放射熱暖房の新聞広告
新聞にこんな広告が載っていた。
一般に、広告の文句の中に「遠赤外線」が出てくるとロクなことがないのだが、これはまさにその遠赤外線の放射を利用した暖房だから、その点何の問題もない。いえ、「その点」に限らず、はじめに言っておくと、これはそうヘンな広告ではない。
放射熱を使った暖房は、一般の「対流による暖房」よりも、こんなにいいですよ、という宣伝だ。
ふつうのストーブやエアコンが「空気を暖める」のに対して、放射式の暖房は空気を通り越して、人のからだを直接暖める。ハロゲンヒーターも同じ原理。たき火やストーブに「あたって暖まる」というときも、暖まった空気ではなく、火から直接、熱(赤外線)を受ける。
そのことを説明しているのが、左の文章と、次の絵。
上の絵が、ふつうと少し変わっているのは、赤外線が壁に当たってはね返ってくる部分。直接からだに当たるほかに、壁からはね返った熱でも暖まる、というところ。さて、これはどうだろう。
赤外線は光と同じく電磁波の一種で、たしかに「はね返る」ことはあるのだが、ふつうの壁に当たると、ほとんどはね返ることはなく「吸収」されてしまう。では上の絵はウソかといえば、そうともいい切れない。赤外線は、暖房機からだけ出ているわけではなく、からだからも壁からも、その温度応じて発せられている。よって、壁から赤外線が出てくる絵はウソではないのだが、壁はとりあえず「冷たい」から、そこから出てくる赤外線は暖かくはない。(むしろからだが壁を暖めている)
上の絵のような状態になるのは、(暖房機によって)壁が十分に暖められて、そこから十分な強さの赤外線が発せられるようになった時である。しかし、果してそんな状態になるのだろうか。壁はその奥の空間やコンクリートに向かっても熱を(伝導や放射で)放出するので、これを十分に暖めるのは容易なことではない。「十分」と書いたけれども、1メートルも離れた壁からくる赤外線を「暖かい」と感じるためには、おそらく触れないほどの温度にしないといけないだろう。
よって、上の絵でおかあさんに当たる赤外線は、〈サンルーム速暖DX〉から水平に出ている1本だけだけ、というのが私の予想。
本当に熱を「反射」させたかったら、「反射率の高い」壁でないといけない。目に見える光ならば「白色」ならよく反射するが、赤外線を反射するのは「金属のピカピカした面」、特にアルミホイルの光沢面がよろしい。つまり、壁一面をアルミホイルで覆えば、壁はそれほど熱くならずに、熱が反射してくることが期待できる。
そんな実験をしたのがこれ。
小さなハロゲンヒーターを有効活用しようと、足のむこう側にアルミホイルを貼った段ボールを置いてある。もっとも、どれほど効果があったのかはキチンと測ったわけではない。心理的には「大いに効果がある」と思っているが。
さて、この広告には金属面の反射率に関する実は重大なヒントが隠されていた。
金属(この場合はクロムメッキ)面が、赤外線をよく反射するのでガードが熱くなりにくい、というのはこれまで見たことのない秀逸な説明である。
だから、壁も同じように金属にしないことには反射してくれないのだが。
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