2008.06.06

日垣隆 『ラクをしないと成果は出ない』

日垣さんの「追っかけ」的ファンなので、どの著書も読むのですが、これは特にすごい本だと思います。「ビジネス書の棚に置いてくれ」と本人が書いていますが、たしかに売れそう。あちこちで品切れという話です。

見開き2ページずつ、100テーマのヒントが書かれています。小飼弾さんの書評によると「この目次だけで十分自己啓発できてしまう人もいるかも知れない」ということだけど、たしかにわかりやすい。

というわけで、手抜きですが目次を貼り付けてしまいます。(日垣隆公式ホームページより)

特に気に入った部分は色を変えてみました。「ぼくもやってます」「できそう」「無理だけど、できればいいな」などなど、基準はいろいろ。

目 次

はじめに

 第1章 基本編
 1 ラクをして成果を上げるのが基本中の基本 
 2 ゴールを必ずイメージしてから仕事に取りかかる
 3 自分にできないことをしている人を、素朴に尊敬する
 4 お金で自分の時間は買えない。他人の時間なら買える
 5 「ぜひ続編を」に即対応できるよう、素材は使い切らない
 6   外部の人に自分の仕事のおもしろさが伝わらなければ、それはつまらない証拠
 7   よくわからなかったら現場に行って考える
 8   気になったら、まず買う
 9   自分に対する相手の優先順位を上げてもらうことが仕事の基本
10 全体像と個別の処方箋を混同しない

 第2章 インプット編
 11 「つまらない」と思ったら、できるだけ早く撤退する
 12 情報収集にのめりこまない。情報とは「出合う」ものだからである
 13 立ち読みは書店でなく家の中でする
 14 若いうちはテーマなしで一日一冊、四〇代は一日で五冊
 15 興味がわいたことは講演やセミナーに出て、全体像と情報源を一気に押さえる
 16 書棚一本の本がたまったら、新しい分野を開拓できる
 17 ブログを世界中の井戸端会議における、「立ち聞き」として活用する
 18 ウソには必ず理由や背景がある。それを探るとインプットが効率的になる
 19 発行部数数千部のメルマガや専門誌や白書類にたくさん目を通す
 20 図書館に行けば行くほど「無駄遣い」になる

 第3章 ネットワーク編
 21 いざという集まりには万難を排して参加する
 22 アイデアは他人の頭で揉んでもらう
 23 メールの未処理は「なし」の状態にして帰宅する
 24 会いたい人にはできるだけ向こうから望んで会ってもらうように仕向ける
 25 お願いした場合は「いつでも」と言う
 26 予測がつかなかったら、親しい友人と賭けをする
 27 人から薦められたものは、無理をしてでも即日取り入れる
 28 期待値を下げる
 29 自分の実力をマッピングしておく。身の丈を知ったうえで見栄を張る
 30 先輩の一言アドバイスには、とにかくまず従ってみる

 第4章 撃退編
 31 締切日に納品しても、返信がないような会社とは仕事をしない
 32 依頼には即決で答える
 33 愉しめない喧嘩は避ける
 34 自爆しない
 35 NGな人には説明しない。NGな人とはモメない
 36 クレームは、成長に不可欠なもの(一割)と、無駄(九割)に分かれる
 37 できるだけ葬式には行かない努力を
 38 三日かかることは一日でやる
 39 苦手なこと」は人の手を借りて解決する
 40 NG上司に煩わされない

 第5章 独立編
 41 本当に「良いもの」は自分で売ってみる
 42 出された問題はすべてその場で解決の方向と、「いつまでに」を明確にする
 43 今の仕事を30年後にもやっているかを自問。もしNOなら続かない
 44 自分の仕事が黒字になっていなかったら、絶対に会社を辞めない
 45 商売道具への投資はケチらない
 46 最初から必ず黒字にする
 47 「この社と切れたら自分がアウト」という取引先は作らない
 48 「やりたいこと」を周囲に話しておく
 49 「好き」を安さの言い訳にしない
 50 独自の販売回路をもち、その売り上げは五年で二倍が最低ライン

 第6章 継続編
 51 好きな仕事を増やすために、好きではない仕事を毎年二割ずつ削除する
 52 「なるほど」と思ったことは、二四時間以内に「やる」メドをつける
 53 過去を振り返らない
 54 「何をしないか」を明確にしてゆく
 55 常に確率を意識する
 56 一発屋でなく、人気(売り上げ)×継続の面積を広げていく
 57 貯金しなくても良いようなキャッシュフローを、常態化する
 58 問題を見つけたら、必ず即日解決の糸口を見つけておく
 59 継続させる小さな工夫を
 60 自由に生きるために健康を維持する

 第7章 組織編
 60 今いるメンバーを前提にする。「上手くいかない」のを彼らのせいにしない
 62 会議や集会は、参加者全員が「待ち遠しい」仕掛けをつくる
 63 自分の「忘れグセ」を前提に、「忘れても、できる」仕組みをつくる
 64 共有する言葉の定義を明確にしないと、誤解が量産される
 65 コーチはするものではなく、優秀なコーチに短期間「つく」のが近道
 66 どれくらい時間がかかるかは先に訊く。ギャラも先に決めておく
 67 インセンティブを高める工夫だけで、成果が上がる場合は予想外に多い
 68 毎日仕事が終わったら、机の上と周辺を完全にリセットする
 69 「約束の優先順位」を見直すクセをもつ
 70 休暇中も仕事をしたほうが、のんびりできる

 第8章 時間編
 71 会議は一企画につき二度だけで終える
 72 決裁は火曜日の午前一〇時半から、と決めておく
 73 探し物は一ヵ月で合計一時間以内に
 74 人を待たせない。待たされても怒らない
 75 「遅刻してしまった!」を先にイメージする
 76 よほどゆとりがない限り、正義に多大なエネルギーを注がない
 77 レファ本の常備は時間を節約する
 78 出欠を迷うイベントには行かない
 79 一万円札と名刺は三ヵ所に入れておく
 80 もう腕時計をしない

 第9章 アウトプット編
 81 ノウハウはどんどん公開する
 82 「好き」をお金にしてゆく
 83 「本格的に勉強したい」分野の仕事を引き受ける
 84 アウトプットしないものはインプットしない
 85 数値目標とその根拠を明白にもつ
 86 同じネタで何度も稼がないように自戒する
 87 「新鮮でおもしろいこと」は三〇秒で説明する
 88 毎晩アルコールが欠かせない人は伸びない
 89 相手を飽きさせず一時間話せたらお金になる
 90 「必要でないこと」は極力やらない

 第10章 生活技術編
 91 死以外の悲劇は、一〇年後に必ず人生の肥やしになる
 92 子どもができたら、「仕事で二〇年後にブレイクする」準備を始める
 93 昨日と違う今日、今月と違う来月、来年と違う再来年にする
 94 加齢とともに遊び時間を増やしてゆく
 95 最悪の事態を想定し、その兆候が出たら動く
 96 よほど親しい人以外にはプレゼントをしない
 97 ドタキャンは月に一度だけ、と決めておく
 98 旅行用の持ち物リストをつくっておく
 99 子ども部屋より書斎を優先するのが、家族のためになる
100 大切な人は命がけで守る

詳しくは、以下の書評など見てください。

★ビジネスブックマラソン:
 http://tinyurl.com/65efyr
★404 Blog Not Found:
 http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51056338.html
★マインドマップ的読書感想文:
 http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/51425819.html

June 6, 2008 at 09:52 AM in 書籍・雑誌 | | Comments (3)

2007.08.03

吸盤は「引っぱる」からくっつく

『吸盤のすべて』みたいのものを書きたいと思いながら1年がすぎてしまったので、思いつくままメモ書きしておくことにした。

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ふつうの吸盤は「押しつける」ことによってくっつく。吸盤と壁の間にある空気をできるだけ追い出して「真空度」を高めようというわけ。

一方、吸盤には壁から「離れよう離れよう」という力が働き続けている。あまりよくくっついていないと、やがてこの離れようとする力に負けて吸盤は外れてしまう。

だったら、なぜそんな「離れようとする力」をかけさせているのだろうか。ゴムなどの材質の弾性のためにいやでもそうなってしまうからだろうか。2006年7月16日にこんなことを書いたメモがある。

| 1.市販の吸盤の仕組み
| いつも「外れよう」とする力が働いている。
| はじめに空気を抜くためにつぶすのはわかるが、そのあと常に「外れよう」とするのは無
| 駄なのではないか

そして、次のようにも

| 2.引っぱらないとくっつかないのか
|  平面のままであっても、面との間に空気がなければそれでよいはず。
|  「真上」に引き上げようとすれば、外せないのではないか

「真空室」と呼ばれる部分ができることによって、くっつく力が発生するという説明を聞いて、「そんなものなくても、単に面と面が密着して、そこに空気がなければいいのではないか」 と、当時は考えていた。

ところが、「トンでも吸盤」を使うとわかるのだが、「引っぱっていない状態」では、吸盤は「くっついていない」のであった。「くっついている」か「いない」かを厳密に判定するのは難しいが、テーブルに置いたトンでも吸盤を横にすべらせると簡単に動く。しかし、上に引っぱっていると動かない。「ひょっとして『引っぱるから』くっつくのか」と、ある時ようやく気がついた。ふつうの吸盤は手では引っぱらないが、ゴムの弾性によって引っぱられている。

では「引っぱられる」と何が起きるのかといえば、空間が広がって負圧状態が作られる。ここが間違いやすいところなのだが 吸盤の中がすでに真空になっているのなら、空間を広げる必要もないのだが、実際には大気圧と同じ圧力を持った空気が残っていて、この段階では「くっつく力」は発生していないと考えられる。弾性によって空間が広がると気圧が下がり大気が押す力が勝って、吸盤はくっつく。押しつけられることによって、材料と壁面との間の密着度が高まって空気が漏れ入らなくなるところもポイント。ふつうの吸盤では定かでないが、トンでも吸盤は、引っぱる前はスカスカで空気は自由に行き来しているようなので、引っぱることによって、シートが押しつけられて、漏れなくなる効果は大きいだろうと考えられる。

結局は、一般に言われるのと同じく「大気圧によってくっついている」ということになるのだが、「引っぱることによってくっつく」、というのはなかなか興味深い。

そういうわけで「引っぱる」必要がある一方、引っぱりすぎると外れてしまうというジレンマがある。そこを解決しているのが「リフター」などと呼ばれる、強力吸盤。それについては、またいずれ。(2007-08-03)

【関連記事】 
トンでも吸盤が飛ぶ
 「トンでも吸盤」デビュー間近」

August 3, 2007 at 12:39 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0)

2007.05.08

『 図解 物理のウンチクがたちまち身に付く本』

Untiku『 図解 物理のウンチクがたちまち身に付く本』

こんな本が出ました。
1,050円 (本体 1,000円)

横浜物理サークル(YPC)の鈴木健夫さんが中心になって、サークルのメンバー10人ほどで分担して執筆。ぼくもいくつか担当しました。編集にも参加して、結構大変でしたがいろいろ勉強になりました。

出版元の秀和システムの紹介ページはこちら

こんな↓↓内容です。

本書は乗り物、住宅、風景など身近にあるものを題材に物理学の基本と楽しさを親しみやすいイラストや図解とともに解説した物理学のウンチク入門書です。 「車のボディーは壊れやすいほうが安全」「ジェットコースターは前と後でどっちがスリリング」「鉄の塊の船がなぜ浮く」「アポロの月面着陸捏造説を検証す る」「電子レンジが解凍が苦手なワケ」「ドミソの和音はなぜきれい」「スプーン曲げにもコツがある」「気功師が男5人を気で飛ばしたら本人も無事ではいら れない」「赤外線ストーブでやけどはしても日焼けはしないのはなぜ」などなど、今さら聞けないギモンの数々がたちどころに解決。この一冊で物理の楽しみ方 がわかります!

5/10から書店に並ぶ予定ですので、お手に取ってご覧ください。

May 8, 2007 at 11:38 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (3)

2007.04.22

紹介 『ソーシャルウェブ入門』

1年前まではウェブ業界の端の方にはいたのだけれども、「ウェブ本」はあまり読んだことがなくて『ウェブ進化論』すらまだ。そんなぼくが『ソーシャルウェブ入門』を読むことになったのは、著者が知人であるからというのが正直なところ。知人とはいっても、知り合ってから間もないし、著作が面白いかどうかという期待は特にしていなかった。が、読んでみるとこれが「流れるように」ページが進んでいく。

著者の滑川海彦氏は、ペンネームみたいだけど本名。23年前の役所勤務時代に『データベース入門』という本を書いている。(音楽雑誌にレッド・ツェッペリンの歌詞の訳を投稿していた過去?もあるいう説) ぼくとはほんの半年のつきあいなのだけど、同じ翻訳チームにいることもあって、メールでは毎日会話している。

さて、肝心の本の中身はといえば、Google、プログ、Wikipedia、mixiなど「ブログの今」を、初心者向けの紹介からウンチク的小ネタまで広く深く書いた本。テーマからして、まとまるはずがないと思うのだけれども、どういうわけかスッキリとまとまっている。文章が非常に読みやすい。日頃身近で聞いているような話だからということもあるのだろうが、日本語として無駄がない。読んでいく中で「あれっ」と思って読み返したところがほとんどなかった。そんなのは当たり前のようだけれども、小説でもエッセイでもたいてい、ひっかかるところはあるもの。(もちろんぼくの読解力の問題でもある。)


さてと。書評は異常に苦手なので、同書を紹介しているブログを紹介させていただく。まず小飼弾氏の「書評 - ソーシャル・ウェブ入門[BETA]」)より

私は本書が「面白くてためになる」と書いた。「ウェブ進化論」は面白いが、「使える」といえば疑問である。ウェブ進化論を読んでも、はてブを使えるようにはならない。逆に「グーグル明解検索術」は「使える」が「面白い」とはいえない。Googleがもたらす社会的影響に関して考察してるわけではないからだ。本書が絶妙なのは、論考と解説の分量が絶妙なことだ。本書はWeb0.0まで遡って話をしているにも関わらず、ブログの作り方まで解説しているのだ。

もういっちょ、在アメリカsatomiさんのLongtail Wolrd: 「祝・出版~滑川海彦著「ソーシャル・ウェブ入門」から、

長屋の隠居的コラムには「へえ」がいっぱい。元祖ソーシャルアニマルは「アリストテレス」とか、グーグルをヴィシュヌ神第8の化身クリシュナの別名ジャガーノートにたとえるかと思えば、ネット著作権で「のまネコ騒動」を持ち出したり。ウェブを自分の足で歩いて拾った雑感がとても楽しい

というわけで、なかなか面白いので読んでみてはいかが?

P.S.
上に書いた小飼さんに「紺屋の白袴」とお叱りを受けた著者のブログはこちら「Social Web Rambling

 

April 22, 2007 at 10:38 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0)

2005.09.27

『人はなぜお金で失敗するのか』G.ベルスキー&T.ギロヴィッチ 鬼澤忍訳

G. ベルスキー & T.ギロヴィッチ: 人はなぜお金で失敗するのか
『人はなぜお金で失敗するのか』

【原著】
"Why Smart People Make Big Money Mistakes"
by Gary Belsky and Thomas Gillovich  1999

著者のひとりであるギロヴィッチは、『人間この信じやすきもの』("How We Know What Isn't So")という本を書いている。

この本は、認知科学、認知心理学ではかなり知られた本であり、「ニセ科学批判」を志す?人にとっても必携の書ともいえる。1999年頃、認知科学の講議を三宅なをみさん(中京大学)から受けた時にこの本の一部が教材に使われていて、それがきっかけで認知科学に興味をもったようなもの。そしてskepticへと繋がった。

あまりに気に入ったので「他にGillovichの本はないのか」と当時探してみつけたのが、ここで紹介する『人はなぜお金で失敗するのか』である。翻訳はでていなくて、認知科学関係の人に「この本いいですよ、訳しませんか」と話したことを覚えている。

前置きが長くてすみません。この本を読むために上記の話は一切必要ありません。

心理学者のギロヴィッチと資産運用担当ライラーのベルスキーが組んで書いたこの本は、タイトルの通り「お金のことでいかに多くの人が失敗するか」を書いたものである。そして、その理由の根源は、
・自信過剰
・思い込み
であるという。

「心の会計」という言葉が使われている。
経済学者に言わせれば、「ルーレットで儲けた1万円」も「給料の1万円」も、「税の還付金の1万円」もみな同じ「1万円の価値」を持つ、と考えられている。ギャンブルで儲けた金であろうと、給料であろうと、自分の全財産への影響を合理的に計算すれば、使い方に変わりはないはずである。 しかし、ふつうの人間はそうはいかなくて「道でひろった1万円」は、「給料の1万円」よりも、よく考えもせずに使ってしまう。このように、本来「同じ価値」のはずのお金に「違った意味」を持たせることを「心の会計」と呼んでいる。ふだんの食料品の買い物の費用には十分気をつけている人が、電化製品や家を買う時には、かなり大ざっぱになるのも「心の会計」の一例。

「心の会計」がいつでも悪い、ということではないが、そのために誤った判断をする恐れが多い、ということをいろいろな例で示してくれる。

1.あなたは10万円をもらった上で、次の2つの選択肢を与えられた。
 A・・・さらに5万円もらえる。
 B・・・コインを投げて、表が出ればさらに10万円
     裏が出ればそれ以上は何ももらえない。

2.今度は、20万円をもらった上で、次の2つの選択肢を与えられた。
 A・・・5万円をとりあげられてしまう
 B・・・コインを投げて、表が出れば10万円を取りあげられしまう、
     裏が出れば、何も取りあげられない。

実験結果によれば、多くの人は「1」ではA(確実な5万円の利益)を選び、「2」では、B(10万円損するか、全く損しないかの5分5分のギャンブル)を選ぶそうである。(たぶん、ぼくもそうだろう)
「もらえる」ものは確実に。「失うもの」は、少しでも減らすチャンスに賭ける、というわけである。

しかし、みんなが避けた「2-A」は、実は「1-A」と全く同じ結果になるのである。どちらも「確実に15万円が手元に残る」のだから。一方、Bは、1でも2でも「うまくいけば20万円、そうでなければ10万円残る」という点で全く同じである。

この問題は、「どちらが正しい」というものではないけれども、この例を見るだけども人の考えることが結構いい加減であることがわかるのではないだろうか。

あなたはA社とB社の株を、どちらも1000円で買ったとする。3ヶ月後、A社の株は1500円に値上がりし、B社の株は500円まで下がってしまった。このあと、両社の株価がどうなるかは、予想はつかない。さて、あなたはどうするか?

こんな時、A社の株を売って500円の儲けを確定しようとする人は多いが、B社を売って「500円の損」を確定しようとする人は少ない。 A社株を持ち続けて、もし下がってしまうと、現在の「500円の儲け」が減ってしまう。一方、B社は、今売れば「確実に500円の損」だが、持ち続けていればいいことがあるかもしれない、と思ってしまう。
「値上がりしている株を早く売りする」ことと「値下がりしている株を持ちすぎる」ことは、どちらも非常に多い失敗だそうだ。「損失を確定させたくない」(「損失の嫌悪」という)気持ちからである。

6年前にこの本を読んだ時に特に印象に残ったことが2つ。
ひとつは「三つの扉」問題。

 あなたの前に三つの扉がある。そのうちひとつの扉の向こう側には豪華賞品(クルマ?)が、残りのふたつにはタワシが入っている。
 まずあなたは、ある扉(A)を選びました。ここで司会者が残った扉のひとつ(B)を開いて見せると、そこにはタワシが入っていました。そして、こういうのです、
「あなたは、今選んでいる扉(A)から、残ったひとつの扉(C)に変更することができます。変更しますか?」
さあ、あなたはどうするでしょう。

 この問題は大いに気に入って、あちこちで紹介した。その後、いろんな本でも見ることがあったのだけれども、最初に見たのがこの本であった。

もうひとつが「インデックスファンド」。当時も今も株には興味ないけれども、インデックスファンドだけは理解した。「株式市場全体が右肩上がりである」ことだけに期待した株の買い方といえばいいだろうか。個々の銘柄の上がり下がりを予測するのとは全く違うものと感じた。その後も「ファンドマネージャーなんていい加減なもの」という話を読むたびに、インデックスファンドのことを思い出す。

例のごとく、書評は苦手でうまく伝えられた自信がないので、他にこの本のことを書いた人のページをいくつか紹介しておきます。失礼ながら、URLだけ。

http://pitecan.com/bib/Belsky_MoneyMistakes.html
http://plaza.rakuten.co.jp/kajitta/diary/200504150002/
http://iii.moo.jp/review/r2/money_mistakes.shtml

September 27, 2005 at 03:12 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.09.02

J.R.Mahan "Radiation Heat Transfer: A Statistical Approach"

"Radiation Heat Transfer: A Statistical Approach"
J. R. Mahan (著), James R. Mahan (著)

チンダルの熱の本("Heat: As a Mode of Motion")に触発されて、Maxwellの "Theory of Heat", Max Planckの"Theory of Radiation Heat"をかじっている途中なのだが、print.google.com で遊んでいたら、この本を見つけて、また欲しくなって買ってしまった。

著者はVirginia Tech で30年以上、放射熱の研究をしてきた人で、モンテカルロ・レイトレース法(MCRT)という手法を使って放射熱を解析している。もちろん、ぼくにはまだ何のことだか全くわからない。

この本は、Wiley というまともな出版社から出ているのだけど441万2千円以上もするとてつもなく高い本です。需要がないのでしょうか。(2005/9/4 栃木庭球屋さんのご指摘で価格修正)

シロウトなりに放射熱のことを勉強するにしても、もう少し他に適切な本があるのでしょうが、マニアとしては、ついつい買ってしまうのである。3ページくらい読んだところでは、とりあえず読めそう。

ところで print.google はすごい。ふつうのGoogleはwebページの中を探すのだけれども print.googleは「本の中身」を探すのである。もちろんすべての本を探せるはずはなくて、登録されているほんのわずか(何冊だろう)の本なのだけれども、古い本もあれば、この本のように出版されて数年しかたっていなくて、かつ売れそうもない本も入っている。売れそうもないからこそ入れたのかもしれないけど。

本の中を検索できるというのは大変なことで、そうやって本を見つけるのが第一の目的だが、買ってしまった本の中身を検索するのにも役に立つ。上で挙げた "monte carlo"というフレーズがどこで使われているかがすぐわかる。まあ、それだけなら索引でもできるのだが、
"described"と"method"が出てくるページ、などというものも検索できる。(もうちょっとマシな例はないのか>自分)

本には、CD-ROMが付いていて、その中にはMCRTをやるFELIXというソフトの学生版が入っている。果たして、それを使ってみるまでに致るのかどうか。

September 2, 2005 at 01:32 PM in 書籍・雑誌, 科学 | | Comments (4) | TrackBack (1)

2005.08.21

板倉聖宣『虹は七色か六色か―真理と教育の問題を考える』

板倉 聖宣: 虹は七色か六色か―真理と教育の問題を考える

板倉 聖宣: 『虹は七色か六色か―真理と教育の問題を考える』(仮説社。2003)

「虹の色は本当に7色か?」ということは、時々話題になる。身もフタもない(でも正しいであろう)答えとしては「連続するスペクトルだから何色とは決められない」というのもあるが、ここでは、そちらの話ではなくて「文化」として「7色なのか6色なのか」という話。

15年ほど前に鈴木孝夫の『日本語と外国国』という本で「アメリカでは虹は6色らしい」という話を読んで、かなり強く印象に残っていた。2年ほど前に、板倉聖宣さんが「虹は7色か」という話をした時に「鈴木孝夫の話なら知ってるぞ」と思っていたら、話は、その遥か先を行くものだった。本の中で板倉さんは、虹の色の数そのものについてはともかく、アメリカでも「7色」とされていた時代があり、それが「教育」によって6色へと変わっていった過程を書いている。

この話で、ぼくがく感じたことは「目新しい話に飛び付く危うさ」とでもいうのだろうか、具体的には、「虹は7色」と多くの日本人は疑うことなく思っていたところに、鈴木孝夫その他の人たちによる「アメリカではずっと6色である、その理由は」などの新説を聞くと、ほとんど疑うことなく信じてしまうこと。「7色に決まっている」と思う人は、抵抗を示すかもしれないが、実際にアメリカの絵本などで6色にかかれているものを見せられれば「そうか、アメリカではそうなのか」と納得するに違いない。さらには「アメリカ人は日本人に比べて色彩感覚が鈍いので「青」と「藍」を見分けられない、などという話ももっともらしく聞いてしまう。

板倉説によれば、ニュートンが(非科学的な理由から)7色を主張して、それが広まっていたところに、ある学校教師が、実際には6色に見えることを実験で示して、それ以来アメリカでは6色説が主流になっていることや、日本でも、かつては6色だったことがあるという。

もちろん、この「新説」にも「飛び付く」のは危険なのだけれども、少なくとも以前の説と比べて調査の度合いが深いことは間違いない。ニュートンが7色を主張した話は、アメリカの論文で確認することもできる。
http://www.zianet.com/rainbow/frcolor.htm

ある話を「信じるかどうか」については、いろいろな注意点を考えているのだけれども、特に気をつけているのが「自分にとって都合の良い話には気をつけろ」というもの。
「うまい話には気をつけろ」というのは昔から言われていることなのだが、お金やモノにからまない話だと、ついつい信じてしまうのではないだろうか。ぼくの場合は「定説をくつがえす、ちょっと面白い話」が要注意。「みんなが7色だと思っている虹が実は6色だ」などというのは、なかなか魅力的なので気をつけなければならない。

August 21, 2005 at 01:51 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.06.08

"Theory Of Heat" James Clerk Maxwell

"Theory Of Heat"  James Clerk Maxwell

かのマックスウェルが1888年に書いた本。(初版は1871年)
それが、2001年に復刻されたおかげで、2000円以下で買うことができました。
熱の話がシロウト向きにわかりやすか書かれていて、ぼくには大変有難い。
もちろん放射熱のことも。

まず、熱素(Caloric)説を否定しておいて、続いて "heat"という言葉を丁寧に説明してくれます。

 熱(heat)という言葉は、素人っぽい感じで、科学的ではないようだけれども、これで十分にあいまいさなく〈測定しうる量〉を、表わすことができる。 なぜならば、「熱」と量を表わす言葉とをあわせて使えば「どれだけの量の熱」のことを言っているのかがわかるからである。
 私たちは、熱という言葉には、「熱いもの」という抽象的な意味は持たせない。もし「新しいミルクの〈熱〉」と言いたい時には、〈より科学的な言葉〉である「温度」を使って、「新しいミルクの温度」と言うべきである。

などと書いてあります。

Calorimeter(熱量計)という名前は、Caloric(熱素)から来ているにしても、もう使い慣れているし、Thermometer(温度計)と紛わしいこともないので、そのまま使っている。

など、ひとことづつトリビア的な話が面白い。

読みはじめばかりで、全体のことはまるでわかりませんが、期待しながら読んでいます。熱の「伝導、対流、放射」の話を少し読んだだけでも、何ともいえずぼくの好みです。「対流でも最終的な熱の移動は伝導による」とかね。

ざっと調べたところでは、日本語訳はでていないようです。でればいいと思うんだけどなぁ。

昔は教科書として使われていたこともあったそうです。

《J. Clerk Maxwell, Theory of Heat, London, 1880.
マクスウェル( 1831~79 )は電磁気学を大成したイギリスの物理学者。 この熱学書の初版は1871年刊で、当時最新の気体分子運動理論を紹介している。 展示書には「第十四号」という複本番号が墨書されているので、すでに明治13年ごろ、成立したばかりの東京大学理学部で教科書として用いられていたことが わかる。》だそうです(初版は1871年刊とのこと)
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/tenjikai/josetsu/2005_02/kaisetsu03.html

そうそう、どうやってこの本に出会ったか、というと、Googleのテスト中のサービス「Google Print」 で、"tyndall radiation heat"か何かで検索していたら、この本が見つかったからです。Google Printは「本の中身」まで検索して、見つかったページとその前後を「立ち読み」することもできるのです。

以下に目次を書いておきます。途中で、大量にあることかわかったので、Chapter 5からは、Chapter名だけ。
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CONTENTS

Chapter 1    Introduction

Meaning of the word Temperature    1
The Mercurial Thermometer    5
Heat as a Quantity    6
Diffusion of Heat by COnduction and Radiation    10
The three Physical States of Bodies    16

Chapter 2    Thermometry, or The Registration of Temperature

Definition of Higher and Lower Temperature    32
Temperatures of Reference    34
Different Thermometric Scales    34
Construction of a Thermometer    37
The Air Thermometer    46
Other Methods of Ascertaining Temperatures    51

Chapter 3    Calorimetry, or the Measurement of Heat

Selection of a Unit of Heat    54
All Heat is of the same Kind    56
Ice Calorimeters    58
Bunsen's Calorimeter    61
Method of Mixture    63
Definitions of Thermal Capacity and Specific Heat    65
Latent Heat of Steam    69

Chapter 4 Elementary Dynamical Principles

Measurement of Quantities    74
The Units of Length, Mass, and Time, and their Derived Units    76
Measurement of Force    83
Word and Energy    87
Principle of the Conservation of Energy    92

以降はChapter名だけ。

Chapter 5    Measurement of Internal Forces and Their Effects
Chapter 6    Lines of Equal Temperature on the Indicator Diagram
Chapter 7    Adiabatic Lines
Chapter 8    Heat Engines
Chapter 9    Relations Between the Physical Properties
Chapter 10    Latent Heat
Chapter 11    Thermodynamics of Gases
Chapter 12    On the Intrinsic Energy of a System of Bodies
Chapter 13    On Free Expansion
Chapter 14    Determination of Heights by the Barometer
Chapter 15    On the Propagation of Waves of Longitudinal Disturbance
Chapter 16    On Radiation
Chapter 17    On Convection Currents
Chapter 18    On the Diffusion of Heat by Conduction
Chapter 19    On the Diffusion of Fluids
Chapter 20    On Capillarity
Chapter 21    On Elasticity and Viscosity
Chapter 22    Molecular Theory of the Constitution of Bodies

June 8, 2005 at 03:23 PM in 書籍・雑誌, 科学 | | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.05.26

アメリカの犯罪が激減した理由

"Freakonomics"面白すぎ

この前紹介したこの本、面白すぎ。なかなか読む時間がないので、電車の中とか歩きながらも読んじゃうんだけど、きのうは田園都市線を渋谷で降りたホームのベンチで1時間くらい読んでた。家に帰りたくないわけじゃないけど、何かと雑用に追われるからね。

さて「書評ベタ」のぼくとしては、どう書いたらよいのかわからないけど、

「世間で言われていること、信じられていることが、実は違うよ」

ということを、ちょっとした計算や、思いがけない視点から面白おかしく紹介してくれるという本だと思う。

章のタイトルは

1.学校の先生と相撲とりの共通点
2.KKK(ク・クルックス・クラン)が不動産屋と似ているところ
3.麻薬密売人はなぜ、いつまでも母親と一緒に暮しているのか
4.犯罪はどこへいったのか
5.完ぺきな親とはなにか
6.完ぺきな計画パート2。

といった感じで、どれも面白いんだけど、いちばん「重そう」な話題で、かつ、発表当時に物議をかもしたといわれるのが「犯罪はどこへいったのか」という話。

1989年、アメリカで犯罪件数がピークに達して(って、後から見たから「ピーク」なんだろうな)識者たちは「これからも犯罪が増え続けて大変なことになる」と言っていたそうな。 ところが1990年以降、犯罪は、ものすごい速さで「減り」はじめた。「予想」の外れた学者たちは、「元々『悪くなる』とは言っていない」などと言い訳をしたのに加えて、〈犯罪が減った理由〉をいろいろと考え出したそうな。

1.警察の革新的な戦略が功を奏した
2.刑務所の信頼性が上がった
3.麻薬市場の変化
4.人口の高齢化
5.拳銃保持制度の強化
6.経済の成長
7.警察官の増加
8.その他

それぞれについて、「いかにダメか」の説明があるのだけど、その中では「刑務所により多くの人を置いておけた」というのは、犯罪減少の理由としてそれなりに大きいだろうと著者は言っています。 刑務所に関しては、ひどい議論もあって「刑務所を増やすと犯罪が増える」といって建設反対運動があったそうです。そのことを「地元のチームがワールドシリーズに優勝して、市民たちが大騒ぎして祝うのを見て、その町の市長が、翌年は、シリーズが始まる前に、祝賀会をやるように言った」のと同じようなもんだ、と皮肉ってます。

で、著者(レビット)の考える「犯罪が減った理由」は、

1960年代以降から1973年の「Roe vs Wade」裁判にいたって「人工中絶が合法化」されたからだというのです。

1.特に貧困層において「望まれずに生まれた子どもたち」が非行に走る率は高い
2.中絶によって、その子たちが生まれてこなかったために犯罪は減った

という論法です。

この説は、当然のごとく「中絶を是認するのか」などなどの猛反発を受けたそうです。ぼくはまだ全部読んでいませんし、本人の意見だけを読んでもフェアでないので、いずれ反論も探してみようと思いますが、犯罪数の「激減」を説明できるものが他にないようであれば、悲しいけれどもこれが事実である可能性は高いと思っています。

他には、もっと笑える話がたくさんありますか、相撲の八百長の話は、いずれまた詳しく。

May 26, 2005 at 05:07 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (5) | TrackBack (1)

2005.05.24

"FREAKNOMICS" Levitt and Dubner

Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything
 Steven D. Levitt (著), Stephen J. Dubner (著)

eSkepticというオンラインマガジンで Michael Shermerが推薦していたので早速購入。

例によってぼくは本の紹介や要約が極端にヘタなので、どう書いたらよいのかわからないのだけど、「ものごと、表面的なことにだまされちゃあいけないよ」という話がたくさん載っています。

アメリカ人が書いた本なのに「7勝7敗のスモウレスラーは勝率が異常に高い」という、こちらでも時々話題になりつつ放置されていることが取りあげられていて、「勝率が高い」というところまでは、よく見ることなのだけど、著者は7-7と8-6の対戦を特に取りあげて、その時の対戦では7-7力士が圧倒的に勝つのに、同じ2力士の「その次の対戦」では、8-6力士が「ふつう以上の」勝率を上げている、というところまで調べている。

去年出た本なのだけど、どの程度知られているのかな、「山形浩生さんは読んでるだろうか」などと思ってちょっと調べてみたら、はたして山形さんはamazonでレビューを書いていました。2005/5/20というからつい最近のことですね。


初めてamazonのアソシエート用のタグを貼ってみたけど、テキストの回り込みのやり方がわからなくて、カッコ悪い。

May 24, 2005 at 10:10 AM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.04.13

板倉聖宣『かわりだねの科学者たち』(仮説社)

ひょんなきっかけでこの本を読むことになりました。2年前、板倉さんの本を読みまくっていた頃に買った本なのですが、ほとんど読んでいませんでした。「かわりだねの科学者」ということで、ぼくはなんとなく「欧米の科学者」をイメージしていたのですが、目次を見ると、日本人の、それもあまり名前を聞いたことのない名前が並んでいたので、あまり興味を引かなかったのかもしれません。(でも買った、ってことか)

ジャーナリストの日垣隆さんのメルマガが、ほぼ週刊で送られてくるのですが、海外旅行中ということで、その回は「1987年に書いた原稿」というものでした。「<独学>と<内なる事件>」と題したその話の中には、「芥川賞作品を全部読んだ」時の話とか、松本清張が芥川賞をとった後で、様々な〈人格攻撃〉を受けた話などに混じって、「教育」の話題が書かれていました。(これが、松本清張の話と無関係というわけではなく、『断碑』という作品の主人公のモデルが、実は・・・、という話でうまく撃がっているのだ)

長野出身の藤森栄一という、学歴のないいわゆる「在野の考古学者」の話が紹介され、また、その藤森の先生である三沢勝衛という人の話がでてくる。

 ところで、藤森栄一は中学校のときに三沢勝衛に地理を教わっている。この
三沢も中学を出ただけで苦学して教師になった人であるが、彼は授業の中でも、
身をもって「自分の仮説」を示し、その研究の仕方、また失敗の仕方を生徒と
ともに実地でやってみせるというホンモノの教師であった。教科書だけをやっ
ていたのでは、(いままでのところ)何がわかっていないのかがわからないし、
教科書に書かれていることだけが大切なことだなどというヒドイ錯覚に陥って
しまうことになりかねない。そうではなくて、自ら探究心をもって、何がわか
らないことなのかを見きわめつつ、その解明に乗り出す力を身につけることこ
そが肝要なのだという信念を、その日常の教育の中で実践していたのが、三沢
勝衛であったのだ。そしてまた藤森氏は、この中学(諏訪中学)で石川税とい
う歴史の先生に感化されて考古学に興味を抱いた、と書いている。この人は、
一年間の授業をほとんど古代史で終らせてしまうほどの熱の入れようであった
という。

「仮説」という言葉にまずは反応しました。もちろん「仮説実験授業」の話ではありませんが、生き生きとした授業風景が目に浮かびます。

日垣さんの文章は、この後「教科書批判」「デモシカ教師復活期待」などの話が続き、教育に関するこんな言葉が紹介されている。

ボクが教育学というのもオモシロイなと思ったのは、宗像誠也という人を通
じてであった。とりわけて今でも鮮明なのは、
「教育学が大切なのではなく教育が大切なのだ。教育学は教育のためにあるので
あって、教育が教育学、あるいは教育科学のためにあるのではない」
というセンテンスである(『宗像誠也教育学著作集』第一巻・青木書店)。

何しろ20年近く前に書かれ、まだ日垣氏が「読んでくれる人に無料で配り歩いていた」というものだそうで、今とはかなり調子は違う(違わない?)のだけど、とにかく面白かった。 仮説の知りあいには長野の先生がいるので、いつか三沢、藤森のことを聞いてみようかな、などと思っていました。

と思った翌々日に、ふだんは会うことのないその長野のKさんと高田馬場の仮説社で会うことができたので、ふたりのことを聞いてみたところ、もちろんご存じだった上に、三沢勝衛のことは、Mさん(仮説仲間)が詳しく研究していたというし、さらには、板倉さんの『かわりだねの科学者』に登場しているというではありませんか。早速仮説社にあったその本(売り物ですが)で確認。家に帰って早速読みはじめました。

三沢、藤森のふたりは、

第八章 渡辺敏と三沢勝衛と藤森栄一

として出てきます。この渡辺敏(わたなべ〈はやし〉と読みます)が、これまた信濃の生んだすごい人で、『一壜百験』という面白い実験書が仮説の会員によって「現代語訳」されるなど、この?世界では知られている人なので、ぼくも知っていましたが、三沢、藤森の話は初めて。はたして板倉さんがどう評価しているのか大変気になるところでした。読んだ結果は「絶讃」といっていいほどでした。板倉さんは、まず渡辺敏を調べつづけていて、その過程で三沢勝衛が一緒に書かれているのを見つけ、そしてそれを書いていたのが藤森栄一だったというわけです。この章のはじめに板倉さんは「タナボタ式研究法」の話をしているのですが、たしかにこの藤森栄一との出会いの話はその典型かもしれません。

順序が逆になりましたが『かわりだねの科学者たち』の序論に、板倉さんはこんなことを書いています。

ガリレイ、フランクリン、ランフォード、ファラデー、ジュールなど、欧米の有名な科学者の多くは、個性があふれていて、その伝記を読むだけで、「ああ、科学というのは、こういう自分自身の好奇心を大事にした民衆の中から生まれでたのだな」ということが感じられる。私はそういう科学者が好きだ 
 しかし、現代日本の科学者となると、どうも親しめない。「これがあの科学を生みだしたのと同一種類の科学者たちなのだろうか」と、ただただ唖然とする。その人たちの経歴を見ると、一流中学→一流高校→一流大学と順調に進学、卒業して、海外に留学し、一流大学の講師・助教授・教授となって定年を迎え、何でそんな研究をやったのかよくわからないが、なにしろその分野では日本の権威だといわれている--それだけのことである。現代の日本の科学者は、大衆的な伝記の対象にしようとしても、どうにもさまにならないのである。日本では官僚の伝記のほうが波欄にとんでいておもしろいぐらいである。

そんな中で、

しかし、私はとくにここ数年間、日本にも何人かの個性ある科学者、民衆と問題関心を共にするような生き生きとした何人かの科学者、かわりだねの科学者がいることを知ってうれしくなった。それらの科学者の場合でも、私は必ずしもその生き方を全面的に支持するわけではないが、ともかく日本の科学者のすべてがお役人的な専門家でないことを知ったことは、私にとって大きなよろこびであった。》

として、見つけることのできた「かわりだねの科学者たち」のことを書いた本、というわけです。

目次等は、仮説社のページ↓にあります。
http://www.kasetu.co.jp/book12014.html

April 13, 2005 at 12:56 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (1) | TrackBack (2)

2005.04.11

2005-04-10 本

『刑法三九条は削除せよ! 是か非か』呉智英・佐藤幹夫 洋泉社 760+
『The Old Man and the Sea』Ernest Hemingway Simon & Schuster New York $10 1365円
『「おろかもの」の正義論』小林和之 ちくま新書 740+

『批評の事情』永江朗 ちくま文庫 820+
『新 教養主義宣言』山形浩生 晶文社 1800

ジュンク堂にて。

きのう大阪で「大読書会」というものに参加してきて、いろいろと「読書法」的な話を聞いたのですが、その中で「買ったけど読んでいない本を読むきっかけ」を作る方法というのを質問したら。

1.仕事にする
2.いつまでに読むと宣言してしまう

という答え?をいただきました。

「1」は無理なので、「2」を実行すべくここに書いてしまおう。

39条の本は、ドトールで集中的に読み終ったのだけど、何か書くには重いんだよねぇ。軽いところで永江さんの本に関すること書きかけてます。

そうそう、なんで突然ヘミングウェイか、ということを含めてこいつを今週中に読むと宣言しよう。感想なんか書けないだろうけど。

April 11, 2005 at 12:59 AM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.01.28

『On Radiation』John Tyndall

チンダル先生が1865年5月16にケンブリッジ大学の人たちを相手に「放射」に関して講演したものをまとめた本。

何度もここで紹介してきた『Heat (considered as) a Mode of Motion」の中に放射熱(radiation heat)のことが、詳しく書かれていることを知って、さらには『On Radiation』(放射について)という、そのものズバリを本があるとわかったのでひと月ほど前にBook Finder経由で注文したものが、つい先日届いた。本文が62ページの小冊子。$29.95+送料$7.49は高いようではあるが、江戸時代末期に書かれた原本だと考えると骨董的な価値もあるのだろう。12/27に注文して届いたのが1/24だったかな、船便だろうからまあまあ。

さて、肝心の中身は・・・の前に、まず、この本、あまりに古くてボロボロと表紙やページが外れるので、最初にしたことはコピー。60ページほどなのであまり時間はとられずにすんだ。続いて製本。「製本屋さん」という「手動製本機」を使う。最後に、原本の修復。どうせ読むのはコピーなんだから、原形を留めておいた方がいいかなとは思いつつも、骨董品じゃあないからと割り切って、不細工に修復。

内容は、まだ数ページ読んだところながら期待どおり。プラチナ線に電気を流して熱していくと、まず暖かくなって、赤くなり、オレンジになり、ついには白くなる。そこからの光をプリズムで分けて、などという話から入る。「人間がものを見るためには視神経に何かがぶつからなければならないが」というようなことも。

ここでは、光や熱の波は「エーテル」を媒質として伝わっていることになっている。「ああ、まだそんな時代だったのか」と思う一方で、「ぼくが知りたいようなことは、エーテルで説明がついてしまうのかも」とも。たまたま並行して読んでいる『アインシュタイン 16歳の夢』(戸田盛和著 岩波ジュニア新書)では、エーテル説が打ち破られるところなので、そのちょっと前の時代の人たちがどう考えていたのかを考えると面白い。

January 28, 2005 at 05:10 PM in 書籍・雑誌, 科学 | | Comments (0) | TrackBack (6)

2004.11.21

『へんないきもの』 早川いくを

smile-kani.jpg

「実在する」へんないきもののイラストとコメントの本。
「足が85本のタコ」とか仮死状態になると「絶対零度、真空」でも死なないクマムシという微生物とか。
子どものこら図鑑で見たものとか、「トリビアの泉」で見たようなものも中にはあるけれども、そのほとんどは初めて見るバカバカしさ。コメントがおもしろいからこと成り立っているともいえます。
上の「スマイルガニ」は、ヒライソガニというどこにでもいるカニなのだが、子どもが潮干狩りで見つけて水族館に持っていった。どうもてもマンガなので当然「誰かがマジックで書いた」と思われたが、脱皮した時に本物であることがわかったそうです。ヒライソガニがみんなこんな顔をしているわけではないのですが、こういうのも参加しているところがこの本の面白いところ。
 「王様のブランチ」で紹介されていたので、その日に買いに行ったら新宿紀伊国屋では平積みになっていました。

November 21, 2004 at 11:08 AM in 書籍・雑誌 | | Comments (3) | TrackBack (1)

2004.10.13

"Are You Afraid of the Dark?" Sidney Sheldon

Are You Afraid of the Dark? by Sidney Sheldon

アカデミー出版の「超訳」で、一時はベストセラー連発だったシドニー・シェルダン、最近は見かけないなぁ、と思ったけど、そもそも原作が最後に書かれたのが2000年("Sky is Falling")だというから仕方ないか。

英語小説を読むようになったきっかけが、このSheldon.「これを読むためだけにも英語が読めてよかった」という、明らかな言い過ぎを言ってしまうほどいつもハマっています。
月曜に紀伊国屋で見つけて、「amazonで買おうかな」と思いつつも、普通サイズのペーパーバック版が1800円代と安かったので買いました。他に、いくらでも読まねばならぬ本があるのですが、これを買ったからには徹夜覚悟。
実際には、その日にちょっとだけ、翌日の電車の中(持ち歩くの大変!)で数十ページを読んだあと、水曜から明け方3時過ぎまでかかって一気に読みました。

老眼にはフルサイズの印刷はうれしい。(ハードカバーだともっときれいだけど そのために2倍近くは払いたくない)途中から眼鏡も、遠近両用から読書専用に変えました。思ったほど効果がなかったけど。

あらすじと書評が以下にふたつ。評価がえらく違います。
http://www.multishop.jp/0060742410.html
http://www.cybersaizensen.com/book/2004/b10.html

「先を読めない」ぼくには、Sheldonの作品のトリックが、すべて効果的。この本も楽しませてくれました。とはいえ、今度ばかりは「ちょっとお粗末」と思ってしまうことが多かったなぁ。上の書評でも指摘されています。それでも、いつも通りのドンデン返しはあるし(Sheldonではこのくらいではネタバレにならない)5段階評価なら4くらいかな。

英語がいつにも増して読みやすかったので、上達したのかと思った(ウソ)けど、これを書評によると「今回特に読みやすい」ということです。
珍らしく日本と日本人が登場。アメリカ人が寿司屋で注文するんだけど「hamachi temaki」はないよなぁ。

October 13, 2004 at 02:48 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (2)

2004.10.11

「細木数子妖しき大殺界の女王」 日垣隆

『文藝春秋』2004/11月号に載った日垣隆氏による「細木数子解剖」。
この記事を書くにあたって、最後にどうしても本人を取材したいと思って申し込んだが断われ続けて

    「むしろ会わない方が書きやすい」と意地の悪いことを
    細木事務所に伝えた直後「会いましょう」ということになった。

ということになったそうです。

14ページにわたる記事の内容を要約することは、ぼくにはとてもできないので感想だけにします。

「面白かったけど、なんか物足りない」

うーん、どうしてだろう。細木占いが科学的にどうのこうの、というところは、「今さら言ってもなぁ」とぼくも思うので、日垣さんがそこに重点をおかないことはまあ当然かもしれないのに、それを期待してたのかな。

「予言が当たった」とされていることが、いかにインチキ(というか、「誰にでも当てられる」)であるかということをピシッと指摘しているし、押えるべきところは押えていると思うのだけど、若くして店を持ったり、ダマされたりしながらのし上がっていくところを読んでいると、「占いを憎んで人を憎まず」じゃないけど、不本意ながらも「案外いい人なんじゃない?」という気になってしまうんだよね。

・・・と不思議な感覚を得たんだけど、考えてみると「オカルト批判」の文章というのは、もともと「批判的」な人たちは、楽しく、気持ち良く読めるけど、オカルトな人にとっては、読むに耐えたい(であろう)ものが多いでしょう。そもそもオカルト好きの人は読まないかもしれない。でも、文春のような本に載れば、その手の人も読む可能性が高い。
「アンチ細木」「アンチ占い」のトーンで書くと、本来読んで欲しい(とぼくが思っているような)人たちからは反発を食うだろうから、こうして、微妙に「細木のすごさ」を示しながら、要所要所で「インチキ」を暴くのはよい作戦なのかもしれません。

細木にしても、『水からの伝言』の江本にしても、〈大量に出回っている〉こと自体が問題なので、(マイナーなものではなくて)こういうのを批判することには理由があるのたけど、なんとなく「あんなのがどうして儲けてるんだろ」という「ひがみ」がないかと言われると、自身はないね。

October 11, 2004 at 12:18 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.10.06

なんだかちょっと心配 この熱力学の本

先日買った
□『なっとくする熱力学』(都筑卓司著)
という本を読んでいるんだけど、ちょいと横道モードで「水はとってもかわり者」という話が何ページかに渡っている。
「水は、身近にたくさんあるけれども、物質としてはかなり特別な性質を持っている」という話。熱容量が大きいとか、凍ると体積が増えるとか、クラスター(この本では、塊とか会合とか呼んでいる)の話とか。興味のあるところをわかりやすく書いてあって、よかったのだけど、終りの方でちょっとアヤシくなってきた。

「うまい水は、分子の集合状態が違うのではないか?」という、浄水器メーカー的な話を、「まだわかっていないこと」とはしながらも、かなり期待しちゃっている。

続いて「水にヒステリシス(履歴)があるという」という話になって、「ふつうの水は0度以下ですぐに凍るのに、一度沸騰してから冷めた水は零下10度くらいまで凍らないことがある」と書いている。これを

「一度熱湯を経験した水は、水素結合がしにくいに違いない」

と説明しているけど、これはダウトしたい。湯ざましが過冷却になりやすいのは、水に溶けている空気が少ないからなんじゃないの? ふつうの水と、湯ざましとでは性質が違うのは事実かもしれないけど、空気も何も含まない「超純水」の話ならわかるけど、何かが溶け込んでいる状態で、その溶け込み方が違っているのなら、それは水そのものとしての違いではないと思うんですが、どうでしょ。

奥付を見たら、都筑卓司さんは2002年7月に亡られたそうで、もう聞くことはできませんが、他に教えてくれる人がいることを期待します。

◆オマケ
 こんなこと書きながら読み返していたら、こんなのがありました、

このほか会合性の塊の数を論じたものには、単独のH2Oの1に対して、(H2O)nをknと考える理論もある。もちろんkは1より小さい数とし、温度が高くなるほど小さくなるものと考える。(高橋秀俊:物性研究3(1943)水素結合と誘電的性質)
へぇー、ぼくが生まれる10年前に、こんなこと書いてたんだ、秀俊さん、28才かぁ。

しかし、これだけwebやパソコン進歩してるのに、H2Oくらい、なんでもっと簡単に書けないんだよぉ。これだって、そんなにカッコよくないし。

October 6, 2004 at 06:49 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.10.03

熱力学いろいろ

チンダルの「熱」の話を読むのに、「ふつうの熱力学」もわかっていないのはまずかろう、と今さらながら熱力学の本をいくつか読み始めた。

□『熱力学 -現代的視点から』(田崎晴明著)
 2月に買って20ページくらい読んで放置してあったのを引っぱり出してピストンで重りを持ち上げるところとか、カルノーサイクルなどを見てみる。前よりはかなりわかった気がするけど、「数式が・・・」と一般的な反応をしておく。

□『熱とはなんだろう』(竹内薫著 ブルーバックス)
 図書館で見つけて読んでみてます。この人、たくさん本書いている有名な人だったんですね。先生ではなくて「著述業」だって。 パラパラと読んでいたら〈示量変数の時間変化が非常にゆっくりしているために…〉というようなことが書いてあったので、「ふうん、田崎さんもよく〈示量変数が〉とか書いていたな」と思ったら、田崎さんの本からの引用だった(140ペ)。 このあとに、こんなことが書いてあった。

すでにでてきたが、この本を読んで、僕は大いなる衝撃を受けた。なぜなら、熱力学の専門家と量子力学とか素粒子とかをやっている専門家とのあいだには大きな見解の相違があることを知ったからである。
この前には、『エントロピーから化学ポテンシャルまで』(渡辺啓著)が引かれているので、それとの対比なのかな。実は、まだどちらが「量子力学とか素粒子とかの専門家」なのかわかってないんだけど、田崎さんのことなんだろうなぁ。田崎さんの本で印象に残っていたのが〈ミクロな世界についての知識を「カンニング」せず、マクロな手段で観測できる量だけに基づいて、完結した体系を描き出したい〉と「量子力学などに頼らない立場」をとっているんだろうなと思っていたんだけど、そういう問題ではないか。田崎さんの「熱力学と普遍性」については、別途ちゃんと感想を書かなくちゃ。なんて、そんな大それたこと書けないが。

□『なっとくする熱力学』(都筑卓司著)
 紀伊国屋の「物理学--熱力学」の棚で買ってしまった「いかにも」というようなシリーズの本。ブルーバックスでおなじみだよなぁ、この人。「この書は教科書の副読本として使われることを意図して書かれている」なんて、いきなり書いてあったので、ちょっとドキッとしたが、まあ、教科書じゃないんだからいいでしょう。

□『熱学思想の史的展開 -熱とエントロピー-』(山本義隆著)
 田崎さんの本の中で紹介されていたので買おうと思ったら、出版社で在庫切れみたいだったので、ネットの古書店で買いました。4800円→3000円。題名がスゴイから、ふつうにな手に取ることもなかっただろうけど良い本です。って、ちょっと読んだだけだけど、ラムフォードの実験が「熱素説」を打ち破ったことを強調しすぎるのは「神話」であるなどなど面白い。この「ラムフォードが熱素説を消滅させた(annihilate)」とはじめに主張したのがチンダルらしい、と書いてあるのだけど、これは、まさに今読んでいるチンダル本に書いてあることで、たしかに、そんなことが書いてある。
この話に絡めて、こんなことが書いてある(231ペ)

これまでの--少なくとも1950年代までの--物理学史は,現代から見て「正しい」理論につながる経路にのみ脚光を当てるきらいがあった,現代から見て意味のある研究のみを重視し,加うるに,あたかもそれらが後の「高い立場」での統合を予見してなされたかのように現代的な解釈を施し,他方でその経路から逸脱したものを単なる誤謬や異端として片づける立場といえよう。

いわゆる「後付け」ってやつですよね。ヒドイ話だな、と思いつつ、自分もついついそんな立場をとっていそうなので、真摯な気持ちで読んでしまった。

October 3, 2004 at 06:50 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (2) | TrackBack (1)

2004.09.27

『メジャーリーグの数理科学』

『メジャーリーグの数理科学』 上・下
J.アルバート /J.ベネット 著 
"Curve Ball: Baseball, Statistics, and the Role of Chance in the Game"
by Jim Albert, Jay Bennett
加藤 貴昭 訳 
シュプリンガー・フェアラーク・ 版 
各巻とも2,835円(税込) ISBN4-431-71016-7 

ちょっとタイトルが大げさだけど、大リーグのデータをいろいろな統計的手法を使って表わした本。
「送りバントは意味があるのか」とか「『調子の波』はホントにあるのか」などなど、前々から気にしていたことを、取り上げてくれた嬉しい本だったので、書店で見つけてノータイムで買いました。レジに行ったら、何やらすごい値段でビックリしたけど買うしかないでしょう。

All Star Baseballという1950年代からの野球ゲームの話から始まって、いろいろな「モデル」が、選手やチームの実力をうまく表わせるかどうかを細かく検討している。例えば、あるシーズンの打率が.350の選手は、「実力どおり」.350なのか、実力は低いのに、運良くそのシーズンだけが.350なのか、という命題をわかりやすく説明してくれる。

全般的にちょっとクドイかなという気もするけど、徹底的にやるとこうなっちゃうのでしょう。原書は1巻だけど、翻訳で2冊になったところはハリーポッターと同じ。セット販売ではないけど2冊で6000円近いから、単なるメジャーリーグファンには買ってもらいにくい。アメリカの「スポーツ統計屋さん」の中には「統計学者」はいない、著者は言っちゃってますが、この本で少しは状況が改善されますように。

日本にも野球データを揃えているwebがたくさんあるので、同じような調査をしてみると面白そうです。

訳者は、慶応大学で野球部にいて、マイナーリーグでプレーしたこともある人だそうす。

September 27, 2004 at 01:20 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.09.13

『アルプスの氷河』 50円

アイスキャンディーの名前じゃないよ。
チンダル(John Tyndall)の "Glaciers of the Alps, Mountaineering in 1861, and Hours of Exercise in the Alps "のいう長ったらしい名前の本の前半部分を訳したもの。

チンダルは別に『アルプス紀行』という本も出ていて、また日本の雪の大家、中谷宇吉郎の『アラスカの氷河』という本もあって、どちらも持っているので、つい最近まで『アルプスの氷河』も持っていると思い込んでいたのである。検索してみたのは初めてかもしれない。「日本の古本屋」ではなく、Googleでいきなり探したところ、運の良いことにシロウト古書店で「50円」ででているのを発見。送料にいくらかかってもこれは安い。すると、メールが来てヤマトのメール便なら160円なので、合計200円で良いという。(10円まけてくれた!) さて、その200円をどうやって送金するか? 郵便貯金で送金しようとしたら手数料は130円。うーん、ふだんは高いと思わないのだが200円を送るんだからなぁ。よって、切手で送ることにした。それも封書なら80円かかるところ、ミニレター(郵便書簡)なら60円で送れる、と、これも売り主が教えてくれた。かくして、合計260円で貴重なチンダル本が手に入ることになった。早く来ないかな。
ちなみに原書の方は、6月頃に入手済で、そっちは$8+送料$8弱。これも安かったね。

肝心の内容だけど、氷河の研究がこうじて、すっかり山好きになってしまったチンダル先生の、科学と山のお話。このblogのタイトルの「復氷」の話も書かれている。

September 13, 2004 at 09:55 PM in 書籍・雑誌, 科学 | | Comments (0) | TrackBack (5)

2004.09.01

唯物論者チンダル

このところチンダル(John Tyndall)のことをずっと調べている。というと学者みたいだけど、一冊の本を読んでいるだけでもある。ただ、ここ数日間は、チンダルが「筋金入りの唯物論者だった」ということを知って、そのあたりを(webレべルではあるが)調べているのである。

「原子論」という言葉は、ふつうの科学ではあまり聞くことがないのだけれども、それは「ものが原子でできている」ということが、当たり前になっているから。 天動説や創造説が幅をきかせていた頃は「原子論」といえば「反キリスト教」ということにもなって、そう簡単な話ではなかったらしい。 チンダルは「ものの動きとしての熱」という本の中で(つまり、イギリスの王認協会のクリスマス講演の中で)、「もとが粒からできている」ということを、しつこいばかりに強調している。例えば、「人間が熱を感じる」という話をする時に、「人間の中の原子が動かされて」という話が狭まれる。板倉聖宣さんに言わせると、「当時の原子論者と違って、現代の科学者は原子論は人から聞いてあたりまえになっているだけで、体にしみついていない。だから、簡単に(オウムなどによって)ひっくり返されちゃう」ということである。たしかに、キリスト教とケンカして命がけで原子論を考えている人は違うでしょう。
現代では原子論を信じるために宗教とケンカする必要もないのだけど、小さい時からキッチリと理解しておいた方が良さそうなことはたしか。

さて、チンダルの頑固なまでの唯物論者ぶりが発揮されすぎてしまったのが、1874年にイギリスのベルファストで行われた、「ベルファストでの講演」というもの。
チンダルはここで原子論、唯物論を語るあまり、キリスト教を批判しすぎて、かなり叩かれたそうである。幸いにして、この講演の記録(日本語版)を入手したので、じっくりと読んでみたい。

September 1, 2004 at 03:34 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.08.16

本屋さん

青山ブックセンター(ABC)が倒産して、再建するのかどうのという話なんだけど、ABCはナゼか好きだったなぁ。別に深夜に青山店に行くというわけでもないし、新宿には紀伊国屋が2つもあるんだけど、品揃えが面白いからかな。
サブカルチャーよりちょっと品のいいあたりの本とか、認知心理学っぽい本とかで「へぇー」というのが見つかることがあったような気がする。

ところで、amazonが出来てから、本の買い方はずい分変わっただろうと思ってるんだけど、どうも、〈その分本屋で買わなくなったか〉というとそうではない気がする。以前と変わらないか、むしろ増えたかも。

当たり前の話なんだけど、amazonで買うのは
・洋書
・書名がわかっていて、かつ「今すぐ」でなくてもいいもの
・夜中にweb見てて欲しくなっちゃったもの
本屋で買うのは、
・そこで見つけた時
ということになります。

「買うものが決まっていて書店に行く」というのが実はすごく苦手です。
よほどのベストセラーでもないと、まず見つからない。しかし、店員に聞くのがイヤ。
それでも、書名や著者名がハッキリとわかっている時は、意を決して聞くこともあるけれど、「あいまいな記憶」の時には絶対に聞けない。 その点、紀伊国屋の「KINO NAVI」みたいな検索システムはとてもうれしい。ところが、これがいつも混雑してるんだよね。しかも、やってるやつの操作がトロイ。

あ、話はそれるけど忘れないうちに書いておこう。KINO NAVIの端末のひどいところを。
タッチパネルなんだけど、これが感度が悪いのか、押しても効かないことがよくある。それ自体許せないのだけど、その30倍くらい信じられないのは、その「押しそこない」の時にも、確認音が(成功した時と全く同じように)「ピッ」と鳴ることである。タッチパネルはタッチタイプできないから、入力された文字を見ずに、押すんだけど、「ピッ、ピッ」と鳴っているから安心して押してから見上げると、バサバサと文字が抜けている。みんな、よく画面を叩き割らずに使っているなぁ。

August 16, 2004 at 05:27 PM in 書籍・雑誌 | | Comments (0) | TrackBack (2)

2004.07.26

【書きかけ】The Doctors' Plague

"The Doctors' Plague" Sherwin B. Nuland

W.W.Nortonという出版社の Great Discoveries というシリーズの中の1冊。突然こんな本を見つけるわけもなくて、Skeptical Inquirer July/August 2004の書評に出ていた。本の内容に入る前にシリーズのことを書くと、「著名な作家(prose writerというのは別の言い方があるのかも)による、著名な歴史上の人物(著名にきまってるか)の、簡潔でいて説得力のある伝記」だそうです。これは、Penguin Publishing GroupのPenguin Livesというシリーズを模したものらしい。 そして、著名な作家と史人との「ありそうにない組み合わせ」もウリ。 しかし、そんなこと言われても知らない人だからわからない。例に上がっているのが、 David Foster Wallaceによる"Everything and More: A Compact History of Infinity" Wallaceは、小説や、短編、エッセイなどの作家で、数学者であるGeorge Cantorの「無限の発見」について書くとはふつうは思えない、というもの。 これも面白そうだったけど、買ったのは、Sherwin B. Nulandの
"The Doctors' Plague: Germs, Childbed Fever, and the Strange Story of Ignac Semmelweis"
病気や医者の話だから、一体どんな(意外な)作家が書いたのだろう、と思うと、Nulandは、外科医だというから、別に「ありえない組み合わせ」ではなかった。
・・・おっと、出かけなくてはいけないので続きはまた。