にしてしまいます。

「雪は氷」なので、0度以下ではあろうと思うのだけど、放射温度計で測っているのは、〈表面からでている赤外線〉なので、
・表面の温度が実際には何度なのかわからない
・放射率が0.95と大きく違うかもしれない
というあたりでどうなるかわかりません。
(もちろん「温度計の信頼性」も問題になります)

「氷」の放射率は0.96~0.98,「雪」は0.83ということ(http://www.anritsu-meter.co.jp/infrared/table_e.htm)なのですが、雪は空気の入り具合によってかなり変わってきそうな感じです。温度計の放射率の設定は0.95(固定)なので、それより放射率の小さい「雪」の温度は低目に出そうなものですが、まわりの赤外線が反射したものも測られてしまうので、逆に高めに出ることもあるのです。(金属面での経験より)

そこで、雪どけで「氷水」状態になったところを測ってみたところ、0.5~3度くらいだったでしょうか。まあ、このくらいでよしとしましょう。なまじ「氷点=0度」と知っているおかげで、余計なことが気になります。
「余計なこと」なんていっちゃいけないな、これこそが「簡単で正確な」温度の基準にひとつなんだから。

家で、ふつうの「氷水」をちゃんと測ってみよう。

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2005.03.02

放射温度計 AD-5615について

2週間ほど前に、新しく買った放射温度計のことを少し書きました。

機能、デザイン共に気に入ったのでみんなにも薦めよう、と思っていたところだったのだけど、「寒いところで測ると大きく狂う」ということがわかって、メーカーに問い合わせをしてみました。

2005-03-02の時点で"AD-5615"を検索すると、このブログがトップに出るようなので、この温度計の情報をここに見に来る人もいると思うので、これまでにわかっていることを書いておきます。

メールでのやりとりでは「周囲の温度が変わると補償回路が安定するまでに時間がかかるので、30分待てば正しい値になる」という趣旨の回答をもらったのですが、他の温度計がふつうに使えるのに、これだけそんなわけもなかろうということで、この個体が不良である可能性を考えていました。「期待した」というべきかな。この個体だけの問題であれば交換すればいいわけだから。

その後、メーカーから電話をいただくなどして、別の個体でも試してみた結果、残念ながら、「寒いところでおかしくなる現象」は、個体の問題ではなく、「そういうものである」らしいことがわかりました。(メーカーの公式見解というわけではありません。あくまでも、ぼくが、使ってみた2体がそうであったということです)

放射温度計は、入ってくる赤外線をサーモパイルで測るのですが、サーモパイルは「温度の差」を測るだけなので、絶対的な温度を知るためには「基準」となる温度が必要になります。実験室では氷水を使うことが多いのですが、ここではそういうわけにはいかないので、別の温度計が入っていてそれとの差を使うようです。こいつが外部の温度に追従しないのではないか、という話もありましたが、よくわかりません。

夜10時頃に外に出て、AD-5615を含む4台の放射温度計を使ってみましたが、他の3台がほほ同じ数値を示す中で、AD-5615は異常に低い値を表示していました。

寒いところでダメ、ということで冷蔵庫でちょっと試したけど、異常かどうかはわからず。室温では問題ないかと思ったけれども、指の温度を連続的に測っていくと、ボタンを押すたびにドンドン温度が高く出て、ついには40度を越えてしまう、という挙動も見られました。

これ以上「異常さ」を調べても仕方ないのでこのくらいにしておきます。(だったら返品すればよかったようなものなのですが、妙に愛着があるんですよ)

期待した機械だっただけに大変残念なのですが、もしかしたら「この2台だけの異常」という可能性に期待しつつ、どなたかお使いになった方が、ここを見つけてコメントしてくれるのを待つことにします。
AD-5615

うしろに写っているのは、この温度計のメーカーの「エー・アンド・ディ社」のTシャツ。

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