「発熱素材」とは何か?
『通販生活』2005冬号の特集に
《発熱素材って、どうして暖かいのか不思議で不思議で》
という記事が出ていて東洋紡の「モイスケア」という素材についていろいろ書かれています。
「モイスケア」については、東洋紡のホームページにもいろいろと情報があります。
当社が開発したモイスケアはこの問題を解決し、綿、ナイロンの約7倍という高い吸湿性を備え、また環境条件により吸放湿(呼吸)を長期的に繰り返し、吸湿時には吸着熱を発生するという、ユニークな性能を持ったアクリレート系繊維です。
人間の肌から蒸発した汗を吸い取った時の「吸着熱」によって体を暖める
ということなのだけど、この「吸着熱」とは、いったい何か?
シリカゲルが水を吸った時にも発熱するけれども、一度水を吸ったら元に戻すのは大変なので同じことは繊維でやるわけにはいかないだろう。
ちょいと調べると「吸着」という現象には「化学吸着」と「物理吸着」というのがあっていろいろ難しそうだけれども、どうやらこの繊維でいう「吸着熱」というのは、「吸湿発熱」と呼ぶのが妥当な気がする。
つまり、体表面から出てきた汗が蒸発して水蒸気となったものを、繊維が受け止めて液体の水になる時に発生する「凝縮熱」のことであろうということ。たしかにこれなら繊維自体は変化しないから使い捨てにはならない。 が、その凝縮した水はどこへ行くか? どんどん吸湿してずっと保持していたらビニール着ているようなものだから、そうではなくて、適度に外側に出ていくのでしょう。そこではまた「蒸発」するだろうから「気化熱」を失なうことになる。「だったら差し引きゼロで暖まらないじゃないか」と思うのだけれども、「水」の状態で内から外に移動しておいてから外側で蒸発すれば、気化熱の影響は内側にはあまり行かないのだろう。
ということで「発熱繊維」はウソではないと思うのだけど、「発熱効果」は「着た直後だけ」という意見もある(「肌着ぽかぽか」の非科学性 01.18.2002 )
あと、ケチをつけるわけではないけれども「吸湿発熱」は、他の素材でもあるのです。吸湿性が高ければ発熱も大きいということだけど、吸湿だけして、水を逃がさないとひどいことになるから、そのあたりをうまく工夫しているのでしょう。あと、服が「暖い」理由のほとんどは、ふつうの「保温力」、つまり空気を保つことによる断熱効果のためだろうなと思っています。
きのう、あるところでこの素材の話題になった時に、ぼくの予想は「凝縮熱」だったのですが、その場では強い反対にあいました。今でも確証があるわけではありませんが、いちおう当たっているらしい。
水の「気化熱」は、日頃からよく体感できる(濡れた肌にフーッと息をかけると涼しい)のだけれども、「凝縮熱」の方は、なかなかピンと来ない。沸いたヤカンの口から湯気がでている時に、よく見ると湯気が白く見えるところよりもヤカンの口に近いあたりには「何も見えない」部分がある。ここに「水蒸気」があるのだけど、ここにスプーンなどをかざすと、「湯気」にかざした時よりもずっと熱くなる。それは、湯気(液体の水の細かい粒)は自分自身の温度の分の熱しか出さないのに対して、水蒸気がスプーンについて水になった時には、凝縮熱を発生するから。凝縮熱は539cal/g と、大きいのでビックリするくらい熱くなるというわけ。
October 30, 2005 at 08:10 PM in 科学 | Permalink | Comments (0) | TrackBack (0)