日本心理学会創立80周年記念講演・式典
今日、2006年10月1日、表記の会に行ってきた。心理学とは何の縁もないはずのぼくが行くことになった理由はただひとつ。日本の心理学のパイオニア、元良勇次郎(もとら ゆうじろう)が、ぼくの曾祖父、つまり「ひいじいさん」だということがわかったから。当然ぼくが生まれた時から、ずっとひいじいさんたったし、名前くらいは聞いたことはあったのだが、「そういう人」だと知ったのはほんの2年前のこと。そうと知ったからといって、「80周年に呼んでください」などと言うわけもないが、たまたま心理学の先生にそんな話をする機会があったら招待していただいたというわけ。しかも祝辞まで述べさせていただくことに。
会場の赤坂プリンスホテル別館の受付に行くと、「来賓」「一般」と分かれていたのでとりあえず一般のところで受付ハガキを出す、名前を探すがなかなか見つからない。「ご招待いただいたので、もしかしたら」と「来賓」の方を指したら、そちらに名札がみつかった。花のついたリボンとともに。 名札は自分でつけたが、リボンはつけていただく。懇親会の司会をするという木村さんが来てスピーチの確認。「どうご紹介したらいちばん座りがいいですかね」というので「勤め先もないので、勇次郎のひ孫とだけお願いします」とお願いする。
第1部は記念講演。アメリカ心理学会会長の Bruce Overmierさんと、中国心理学会会長の張侃(チャン・カン)さん。それぞれ、英語と中国語の逐次通訳付き。どちらも心理学会の組織の話で、やや退屈だったがまるっきりの専門外の話としてはちゃんと聞けた方か。
休憩時間に、Japan Skepticsの知りあいで今回ぼくが招待していただくきっかけとなった中島定彦さんが、学会の人に紹介してくれる。日本の心理学ワールドでは知らない人はいないという感じの「元良勇次郎」のひ孫ですというと、どなたも「おーっ」といってくれるから楽。その後何の話をするのか、という問題もあるのだが実はそれなりにネタはある。大山正さんは、祖父のことも父のことも知っていて、大そう喜んでくださった。放送大学の西川泰夫さん、東京国際大学の高砂(たかすな)美樹さんは、ぼくが見た放送大学の講座を担当していた人たち。もうひとりの担当者でぼくがテレビで見た佐藤達哉さんが来ていなかったのは残念。
パーティーは立食だが、ステージ前に少しだけテーブル席があって、来賓はそこに座れる。心理学会はお年寄り多くて、ぼくなどは若憎もいいところなのだが、何しろパイオニアの子孫として招待されているのでこれでも「来賓」なのだ。テーブルに行くと東洋(あずま ひろし)さんがいた。おお、この方ならぼくも名前は知っている。自己紹介するだけで30秒くらいは話ができる。さらに同じテーブルには市川伸一さんがいる。この人の書いた本は5冊くらい読んでいて、ちょっとしたファンで、しかも妻が研修で市川さんの講義を聞いて気に入っているという人。このチャンスを逃がすはずもなく、いろいろと話をする。立食だから食べ物を取りにいこうか、と思っているうちにコンパニオンさんが次々と持ってきてくれる。「おお、これが来賓というものか」。
さて、いよいよスピーチの時間だ。パーティーでの「ご歓談中ではございますが」というタイミングのスピーチは、みんな聞いていないので実はかなり嫌なのであるが、そうも言ってられないので構わずしっかりしゃべる。これまでになく準備を重ねて、前日妻の前でリハーハルまでやっただけあって、問題なく終了。内容は《心理学には縁がなかったが、放送大学で勇次郎の業績を知り、Japan Skepticsで心理学会の人と知あったおかげで、今日ここに来ました》というもの。《会社を辞めた「変化の年」に、80周年に呼ばれるとは、「勇次郎が引き合わせた」…とはSkepticの私には言えませんが》というのが唯一のウケ狙いだったが、会場が騒がしかったからか、通じなかったからか、反応不明。それでも、席に戻るやいなや何人かの人が来てくれた。中でも大喜びしてくれたのが血液型研究でおなじみの大村政男さん。スピーチが良かった良かったと、何度も言ってくれた。去年だったかサイエンス・サイトークの収録でお会いしたことがあるのだ。持っていっていた古いアルバムを取り出して、勇次郎の写真をみんなで見た。せっかくなのでアメリカ、中国からのゲストにもごあいさつ。Overmierさんとはニセ科学の話もしたら「心理学にもニセ科学的な人たちがいる」という話をされる。「うるさくてみんな食べたり話したりしていて、スピーチやりにくかっただろう」と言ってくれたのが印象的だった。
理事長の織田正美さんなどから「珍らしい人に来てもらってよかった」と言ってもらえたのは喜しかった。どう見ても「異色」だったけれども、それなりに楽しんでもらえるようなふるまいはできたのかな。そうそう、「どこでも吸盤
」と「トンでも吸盤」も持っていたのだが、出すタイミングがなかった。
思いがけず、楽しく有意義なひとときを過ごすことができた。ご招待いただきありがとうございました。
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