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2005.06.26

「浮沈ぶどう」その3

炭酸水に入れたレーズンが浮沈する現象は思いがけず長く続くのですが、いずれ「気が抜けて」止まります。なんとかこれをもっと続けさせることはできないか。
「熱帯魚のエアレーション」はどうだ、という意見がでましたが、炭酸水と違って、水に空気を送り込んだくらいでは、ぶどうを持ち入げるほどの泡はできそうにありません。

ペットボトルの炭酸水は、キャップを開けるまでの間は「気は抜けない」。ということは、レーズンを入れた後でもキャップをしっかり締めておけば長持ちするのではないか?

というわけで実験。

1.飲み途中の炭酸水で
 息子が飲んだ残りの炭酸水があったので、それにレーズンを投げ込んでキャップを締める。
 いつものようにまずは沈んだ後、ひとつは浮き上がり、もうひとつは沈んだまま。まあ、こんなものだろう。
 その後、上下運動をしたりしていたが、すでに気が抜け気味なせいか今ひとつ元気がない。
 そのまま寝てしまって、夜中に起きてみたら「浮いている」。気が抜けた時には「沈む」はずなのだが、どうしてか。揺らすと落ちて、また浮かびます。1日以上たった今も「浮いています」

IMGP0646

2.開封直後に入れると
 気の抜けかけた炭酸ではよくわからないので、こんどは開けたばかりのボトルにレーズンを入れてすぐに締めました。それでも、開けた時、入れた時にかなりの泡が出ます。
 さぁ、炭酸いっぱいだから、浮きっぱなしかなと思ったらこれが意外にも「沈みっぱなし」なのです。揺らしても浮いてこない。これはわからない。ペットボトルの「張り具合」
翌朝キャップをゆるめると、シュワーッと泡が出る。

そうかぁ、密封していたら泡が出ないのは当然か。水面には二酸化炭素がグイグイと押してくるのだから、水中ではそうそう泡にはなれないのか。「ヘンリーの法則」を持ちだすまでもないね。「永久に泡が出るように」と思って密封してみたものの、大きくアテが外れました。

しかし、「泡がでない」のであれば、「沈みっぱなし」になるかと思うのだけれども、レーズンはずーっと浮いています。大して泡はついていないのだけど沈んでいかない。水を含んでふくらんでしまっているけど、だからといって比重が小さくなるわけもないのだけどどうしてだろう。

ところで、この実験が出ていた本は、実は日本語訳が二種類もでていたことがわかりました。
前に紹介した『世界教養全集』の他に、1991年に

科学入門名著全集『原子の科学 宇宙をつくるものアトム』
ブラッグ著 亀井理訳 板倉聖宣選 国土社 1991年

というのが出ていました。板倉さんはこのブラッグの本をかなり気に入って、すでに日本語訳があったにもかかわらず「中高校生に読みやすいように」と新たに訳し直してもらったとのこと。原子論の基本をわかりやすく書いてある本だけに、板倉さんが目をつけるのは当然のことでした。

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2005.06.19

「浮沈ぶどう」の続き

浮沈ぶどう、そしてブラッグの『物とは何か』〉を書いた後、東急ハンズにネタを探しに行ってきました。ぶどうやレーズン以外にうまく浮沈するものはないか、というわけです。買ってきたのは、
・ビーズ(直径7.7ミリの球。糸を通す穴あり)
・ガラス玉(直径8ミリの球)
・アラザン(お菓子に使う銀色の玉。ほとんど砂糖。直径5ミリ)
・ミモザの種を砂糖でコーティングしたもの。デコボコ球型役8ミリ。

ねらいはビーズやガラス玉が浮かんですぐに泡を失なって沈んで、また浮かぶというもの。

で、やってみた結果。
□ビーズ
 すぐに泡がたくさんついて浮かんできた。が、なかなか落ちない。
□ガラス玉
 そこそこ泡はつくが、浮いてこない。重すぎるのか。「きれいすぎる」のかと思い、わざの油やロウを付けてみるが効果なし。
□アラザン
 これは期待の秘密兵器だったのだが、大変なことになった。入れた途端に泡がでまくって、アラザンはどんどん小さくなっていく。浮沈どころではなかった。そういえば、ソーダ水にラムネキャンディーを入れて、爆発的な泡を出すという裏ワザがあるそうだが、アラザンも同じようなものであった。
□ミモザ
 アラザンに恐れをなして、試しもせず。
 
ガラス玉は結局ただの一度も浮上しなかったので、ビーズとレーズンでテストを続けた。
ビーズ4個とレーズンを同じコップに入れると、全部沈んだ状態でじっとしている。泡がくっついた同士はくっつきあうようで、レーズンが浮上しようとするのを引き止めているようにも見える。それでも時々レーズンが仲間を振り払って浮上。すると、ビーズも4個一緒に浮上。かと思ったら、2個づつや、1個づつにバラバラになって浮上したり沈んだり。延々と何分にもわたって、浮沈を繰り返してくれた。

IMGP0631 たくさん泡を付けて、コップの底で待機するレーズンと4匹のビーズたち。

IMGP0632 引き止めるビーズたちを振り払って浮上するレーズン。

一方、別のグラスに入れたレーズンとビーズ1個の方は、じっと沈んだまま浮いてこない。炭酸水は同じボトルから、後から入れたもの。泡のつき方を見ても、大きな泡にならず、いかにも浮力が足りなそうではある。結局理由はわからず。あとで「米」も入れてきたら、1~2度浮上したが、そのあとは底にへばりついたまま。泡がひと筋出続けていたのが気になる。

・表面がきれいすぎて泡が付かないものは論外
・泡がついても、離れてしまうと浮き上がれない
・泡は表面に付いて、だんだんと大きくなってほしい
 が、定着せずに泡だけを放出しているものもある(米)

成績のよかったレーズンを見ると、
・大きな泡を抱え込み
・無汰泡を出さず
・浮かんだ時に、泡を消し(あやしいが)
浮沈を繰り返しているようである。

□二酸化炭素の逃げ方
 グラスをきれいに洗っておくと、泡がつかない。これは、「生活の知恵」として前から言われていることであるが、このデモンストレーションをやっていると実感できる。浮沈させる主役たちは、適度に汚れて泡を作ってもらうのであるが、容器にはできるだけ泡は付かない方が良い。炭酸水の気が抜けるのが遅い方がいいからということもあるが、それ以外にも、せっかく付いた泡に干渉して泡を離れさせてしまったりしてはいけないし、「見やすい」ためにも泡はつかない方がいい。
 そんなわけで、よく洗ったグラスからは泡があまり立たない。
 では、そういうグラスに入れた炭酸水はなかなか気が抜けないのだろうか。おそらく、多少はその傾向はあるだろうが、目に見える差にはなっていない気がする。炭酸が気体となって出ていくために「水分子を押しのける」のが大変だ、ということで、「於れた面」が狙いどころなのだけれども、では水の「表面」はどうだろう。表面にいる水分子はくっつきあおうにも相手はいない。こここそが、二酸化炭素が泡となって出ていきやすいのではないか? 表面から気体となって出ていっても「泡」ができないから目立たないのではないか。
 これを検証すべく〈表面に洗剤の膜を作れば、二酸化炭素が気化すれば洗剤の泡ができる」と考えて、グラスに洗剤を落としてみたが、少々入れすぎたこともあって、それまでレーズンやビーズに付いていた泡もどんどん取れてしまった。失敗。油の膜を作った方がよかったのだろうか。

他に試すものもなく、その後も「レーズンと4つのビーズ」を見守っていたが、くっついたり離れたりしながらも、浮沈を繰り返してなかなか楽しませてくれた。

動画ファイルは巨大(13MB)です。毎度ファイル形式が変わって申し訳ないのですが、今回cはAVI。エンコード形式は何なのだろうなぁ。この前の猫のaviと同じなんですが。

ダウンロード imgp0623.AVI (13346.0K)

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浮沈ぶどう、そしてブラッグの『物とは何か』

グラスに注いだ炭酸水の中に、ぶどうを入れる。
まずは、底に沈むが、泡(二酸化炭素)がたくさんくっつくと、その浮力で浮き上がってくる。 すると、泡が消えてまた沈む。炭酸水の「気が抜ける」まで、ずっと続く。

というのが、「シャンペンとぶどう」と呼ばれるデモンストレーション。

この本に出ていた。

Concerning the Nature of Things:
Six Lectures Delivered at the Royal Institution
(Dover Phoenix Editions)
William Henry Bragg

ぶどうがなかったので、ほしぶどうでやってみたら、すぐに浮かんでくるが、なかなか沈まない。それでもしばらくすると沈んで、またすぐに浮き上がる。それだけのことであるが、なかなか神秘的。

ぶどうやミニトマトで試してみたが、どうも一度浮かぶと沈んでいかない。浮かんだ時に泡が消えるのだが、その消え方が足りないのか、また、浮かんでいる間にも水没している部分ではまた泡をもらっているからなのか。

動画です

動画を撮ってみたので載せますが、大変申し訳ないことに Windows Movie Makerというツールで編集したら wmv形式にしかなりませんでした。Macの人や少々Windows Media Playerの古い方は見ることができないかもしれません。Mac用や、その他最新のWindows Media Playerは以下からダウンロードできます。ただしMac用でこの動画が見えるのかどうかは未確認です。

きのう(6/18土)のYPC(横浜物理サークル)で紹介したところ、なかなか好評で、トマトをよく洗ってみたり、いろいろと試してみた。熱帯魚用のエアレーションではだめかなぁ、というのは「永続的に動くオブジェ」にしたかったというSさん。 2次会でも生ビールやチューハイにレーズンを落としては実験が続けられた。炭酸水と比べるとチューハイの炭酸はずっと薄いようで、浮かぶまでに時間がかかるが、そこがまた動きを美しくしていた。

さて、上記のブラッグの本、大変気に入ったことをみなさんに紹介していたら、誰かがYPCの「歩く書庫」(と勝手に命名)のUさんに聞くと「日本語訳は持ってます」とのこと。さすがUさん。さらにはそれを聞いたMさんが、部屋に戻ってからしばらくしてから、なんとその本を持ってきてくれました。

平凡社『世界教養全集』29巻
 百万人の科学概論 J.L.シング著 市井三郎訳
 科学と実験の歴史 F.S.テイラー著 平田寛・稲沼瑞穂訳
 物とは何か W.ブラッグ著 三宅泰雄訳
 自然現象と奇跡  V.A.メゼンツェフ著 藤川健治訳
平凡社/1961発行/\1,400

うーん、YPC恐るべし。そして、ありがたい。
実は、この本、気に入ったので翻訳してやろうかと思っていたのですが、その必要がなくなりました。でも、何とか再版してもらいたいものです。

【追記】

肝心のことを書き忘れていました。このデモンストレーション、見ただけでも十分面白いのですが、本の中では「水に溶け込んでいる二酸化炭素が水分子を押しのけて泡になるのはそう簡単ではない」という話の一環としてでてきます。水分子同志は強固にくっついていて割っ入るのは大変。壁面が狙い目だが、(よく洗ってある)ガラスと水もよくくっついているので入り込みにくい。というわけで、ある程度〈水をはじく〉ブドウのまわりには泡がたくさんついてうまくいく、というお話。

だったら、表面からはどの程度逃げていくのか、など興味は尽きません。

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2005.06.15

後藤英一さんとパラメトロン

後藤英一さんが亡くなった。
http://www.asahi.com/obituaries/update/0613/003.html

私と後藤さんは直接は関係はないのだが、父の教え子でもあったので、私が子どもの頃からよく知っている。

後藤さんの最も有名な発明は「パラメトロン」。真空管の時代に、安価で故障の少ない画期的な素子であるパラメトロンを考案して、パラメトロン計算機PC-1を作った。富士通などが商品化もしたが、トランジスターの台頭により、徐々に使われなくなった。当時の東大の研究者たちは、順番待ちして使ったそうである。

なかなかの変わり者だったとかで、そんな後藤さんを見出したことを父は自慢していたそうである。

後藤さんは、パラメトロン以外にも秀れた実績があるが、次の逸話が素晴らしい。
情報処理学会、コンピューターミュージアムのページより)

外国人研究者:「俺は後藤という日本人を3人知っている.パラメトロンの後藤,ゴトー・ペアの後藤,磁気単極子の後藤.お前はそのどれかか」

後藤英一:「俺はそのすべてだ

母が葬儀の時に聞いてきた話によると、何らかの集積回路に関しても大きな発明をしているそうなのであるが、残念ながら詳細はわからなかった。

パラメトロンは、誰でも知っているというものではないが、コンサイス英和辞典や広辞苑にも載っている。

Oxford English Dictionary(OED)を調べてみたら、ちゃんと載っていた。

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Parametron

A digital storage element consisting of a parametric oscillator in which the digit is represented by the phase (0ー or 180ー, corresponding to 1 or 0) of the output signal relative to that of an applied reference signal of the same frequency.

【引用】
  1956 ETJ of Japan June 64 A new type of electronic computer component called the paraarametron・was invented by Ei-ichi Goto of the Faculty of Science, University of Tokyo, in spring of 1954.
  1957 Jrnl. Sci. Res. Inst. (Tokyo) LI. 59 (caption) A parametron unit; an exciting current is supplied from 1, causing an oscillation in the L-Lエ-C circuit. Input and output lines are 2 and 3 respectively. 
  1960 T. E. Ivall Electronic Computers (ed. 2) xiii. 234 The parametron requires no valves or transistors, only passive reactive elements, and being therefore extremely stable, reliable and long-lived, is ideally suited for use in digital computers. The main limitation is that because several cycles of oscillation are required to establish a binary digit,+the digit rate is necessarily low. 
  1967 R. K. Richards Electronic Digital Components & Circuits vi. 337 Parametrons quickly became very popular with Japanese computer manufacturers.+ However, not one computer employing parametrons is known to have been built or designed in the United States. 
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2005.06.13

やっぱり猫がいる生活

6月10日(金)

姿を見かけなくなってから5日目の今朝、妻が「声がする」といって、寝室の窓を外をみたら、クロス君が来ていました。ちょっと大きくなって、壁のぼりも上達してました。

庭では遊んでくれませんでしたが、塀の上を2往復くらいしてから、どこかへ去っていきました。

もしかして迷い子になったのかとも思いましたが、その後、ママ猫が近くを通ったので、おそらくクロスのことは見守っているでしょう。

ヤンチャ、ゼンチャ、ノンクロスの3匹はどこ行ったんだよぉ。

10分後くらいに、ママ猫が、庭を通っていきました。遊び場として再び採用してくれるのだろうか。

6月12日(日)

 昼寝からさめると、庭に来ている子どもたち。そぉっと写真をと撮っていたら、急に走りだしたので「逃げられたか」と思ったら、ママのところへ。デジカメで動画、静止画撮りまくりました。
75枚も撮った中から何枚か。
またおいで~。

SANY0048

SANY0011 SANY0028 SANY0034 SANY0059 SANY0060 SANY0061 SANY0064 SANY0066 SANY0074

動画は9MBもある上に、QuickTimeの .mov 形式ってやつなので見られない人もいるかも。ある程度以上新しいQuickTimeなら大丈夫のはず。

http://nob.cocolog-nifty.com/movie/4kittens.MOV

もうひとつ動画、こちらはAVI。6/4(日)。 ダウンロード imgp0581.AVI (4876.2K)

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検索ワードランキング

先週(2005-06-06~06-12)間に、どんな検索ワードでこの日記に飛んできたかのランキングです。

順位 検索ワード 件数
1 放射率  21
2 ペッパーミル  11
3 放射熱  11
4 水酸化ナトリウム  11
5 放射温度計  10
6 電動ペッパーミル  9
7 jword  8
8 オオグチボヤ  8
9 電池  8
10 アルミ  7
11 液漏れ  7
12 ブラウン運動  6
13 仕組み  6
14 16  5
15 MS-DOS  5
16 Windows  5
17 freaknomics  5
18 アメリカ  5
19 ストロー  5
20 ファイテン  5

「放射率」の21件はうれしいなぁ。いや、ホントにこれはうれしい。
「放射熱」や「放射温度計」も上位にいます。ペッパーミルとオオグチボヤ(『へんなどうぶつ』より)が根強い。

17位で5件ながら「freakonomics」が入っているのもいいなぁ。
そして20位の「ファイテン」。さぁ、早く体験してこいつを上位にするぞ。

続いて、「検索フレーズ」のランキング。

1 電池  液漏れ  6 …みなさん苦労してますね。
2 アルミ  放射率  4 …業界の方でしょうか
3 ファイテン  詐欺  3 …すばらしい
4 ブラウン運動  ピンポン球  3 …こんなこと書いたかぁ。
5 一升瓶  栓  理由  3 …マニアック
6 放射率  一覧  3 …研究熱心な方
7 放射率  表  3 …同じく
8 熱力学  田崎晴明  古書  3

「ファイテン 詐欺」がうれしい3件。(自分じゃないだろうな)

田崎さ~ん、学生さんが3人ほど、熱力学の本を古本で買おうとしますよぉ。

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2005.06.09

「空の温度」の歴史 aethrioscope

放射温度計で「空の温度」を測る話をこれまでにも何度も書きました。

3150円の温度計を空に向けて毎日測っている人は、それほど多勢はいないと思いますが、天体観測とか天文学の世界では、宇宙のかなたから来る赤外線を測定するのは、あたり前のことなので、おそろしく精密に測られていることでしょうが、「空の温度」という言い方はしていないでしょう。

昔はどうだったのか思ったら、これがやっているんですね、1800年代から。
この図は、愛読書("Heat: as a Mode of Motion" John Tyndall)にでていたaethrioscope という道具です。
aethrioscope-tyndall Sir John Leslie(1766-1832)が考案したもので「空に向けての放射(radiation agaist the sky)」を測るための器械であると書かれています。「空に対する放射」といっても、実際には、物体からの放射は「何に対して」だろうと変わるわけではありません。その物体が放射するよりも多く、熱を放射してくるもの(空)があれば暖められるし、なければ冷めます。「空に対する放射」を測るというのは、実は「空からの放射」を測ることですから「空の温度を測る」と言ってもよいのではないでしょうか。あるページでは、
"instrument for measuring temperature variations due to sky conditions"(空の状態による温度の変化を測る器具)
別のページでは、
「空高くから送られてくる冷たさを測るための器具」と書いてあります。

せっかくなので買ったばかりのOED(Oxford English Dictionary)を引くと、
  An instrument invented by Sir John Leslie to indicate the variations of solar radiation.
(レスリー卿が発明した太陽光線の変化を表わすための器具)。語源的には、'aethrio'が sky を表し、scope(これはよく聞く言葉ですが)は 'observer'というから観測する物(者)とのこと。こんなマニアックなものまで出ているとはOEDはすごい。

古い機械のことがいっぱいでている事典ページKnight's American Mechanical Dictionary

にはこんな図がありました。
aethrioscope

空のいろいろな状態にさらされることからくる冷たさの度合いを測る道具。よく磨かれた椀(凹面鏡)が、適当な高さの台の上に載せられ、その中には「差分温度計(differential thermometer)」が、片方の球は、正確に凹面鏡のひとつの焦点の位置に来るように、他方の球は、どちらの焦点にでもなく、波(熱線)の影響を受けないように置かれている。その波の効果は、鏡によってひとつめの球に集中し、球の中の空気は、晴れた空に向けられることによって、直ちに収縮し、管の枝の中の液体は上昇する。椀の部分は、測定の時以外は金属性の蓋で覆われている。

Fig. 56.
An instrument measuring the degrees of cold arising from exposure under different conditions of the sky. A highly polished metallic cup or concave mirror is placed upon a pedestal, of convenient hight, and a differential thermometer is placed within it so that one of the bulbs of the thermometer shall be exactly in one focus of the mirror; the other bulb being not in either focus is not affected by the pulsations, the effects of which on the cup are concentrated upon the first bulb, the air in which being suddenly contracted upon its exposure to a clear sky, the liquid in that branch of the stem is caused to rise. The cup is kept covered with a metallic plate, except at the moments of observation.

今のところ、日本のwebで、この器械のことを書いてあるものは見つかりません。チンダルの本によれば「上空を雲が通過する」だけで、液位がかわるそうですから、かなり敏感なようですが、今となっては、もはや使い道はないのでしょう。昔の実験器具はこれに限らず美しいものが多いので、いつかは実物を見てみたいものです。

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2005.06.08

"Theory Of Heat" James Clerk Maxwell

"Theory Of Heat"  James Clerk Maxwell

かのマックスウェルが1888年に書いた本。(初版は1871年)
それが、2001年に復刻されたおかげで、2000円以下で買うことができました。
熱の話がシロウト向きにわかりやすか書かれていて、ぼくには大変有難い。
もちろん放射熱のことも。

まず、熱素(Caloric)説を否定しておいて、続いて "heat"という言葉を丁寧に説明してくれます。

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2005.06.07

猫のいる生活

先週くらいから、寝室の窓の外で何やら音がすると思っていら、ある時、窓ガラス越しに、小さな子猫がこちらを向いて、ガラスをひっかいています。 塀と建物の隙間の軒下で、猫が子どもを四匹産んで育てていたのです。ガラス越しのせいか、人間を怖がることもあまりありません。 わが家では動物は飼っていないし、犬も猫も特別好きでもないのですが、これはカワいい、カワいすぎる。

土曜の朝、居間のカーテンを開けたら、マンションの小さな庭を子猫たちが走りまわっているではありませんか。それを母親がじっと見守っています。ガラス戸のこちらから見ている人間たちも、じっとにらみながら。

VFMI0091子猫はホントに「ジャレる」のですねぇ。ケンカしているのかと思ってしまうほど。
4匹は「猫シロウト」のぼくにでも判別できるような色違いです。名前もつけました。

黒のまだら…………………………ヤンチャ(やんちゃで、ひとりで別行動をするので)
ほぼ全体が茶色……………………ゼンチャ(全茶)
茶色のまだらで背中に十字模様…クロス
同上、ただし十字なし……………ノンクロス

母猫は、黒と茶の入ったいわゆる「三毛猫」。遺伝の法則の教材になりそうな色あいです。

ところで、マンションの、この庭の部分は、猫たちか寝場所にしている窓側(土盛りされている)ところよりも、1メートルあまり低くなっていますので、その1メートルほどのコンクリートの壁を飛び降りてきたに違いありません。ところが、そこを登って上に戻るのがさあ大変。母猫は当然簡単に登りますが、子どもたちは、半分くらいまでよじ登っては落ち、助走をつけてもまだだめ。横の方からやっても登れません。母猫が子を口にくわえてジャンプしようとしたこともありました。ハシゴでもかけてやりたい気持ちにかられますが、じっとこらえます。

そのうち、ヤンチャとノンクロスの2匹は練習の甲斐あってか、登れるようになりました。上からきょうだいたちを見ていたり、また飛び降りてきたり。母が下りてくると、すぐにまとわりつく子猫たち。

土曜の午後の大雨の中、母と2匹は寝場所に上がって雨やどりしているのに、クロスとゼンチャは上がれません。そのうち、あきらめて、たまたま立てかけてあった大きなタライの下にもぐり込ん雨やどり。心配して母が降りてきたりしていたようですが、最終的に夜をどうやって越したのかはわかりません。

VFMI0092日曜の朝、またみんなで遊んでいます。木に登ったり、植木鉢に乗ったり。
そして、また寝場所に「登る」時が来ます。ヤンチャとノンクロスはさっさと登ります。といっても、母のようにサッと行けるわけではなくて、ややデコボコの多いヘリの部分にしがみつくように、ジワジワとやっとのことで登っていくのです。上から「早くおいでよ」と言わんばかりに下を見ていますが、あとの2匹はまだ登れません。もうあきらめてしまったのか、あまりチャレンジもしません。

VFMI0094母と2匹は上で昼寝でしょうか、残りの2匹はしばらく遊んでいましたが、ある時、クロスが、ツツジの繁みを登りはじめました。しかし、子猫といえどもツツジの枝は細すぎるのか、何度も途中で落ちてしまいます。それでも、繰り返しているうちに、上に方に顔を出して「ジャンプ!」。ちょうどぼくからは死角になって見えませんでしたが、次の瞬間クロスは「上」を歩いていました。「やったぁ」。 しかし、今度は残されたゼンチャが心配です。これまでは「登れない仲間」がいたのに、ついにひとりだけ取り残されてしまったのですから。

と思って、ツツジを見ると、さっきとは違う奥の方でガサガサやっています。ツツジを足がかりに、塀に前足をかけているようにも見えます。ぼくが寝室から居間にまわって見た時には、ゼンチャはすでに塀の上をスタスタと歩いていました。そしてすぐに、みんなのいる寝場所へのたどりつきました。結局ほんの1分ほどのあいだに2匹とも、登れるようになったのです。
なんとドラマチックなことよ。

さあ、これからは、もういつでも庭と寝場所を行き来できる。

と思っていたのですが、その後2~3度見かけた後、月曜、火曜ともうこの子たちを見かけることはありません。

警戒されてしまったのか、はたまた巣立っていったのか。
わが家にとっては、つかのまの幸せでしたが、いつかはこの時はやってくるのですね。

動画くらいとっておけばなぁ。

関連ページ:「テツブログ」

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2005.06.01

「奇跡じゃない」じゃないじゃない

5月18日(水)にTBSで放送された、

『確率10000000分の1!?世にも不思議な超偶然事件簿!!
 アレは奇跡?奇跡じゃないってば!!" 』

放映されてからかなりたちますが、ようやく録画を見たのでひとこと

オカルト番組が氾濫する中、勇気を奮って「そんなの奇跡じゃないよ」というテーマを扱ってくれたことにまずは感謝。
「と学会」運営委員でもある唐沢俊一氏が出演し、監修?にはこれも「と学会」の皆神龍太郎氏が名を連ねていました。

全体の感想としては「イマイチ」。

「奇跡ではない」と言いたいあまりの無理が目立ちます。ぼくが見る限りは、出てきた話はすべて、「奇跡」でいいと思うから。

1.ジグザグ名前
 紀子さんと雅子さんの名前が

おわだまさこ
×××××
かわしまきこ

 と交互に読んでも同じになる、という「奇跡」。

いろいろな名前を調べて「こういうことはよく起きますよ」ということを説明するのですが、その根拠がちょっとなぁ。

日本中のすべての名前同士の組み合わせでは「1兆以上」こういうジグザグのセットがある、だから「珍しくない」というのだけど、それではだめでしょう。紀子さんと雅子さんはそれぞれ(皇室であることは置くとして)礼宮と浩宮という兄弟と結婚したから面白いのであって、何の関係もないふたりが何兆組ジグザグになっていても仕方ない。「あるふたりの名前がジグザグになる確率」を言ってくれればいいのだけど、それだと結構「奇跡っぽい」数字になっちゃうのかな。

2.カンガルーの恩返し
 落ちてきた枝に当たって気絶している主人のことを、家人に知らせて助けたカンガルーの話。
 はじめに「育ててくれた主人に恩返しをした」という美談として紹介しておいて、それを「食欲という本能に従って行動したまでで、奇跡ではない」とするのだけど、こんなものもともと「恩を感じた」という前提が無理。唐沢さんが適切にコメントしていましたが、「食欲による行動の結果、人命を助けた」ことの方が、はるかに奇跡といえるでしょう。「美談ではなくて奇跡です」ということ。
 ところで、カンガルーは〈まず、主人を見つけて、それから家人を呼びに行った〉という映像になっていたけれども、ホントにそうなのだろうか。いきなり家に行って、それから主人のところに行ったのかもしれない。知っているのカンガルーだけだから。(これは、ただのいいがかりですが)

3.なくした指輪が見つかった
 12年前に海に落とした婚約指輪が、少年たちが釣り上げた魚(タラ)の中で見つかり、新聞の通じて本人に戻った、という話。
 これを「奇跡じゃない」という理由として、こんなことをいいます。
(1)タラは雑食(「タラ腹」はそこから来たとか←へぇ)なので指輪を食べるのは不思議ではない。(指輪をエサにしてタラを釣る実験までします)
(2)落とした場所の近くで指輪が見つかったのは、タラが長生きで、かつ同じところに留まっているからである

(1)はOK。(2)の意味がわからなかったのだけど、どうやら「落とした直後にタラが指輪を食べて、しばらくしてから釣られた」と勝手に想定されていたようです。が、そんなもの、「指輪を食べた直後に釣られた」と考える方が自然でしょう。

 いずれにしても、海に落ちている指輪の何%がタラに食われ、かつそのタラが釣られる確率は、かなり小さいわけで十分「奇跡」でしょう。さらに、それを釣り上げた人が新聞社に届けて、それを持ち主が見つけて、となれば、非の打ちどころのない「アンビリーバボー話」だと思います。(1万キロ離れた海で見つかればもっといいけど)

4.高度5000メートルから落下して助かった男
 5000メートルの戦闘機から飛び降りた男が助かったという話。
 助かった理由は
(1)高度400メートル以上だと「終端速度」に達しているので、いくら高くてもそれ以上速くならない。(でも時速200kmだぜ)
(2)モミの木の枝がクッションになった
(3)雪もクッションになった

(1)は、たしかに知らない人も多いだろうから「高度5000メートルだったら、時速1万キロか」と思っ人にとっては「へぇ」だけど、200km/hでも十分速い。
(2)と(3)は「なるほど」ではあるけど、だからといって「奇跡ではない」と言うか? たしかに、同じような枝と雪に落ちた時に助かる確率はそこそこあるのかもしれないけれども、空からランダムに落ちた時に、そういうところに落ちる確率がとれほどあるというのだ。落ちたところを見つけてくれる人がいなければやっぱりダメだろうし。

5.偶然知りあいに会う確率
 友人から、50年前の恋人を探してくれるよう頼まれていた男が、地下鉄で隣り合わせた女性がまさにその人だった、というような話。
 そもそもあまり面白いネタではなかったのだけど、番組では「友だちの友だちの友だち」までたどると、大ていの人とは知りあいだ、という話にこのことが「へえー」のようでいて、現実にはあまり面白いことにならないのは、お互いの「友だちの友だち」に共通の人がいるかどうかを知る術がないからでしょう。あう人ごとに「友人リスト」を見せあうわけにはいかない。

 その点mixiのようなSNSでは、それを機械的に探すことが可能だから、面白いですね。

 番組では、タレントが浅草の町を歩いて、会う人ごとに「この人知って
ますか」とかやっていたけど、共通の知りあいが「タレント」である点が
特別すぎて参考にならなかった。

唐沢さんのコメントが救いでした。

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アインシュタインのつぶやき

朝日新聞の日曜be(5/29号)の「アインシュタインのつぶやき」というコラム。

「物理学の最初の授業は実験ができて、見て面白いことだけにすべきです。……若い精神を、数式などに決して近づけないことが特に大切です」

こういうことも言っていたのかアインシュタインは。

本文を読んでみると、

実験とはみえないものを見えるようにすることだ。学習院大学の田崎晴明教授(統計物理)は「初期の関心は、ミクロの世界を目に見える世界につなぐことだった」と指摘する。

おおお、たざきさんだぁ。そうか、意外なところで発見した。いえ、アインシュタインと田崎さんは十分に関係があるから意外ではないのだけど、ぼくはそもそも朝日新聞は読んでいない(1日遅れで母からもらうけどあまり見ていない)のに、なぜ今回は気付いたかというと、「be」だけを別刷でもらったからなのである。どうしてもらったかというと、同じページの「あっと!@デ~タ」というコラムの「地元球団は好きですか?」というプロ野球の「好きな球団」の調査をウチの会社でやっているから。(ぼくの名前は出ないけどね)

田崎さんと同じページに登場しながらも、内容がまるで違うところがネット仲間たるゆえんでしょうか。

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