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2011.04.02

もし私が東電の社長だったら

タイトルの「私」というのはこのブログ主(高橋信夫)のことではありません。東京の中学校で先生をしている知人の中一夫(なか かずお)さんが、今般の東電の対応に疑問をもち、批判だけでなく対案を出さなくてはという思いで書いたのが、下に紹介する文章です。

ごく内輪の人たちに配られたもので、ご本人は広く公開することをためらっていましたが、とても興味深く、是非多くの方々に読んでもらいたくてここに紹介させてもらうことにしました。東電や政府の対応のまずさを批判する文章はよくありますが、具体的な発表文を書いたのは珍らしいのではないでしょうか。

なお、元の文書は「被災地から遠く離れて……いま思うこと(4)」と題したファイルで、以下の引用部分はその一部です。

実は元の文章で中さんは、福島原発の現場で命をかけて働いている人たちに対する、感謝と声援をたくさん述べています。ほんの一部だけですが引用しておきます。

ですから,この事故が起こってからずっと,命をかけての作業をしている人たちに,心の中で感謝と声援を送り続けてきました。「放射能被害が出るとしたら,現場で作業している人だけだ」と思うからです。混乱や疲れがたまった状況では,ミスが避けられません。それにまわりからの批判が加わると,精神的にも疲れは倍増するでしょう。いまは,これだけ困難な仕事をつづけ,成果をあげてくださっている人たちに,その仕事を認め,応援することがいま最も必要とされているのではないかと思えて仕方ありません。そう思い,ホームページから応援のメッセージを送ったりもしています。

私がこの「社長会見案」を取り上げることで、「東電批判」が目立ってしまうことがないよう願っています。。

「こういう説明はかえってパニックをまねいてしまうかも」という心配もします。だから,自信があるわけではないのですが,「どういう説明をされたら納得して,安心して対処できるか」を考える,一つの参考例として読んでみていただけたらと思います。

と、中さんも書いているとおり、「こんなやり方もあるかもしれない」という参考に読んでいただければ幸いです。

もし私が東電の社長だったら ― 最初の会見 ―

中 一夫
2011.3.28

今回の大地震・津波の被害を大きく受け,福島第一原子力発電所で重大な事故が起こっております。〈絶対に地域のみなさんの安全を守る〉という観点から,最悪の事態を想定した対処を行いたいと思います。今後予想される最悪の事態を防ぐために,一定地域の方々の避難などをお願いせざるを得ません。そのことについて説明をさせていただき,ご協力をお願いしたいと思います。

 〈最悪の事態〉というと,みなさんチェルノブイリ原発事故のような大災害を心配されると思いますが,チェルノブイリとは事情が違います。チェルノブイリ原発事故では,さまざまな原因で原子炉の核分裂反応が制御できなくなり,原子炉のふたそのものが爆発で吹き飛び,大量の放射性物質が放出されました。しかも,公表も地域住民の避難なども大幅に遅れ,放射能汚染が拡大してしまいました。

 今回,福島の原発では,6つの原子炉のうち3つが定期点検中で,稼働していた原子炉は半分の3つでした。稼働していた原子炉も,地震により自動的に制御棒が挿入されたので,原子炉での核分裂の連鎖反応は止まってきています。ですから,チェルノブイリのような状態ではありません。 

 けれども,福島第一原発では,今回の津波で大きな被害を受けてしまいました。建物そのものが壊れるということはありませんでしたが,補助電源を含めすべての電源機能が止まった状態にあります。水道も止まっています。そのため,原子炉を冷やすための冷却水の注入ができない状態にあります。制御棒が入っていても,低いレベルでも核分裂は続いていますから,稼働していた炉も,そうでなかった炉も,徐々に温度が上がってきています。それを冷却するために水を入れないといけないのですが,電源が止まっていて,冷やせない状態になってしまっています。

 このままでは,原子炉内の温度が上がり,今後,発生した水素による爆発などが起こる可能性があります。それにより建物が損傷する危険性や原子炉が一部破損する危険性があります。また,温度が上がることにより,原子炉内の燃料棒が溶けだし,原子炉の底の部分に穴が開くという事態も考えられます。いずれも,中の放射性物質が外部に漏れだす危険性が出てきます。それで一定地域の方々の一時移動をお願いしたいと思うのです。

 これは最悪の事態を想定した場合の対処です。避難していただく区域も,最悪を考えての範囲です。それ以外まで被害が広がるとは考えられません。避難をしていただく地域のみなさんが早くもどって普通に生活できるように,全力で対処したいと思います。

 放射性物質がどれだけ漏れて,どれだけ地域を汚染してしまうことになるかは,それぞれの原子炉をどう制御するかによります。それはひとえに「いかに冷却するか」にかかっています。そのため,電源の回復を急ピッチで進めていますし,さまざまな手段での冷却の方法を試みている状態です。

 さらに,福島原発をはじめ,東京電力管内での発電量が大幅に減少しており,長期にわたって回復が難しい状況です。今後,関東全域での使用電力制限などにご協力を願わざるを得ません。今回の地震・津波での被害はそれぐらい甚大です。ですから,原発事故の現場だけでなく,管内全体での電力調整その他でも,困難な仕事が山積しています。

 過去の原発事故の例では,いずれも一つの原子炉だけが問題だったのですが,今回の事故は6つの原子炉すべてで冷却に対処しなければなりません。さまざまな悪条件の下で精いっぱいの対処をしていかなければなりません。この事態への対処には多くの力も必要です。他の電力会社の原発関係者の協力も求めますし,政府や自衛隊などへの援助もお願いせざるを得ません。現場にかかわる人々には,危険な中での作業をお願いすることになります。それらの人たちの安全に十分に気をつけながら,必死の努力をしていきたいと思います。

 いくら想定外の大津波が原因とはいえ,「安全だ」と主張していた私どもの原発でこのような大きな事故が起こってしまったのですから,責任は我々にあります。移動をお願いする地域の方々はもちろんのこと,日本だけでなく世界にも大きな心配とご迷惑をおかけしていることを本当に申し訳なく思います。その責任は,原子炉が落ち着いた段階ではっきりさせ,しっかりとっていきます。けれども,いまはこの事態を収めることに全力をあげていきたいと思います。また,可能な限りそのときそのときの状況をお伝えしながらすすめていきます。多大のご不便をおかけして,不安を与えていることを心からお詫びするとともに,ご協力を心からお願いいたします。

【引用・高橋信夫】

April 2, 2011 at 11:45 PM in 日記・コラム・つぶやき |

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