« 山形浩生さん 2005-03-15 | Main | 「今年の新入社員は○○○型」っていうけど »

2005.03.21

放射温度計疑惑は濡れ衣だった

3150円の温度計が「低温が高目に出る」ということがわかり、少々ショックを受けていた。「0度とわかっているもの」が0度とでないことは、実は大して困らない(だって0度ってわかっているから)のだけど、気持ちの悪さとしては相当なものであったのだ。
04-11-01_23-27.jpg
今日は、いい天気で空は雲ひとつなく真っ青。温度計を向けてみると、[-4~-8度」あたりを示す。「ん、ちょっと変だぞ」。まわりのビルの影響があるにしても、このくらいの青空であれば「-20度」より低く出るはずだから。真冬に比べるとまわりが暖かいので、高目に出るのはわかっているのだが、これはちょっとおかしい。〈ひょっとしてこの季節の太陽光にはいつもより強い赤外線が含まれているのだろうか〉と、また調べなければいけないなぁ、などと思いながらふと温度計の受光部を見てみた。
VFMI0119懐中電灯の反射板のように円錐形の銀色をしたものの奥に受光部と思われるところがある。
 銀色の部分を見ると、なんだかボツボツと斑点のような汚れがついている。まるでスギ花粉のようである。いつもポケットに入れっぱなしなので汚れるのは当然か。「そもそもここは銀色でいいのだろうか」などとぶつぶつ言いながらティッシュを出してふいたらきれいになった。丁度東急ハンズに向かう橋の上に来たところだったので空に向けて測ってみると・・・果して、「Lo」と表示された。-20度(かな)より低いという表示である。「おおお、なんという明らかな違い」 その後家族と落ち合って「桂花」で「ターロウメン」を食べる時にお茶に入っていた氷を測ったら、なんと「0度」!! やったぜ。

つまり、受光部まわりの銀色部分(アルミ蒸着だろうか)は、本来非常に放射率が低く、そこからの赤外線放射は問題にならないはずのところが、汚れのために放射率が高くなって赤外線を多く発していたのだろう。「多く」というのも変だが、その時の温度計自体の温度に相当する赤外線だろう。

その赤外線の量は何を測る時も同じように受光部に入ってくるのだが、測る対象の温度が温度計本体の温度とあまり変わらない時や、もっと高い時には影響はほとんど無視できる。ところが、氷や「空」のように0度付近のものを測る時には、大きく効いてきてしまうのだろう。

この「受光部まわりからの放射」は前から気になっていたのだが、実は、むしろ逆のことを心配していたのである。つまり、まわりに飛び交っている赤外線が、銀色部分に「反射して」余分な赤外線を測ってしまうのではないかということ。これは、(放射率の低い)金属面を測った時に(予想とは逆に)本来よりも高目に出る、ということから類推したものである。だからその時は、「反射傘(と呼ぼうか)は、(まわりの赤外線を反射しないためには)むしろ黒い方がいいのではないか」と思ったほどである。 もし黒くしたら、ひどいことになっていたのだな。なんて思ったら、別の機種(例のオカシナAD-5615)は、ツヤ消し黒の階段状になっていた。ひょっとしてこいつが寒いところでおかしくなるのも、同じような話かと思ったのだが、ちょっと違うようである。(本来よりも低目に出るので)しかし、「指を密着させて測ると、やればやるほど高くなる」という珍現象は、この受光部まわりが暖められてそこから放射される赤外線によるものであろうと、今確信した。(これは欠陥とは言わないが、ちょっとアブないと思う)

そんなわけで、教訓。

「放射温度計の測定値が低温域でおかしくなった時は、反射傘を掃除しよう」

まあ、そこまで汚れるほど持ち歩く人は少ないだろうけどね。

こうして、「放射と反射」をまた少し理解するのであった。

March 21, 2005 at 03:27 PM in 科学 |

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/4586/3380262

Listed below are links to weblogs that reference 放射温度計疑惑は濡れ衣だった:

Comments

のぶさん、温度計が「復活(?)」して良かったですね。

>その時の温度計自体の温度に相当する赤外線だろう。

そぉ言えば、10年以上前に知人が気圧計やら温度計やらがゴテゴテとくっついた腕時計をしてたんですが、ソイツの示す温度は明らかに周囲の気温より高かったんです。どうやら腕の体温が影響してた模様でした。(ヲイヲイ)

ただ、しばらく後のモデルでは、そんなアホな数字は示さないような設計がしてあったようですが・・・・

Posted by: 温泉カワセミ | Mar 21, 2005 8:47:22 PM

この記事を見て、安心して3,150円の放射温度計を買おうという気になりました。
明日の午前中、サーモグラフの操作方法のレクチャーを頼まれているので、いかに放射率が重要かを、のぶさんの体験をまじえて話したいと思います。
いいネタができました。ありがとうございます。

Posted by: みゃお | Mar 21, 2005 11:51:29 PM

>温度計が「復活(?)」して良かったですね。

ありがとうございます。温泉カワセミさんはわかっていただけると思いますが、「直った」こと以上に「これが原因ではないか?」と思ったことがズバリと当たったのことが嬉しくて嬉しくて。もう一度汚してやりたいくらいです。 その後、もうひとつの温度計も掃除してやったら見事に「復活」。

>この記事を見て、安心して3,150円の放射温度計を買おうという気になりました

わお、責任重大。でも楽しいですよ。(mixiの「赤屋線放射温度計コミュニティ」(メンバー2名)にもどうぞ)
「物質による放射率の違い」ということでは、ぼくは「ピカピカの金属とそれ以外」という大ざっぱな区別しかできてません。それだけ「金属以外のもの」の放射率は95%あたりで一定しているってことでしょう。サーモグラフ欲しい。

Posted by: のぶ | Mar 22, 2005 2:03:42 PM

のぶさん

>「直った」こと以上に「これが原因ではないか?」と思ったことがズバリと当たったのことが嬉しくて嬉しくて。もう一度汚してやりたいくらいです。
アハハハハ、スゴく良く判ります。正に「ビンゴ!」って叫びたくなりますね。

>サーモグラフ欲しい。
サーモグラフは高いですからねぇ。ネットで検索して40万円くらい(↓、それでも高いけど)のを見付けましたが、画面上の「64点計測」なだけで、画像センサー自体は30万画素のCMOSらしいです。今一やなぁ。

http://www.tech-jam.com/items/tj-200_3.html

Posted by: 温泉カワセミ | Mar 22, 2005 10:16:44 PM

>アハハハハ、スゴく良く判ります。正に「ビンゴ!」って叫びたくなりますね。

ありがとうございます。ひとりで新宿を歩きながらだったので、「ビンゴ」と言えなかったのが残念。(ただでさえ温度計であちこち測ってて「アヤシ」まれているので)

サーモグラフはあきらめましょう。(あっさり)
〈放射温度計で順ぐりに測っていってるだけ〉と思ってからは、前ほどの有難みはなくなりました、と。

Posted by: のぶ | Mar 22, 2005 10:24:54 PM

Post a comment