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2011.03.23

湯気と水蒸気

原発から白い煙があがると「あれは水蒸気です」という解説が入る。

水蒸気は気体状態の水で、無色透明で「見えない」のだけれど、やかんの口から吹き出ている「白いもの」が水蒸気だと思っている人はかなり多い。いや、そんなことは当然知っている理学部出身者であっても「つい」、あれを水蒸気と言ってしまうこともある。ぼくを含めて。

では、あの白いものは何かといえば「湯気(ゆげ)」である。水蒸気という言葉を知っている人は100%湯気も知っているし、お風呂の上に漂う白いものを水蒸気という人はいなくて、みんな湯気という。おそらく、多くの人にとっては、

水蒸気=湯気

なのだと思う。

しかし、日常会話ならともかくテレビのニュースで、しかも〈水蒸気が何たるかを知らなかったら大変なことになる〉大学の先生たちまで、あの白煙を「水蒸気」と言う、あるいは言うのを許しているのはなぜだろうか。

おそらく「ゆげ」という言葉の響きというか、イメージのせいだと思う。どうしても、「ゆ~げ~が、天井からポタリとせな~かに~」という歌詞の通り、のんびりした温泉を思い浮かべてしまう。

「あの白煙はゆげです」などと言う解説者は、次から呼んでもらえなくなるかもしれない。

では、もっと科学的に正確でかつほんわかムードではない用語はないのか。もちろんある。
(液体の)水、水滴、(非常に)細かい水滴等々。要するに、気体(水蒸気)ではなく液体(まれに固体=氷)なのだ。

「あの白煙は水ですね」では、「先生、それは水蒸気のことですね?」とアナウンサーに聞き返されそうだ。

当初は、テレビで聞くこの「水蒸気」がとても気になったのだが、ある時から納得している。なぜなら、それを聞いている国民の95%は水蒸気と聞いて「あのやかんから出ている白いもの」を思い浮かべ、残りの(知っている)5%は「ああ湯気のことね」と理解するので、100%意図が伝わり実害はないから。

さらにいうと、湯気のあるところにはほぼ間違いなく水蒸気があるので、あの白いものは「水蒸気の存在を示すマーカー」だと思うという考え方もある(超音波式加湿機の湯気の近くには、多分あまり水蒸気はない)。

とはいえ、科学を理解する上で水蒸気が何たるかを正しく理解することは大切である。こうなったら、〈日常用語の水蒸気〉と〈科学用語の水蒸気〉は別のものであると教える(納得する)べきなのかもしれない。科学の世界では「100℃の水」と言うこともあるように。

ちなみに、やかんの口をよく見ると「湯気」が出始めている位置とやかんの口の間に、何も見えない部分があることに気付かれると思う。そこに「本物の水蒸気」がある。湯気に手で触っても「アチチ」ですむけど、水蒸気に触ると大やけどをするかもしれない。その話はまた別のところで。

March 23, 2011 at 12:22 PM in 日記・コラム・つぶやき |

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