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2009.06.08

13年前に書かれた「足利事件」のレポート

作家・ジャーナリストの日垣隆氏が13年前に書いた足利事件に関する文章を書いています。
DNA鑑定の無茶な使い方から自白の強要まで、当時のさまざまな問題を取り上げて詳しく論じています。

かつて「論座」1996年8月号に書き、そのひとつの章として『情報の技術』(朝日新聞社)に、次いで『情報系 これがニュースだ』(文春文庫)に収録されたのですが、出版社でも絶版(もう増刷されることはない状態)になってしまいました。

というわけで現在は入手が難しいということもあり、有料メルマガ読者にはPDF版を公開してくれました。転載してもよいという許可を取ったので、ここにPDFへのリンクを貼っておきます。

http://www.gfighter.com/images/shop/19DNA.pdf

菅家さんが釈放された直後に今読むと、特にぐっとくる内容です。
最後の方の一部を引用しておきます。

それほど遠くない将来、ヒトDNAの全情報が解読された暁には、ヒトに共通する塩基配列以外の、つまり個人によって異なる塩基配列もすべて特定される。もし指紋鑑定のように「DNA鑑定」による個人特定が可能になれば、憎むべき性的凶悪犯罪の解明にも決定的な証拠として採用されうるだろう。しかし現状は、ある染色体のごく一部の塩基配列のパターンを比較するにすぎず、あくまでDNA「型」鑑定でしかない。血液型鑑定を精緻化したにすぎない現状のDNA型鑑定に、ある人物が「犯人でない」ことを証明すること以上の役割を担わせるべきではないのである。しかも弁護側が事後検証をできず、警察だけが鑑定を独占するようなシステムは時代錯誤というべきであろう。個人特定が可能とされる指紋鑑定では十二ヵ所の厳格な一致が必要なのであり、たとえ十一ヵ所が一致しても他の一ヵ所が不明であれば「一致せず」と報告される。そのような厳格さは、現状のDNA型鑑定に欠如している。だが、DNA型鑑定乱発の御紋との暗示にかかってしまった東京高等裁判所第四刑事部の三人の判事は、九六年五月九日、多くの疑問点を一蹴して原審を全面的に支持、控訴棄却の判決を下した。三人の判事は公判途中から判決に至るまで、一審の宇都宮地裁で無期判決を下した久保眞人判事と、東京高裁第四刑事部の新しい同僚として席を並べていた。
 判決文朗読の直後、「何かいいたいことは」と判事に問われた菅家さんは、手をあげて、「私はやっていません。はっきりいえます」と声をふるわせた。
 こうして徹底検証の場は最高裁に移された。彼は自分で、上告の手続きを済ませたのだ。

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