2010.11.03

初めての真の悩み

さっき訳した記事に、

“The First True Web 2.0 App”

という表現があった。

世界で初めて作られたWeb 2.0アプリ、ということなのだが、

「最初の真のWeb 2.0アプリ」
「初の真のWeb 2.0アプリ」
「初めての真のWeb 2.0アプリ」
「はじめての真のWeb 2.0アプリ」
・・・

どうやってもシックリこない。

そう、物書き、特に翻訳者を常に悩ませる「助詞『の』の連続」。

「連続2回までは許す」という考えもあって、ふだんはそうしているのだが、これは「真の」が短かい上にキャッチフレーズ的になっていることもあってか、気になって仕方がない。

「真の」の方を、たとえば「真性」にする手もあるが、ニュアンスがちょっと違う。

「first」という意味の「『の』で終らない」表現、つまり(形容動詞ではなく)形容詞を探すのだが、これが見つからない。

「初なる」
「一番たる」

うーむ。

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2009.12.21

「ごく」の使いどころ

ある小説に「ごく詳しいことまで」という表現があったのを読んで、少しひっかかった。「ごく」というのは、「こくわずか」「ごく稀に」などのやや「否定的」なことに使うものだと、なんとなく思っていたからだ。

【大辞泉】を引くと
・普通の程度をはるかに越えているさま。きわめて。非常に。「ごく親しい間柄」

と出ていた。

なるほど、「ごく親しい」は否定的でも何でもないか。ところが、

【大辞林】を見ると
・数量・程度などが少ない意を表す語に付いて、その程度がはなはだしいさまを表す。きわめて。この上なく。ひじょう。「ごく内輪に見積もる」「ごくつまらないもの」「お仙はこれでごく涙脆いぞや/家・藤村」

とある。

最後の例は「数量・程度が少ない」とは少し違うように感じるけれども、「なんとなくネガティブ」というぼくの感覚に近い。

では、「ごく親しい間柄」はどうだろうか。これ自体には全くネガティブな要素はないように見えるけれども、どういう時にこの表現をするか考えてみると、「ごく親しい間柄の者だけに教えよう」など、「限定しよう」という意図が働く時なのではないだろうか。少なくとも「あの人は〈ごく親しい〉友人です」とは、ふつう言わないと思う。「実はぼく、あの人と〈ごく親しい〉関係なのですよ」というと、そこには「排他的」な臭いがする。

ちなみに、手持ちの他の辞書は、

【明鏡】
1.程度がはなはだしいさま。極めて。「~親しい間柄」「~おおざっぱな性格」「~一部に副作用がある」
2.通常であるさまを強調していう。「~普通[当たり前の]生活」

【新明解】
・その程度が並はずれた(限界に達している)ものであることを強調する様子。「~親しい人/~上等の品/~当たり前の話だ/~少数の人しか知らない/~細」

ちなみに、「ごく」は漢字で書くと「極(く)」だが、「極上」などという時には、もちろんネガティブな意味はなく、あくまでも副詞的に使った場合の話。新明解の最後の例もそれ。

「ネガティブ」と言い切るのは難しいけれども、使える場面がかなり限られていることは確か。新明解の「ごく上等の品」は、違うのではないかと言われるかもしれないけど、何となく「イヤらしさ」がありませんか。考えすぎだろうか。

今のところ、大辞林だけが「少量限定」を言っているのが興味深い。

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2009.11.06

ベースボール用語

野球ワールドシリーズでの松井の活躍の様子を知りたくて、アメリカのウェブのニュース記事をいろいろ見ました。例えば「ロイター通信」の記事、

In becoming the first Japanese player to win World Series MVP honors, Matsui belted a two-run homer, and hit a two-run double and two-run single to lead New York to the championship in their first season at the new Yankee Stadium.

two-run homer は「ツーラン・ホーマー(ホームラン)」と全く同じですが、two-run double、two-run singleがちょっと面白い。日本語では「ツーラン二塁打」や「ツーランヒット」とは言いません(two-base hitではなくdoubleというのも、何となくカッコいい)。

「タイムリーヒット」とは言うけどなぁ、と思いながらよく考えてみたら「2点タイムリー」とか「2点タイムリー・ツーベース」という言い方がありました。それでもホームランとは言い方が違うなぁ、と思ったけど、「2点本塁打」という書き方もありました。口で言うことはあまりないけど。

タイムリーヒットは、RBI singleということが多いようです(RBI: Run Batted In=打点)。"timely hit"は「和製英語」とする説が見られますが、英文での用例もありました。ただし、それが「正しい英語」なのか、日本人がらみなのか、あるいは「逆輸入」されたのかは不明。野球用語のいわゆる「和製英語」については、まだまだあるので別の機会に。

上の記事でもう一つ "belted a two-run homer"というのがあります。"belt"の動詞は辞書を見ると、ヒットやホームランを「かっとばす」というような意味が書かれていますが、語源は、大きな辞書を見てもわかりませんでした。ベルトでムチのように叩くこともbeltというようですから、そのあたりかもしれません。いずれにしても、beltという動詞を初めて見た人でも、(ホームランを)「打つ」という意味であることは100%わかりますね。

"RBI"と「打点」を比べると、後者の方がスマートな気がするのは日本人だからかな。ちなみに投手の「防御率」は"ERA"(Earned Run Average)、この"Earned Run"が「自責点」です。earned(稼いだ)run(得点)というのが、(エラーなどで転がり込んできたのではなく)「仕事をして得た点」という感じがします。もっとも、打者視点ですから「自責点」とは、ニュアンスがかなり違います。

「死球/デッドボール」は"hit by a pitch" というのですが、まともな「用語」を宛てていないところを見ると関心が低いのかな。もっとひどい?のは「振り逃げ」で、いろいろ調べていますが、ひと言でこれを表す用語がみつかりません。アメリカ人に聞いたら、"steal first base"と言うこともあるとか。

イチローや松井が特に目立った活躍をした時だけ、ニワカMLBマニアになって、スポーツ記事の表現を楽しみます。

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2008.07.23

微分・積分・結石 calculus

結石で痛い目にあったついでに、英語で何というか調べてみた。
尿管結石は ureter stoneまたはureteral calculusというそうだ。ureterは尿管のことらしいから前者はまあそのまんま「尿管の石」。しかし、後の方は何か見覚えがある。

calculus というのは数学の微積分(厳密には違うところもあるけどまあ大体)のことなのだ。それほど前から知っていた言葉ではなかったけど、つい先日、Martin Gardnerが解説した"Calculus Made Easy"という本を買ったところだった。

で、微積分と結石

まあ、calcucate(計算)ともcalcium(カルシウム)とも似ているのだけど、たまたま同じ綴りになった単語は辞書の項目は別になるのに、これは一緒なのだ。

えーっ、とか思ったけど少し考えたら何ということはなかった。

計算(calculate)が、そもそも「石」から来ているのだった。そういえば石で数えたんですよね、昔は。

間にふつうの石とか岩石とかでてくれば結び付けやすかったのだけど、いきなり「微積分と結石」じゃあね。微石分?

OED(Oxford English Dictionary)による語源は以下のとおり。

[L.; = 'small stone', dim. of calx stone, pebble; also, a stone or counter used in playing draughts, a stone used in reckoning on the abacus or counting board, whence, reckoning, calculation, account; and a stone used in voting, whence, vote, sentence.]

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2008.07.02

Remind me, please.

英語のremindという動詞は、
【他動】~に思い出させる、~に気付かせる、指摘する、催促する
という意味で、
It reminds me of my mother.
といえば、「母を思い出す(思い出させる)」
ということなのだけど、もうひとつ、約束を忘れていないかを確認する行為にも使う。
Please remind me to call him.
なら、(彼に)電話をかけるのを忘れないように、事前に言うなりメールするなりしてくれ、という意味なのだが、これをすっきりとした日本語で表せるだろうか。
・催促してください
・知らせてください
・念を押してください
・思い出させてください
・確認してください
・電話するように言ってください
・忘れないように言ってください

意味としては「思い出させる」なのだけど、日本語として
「電話することを思い出させてください」
はどうにもおかしい。

日常会話としては、「忘れそうだから、また言ってね」とかいうところなのだろうけど、こんな当たり前と思える行為にどうして手頃な表現がないのだろう。

約束は自分で責任もって守れ、人に頼るな、ということでしょうか。

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2008.06.08

I am THE swimmer.

水泳の北島康介が、水着にばかり注目する風潮に抗議して作ったというTシャツ。

Iamtheswimmer_2

I AM THE SWIMMER
泳ぐのは僕だ
是我在遊泳

これは英語の教材になりますね。
普通に「僕は水泳選手だ」という意味なら
I am a swimmer.
ここでは、泳ぐのは水着ではない僕なんだ、ということでTHEになっている。

もっとも、普通に I am the swimmer.と言ったら、
私こそがスイマーだ。
という感じだろう。つまり比較する相手は他の選手。ちょっと感じ悪い。

このTシャツ、所属事務所が作ったもので、メッセージは北島が「選んだ」ということなので、だれが考えたのかはわからない。英語を訳したのか、元が日本語なのか中国語なのかもわからない。でも、
I am the swimmer.
を、「泳ぐのは僕だ」と訳せると気持ちがいいだろう。ここでみていると、誰でもそう訳しそうにみえるけど、ここまで明らかな場面じゃなかったりすると結構「私が水泳選手です」なんてやっちゃうのかもしれない。

ところで、
是我在遊泳
のニュアンスが気になるところ。「是」に「(我)こそが」という気持ちが込められているのだろうか。

このTシャツ、早くも販売されているようです。
http://www.upsold.com/imshop/app?main_page=index&design_id=115359

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2008.05.11

brotherは兄か弟か

英語のbrotherは「男の兄弟」の意味で、兄か弟かの区別がない。このため、兄はelder brotherとかbig brother、弟はyounger brother、little brotherなどという。と、習ったけれども、実際に英語の人が弟のことをyounger brotherと言って話題にすることはきわめて少ない。単に、
My brother gave me this book.
などと言う。

elder brotherなどと呼ぶのは、何か特別に年齢関係がわかる必要のあるときだけである。「必要」という意味では、日本人にとっては、それが兄であるか、弟であるかは『常に必要な情報」なのかもしれない。

誰かに女のきょうだいがいると聞いて、それが姉さんなのか、妹なのかを知らずにすませられる日本人がいるだろうか。(妹なら紹介してね、とかいう邪心がなくても)

一度だけだが、アメリカ人男性(当時17歳くらい)に、「誰かにbrotherがいる、というときそれがyoungerかelderか、気になるか?」と聞いたことがある。答えは「気にならない」。

日本では兄弟姉妹の年齢関係をかなり厳密にチェックする。
I have two brothers and three sisters.
などと言われようものなら、全部の順番を説明されるまで、納得しないだろう。

アメリカ人だって、兄さんが弟をいじめたり、威張っていたりするのは日本と同じだとおもうのだが。

ちなみにもっと細かいのが中国で、おじさんにも伯父と叔父の区別をつける。

社会的文化的に年の上下を気にする度合いが違うので、当たり前と言えばそうなのかもしれない。

1990年ごろにアーノルド・シュワルツネッガーとダニー・デビートのTwinsという映画があった。二人が異母だか異父の双子という設定。ただでさえ上下を気にしないアメリカだから、ふたごの兄と弟の区別など知る由もない。というより、決めているとも思えない。

この映画を初めて見たのがアメリカだったので、果たして日本でどうなるかに大いに興味があった。

果たして、数年後テレビで見たときに、シュワちゃんはデビートを「兄さん」と呼んでいた。劇場でどんな字幕がついていたのかは未確認。ストーリー的には年齢関係はいっさい出てこないのだが、「兄さんに会いたい」とか「兄さんを捜しているんだ」などという台詞は、兄か弟かをきめないことにはどうにもならない。

当時伝え聞いたところによると、香港ではTwinsが「龍兄鼠弟」というタイトルになっていたとか。二人の体型を考えるかぎり、日本とは逆の年齢設定になっていると想像できる。

日本では、双子でもどちらが兄かにこだわるのが普通らしい。親も「お姉さんらしくしなさい」とか言うことがあるらしいが、同じ日に産まれて、同じ顔なのにそういわれてもなあ、とか思わないだろうか。

ある知り合いの双子兄弟は、おたがいに名前で呼んで、兄さんとか弟とか言わない。お母さんに聞いたところ、戸籍上は一方が兄になっているが、普段は区別したことがない、と言っていた。(出生届にどちらが何番目かを書く欄があるから)
本人たちが自己紹介するときに、
「○夫の双子の□夫です」と言っていた。これはかなり新鮮だ。
実は英語の twin という単語は、日本語の「双子」とは違って、「双子のうちの一人」をさす。だから、
He is my twin.
I am a twin.
We are twins.
などという言い方をする。

日本の双子兄弟が奇しくも同じ言い方をしたのは、ICU出身なのと関係があるのかどうか。

芸能人では、マナカナはそうでもないがザ・タッチはよく「弟の○○です」という。面白かったのが「大好き五つ子」というドラマ。男3人、女2人の五つ子が主役なのだが、テレビで見るかぎり長男長女がだれかはわからない。おそらく設定もされていないのではないか。呼び方はいつも名前なのは当然として、
「その人誰?」と聞かれると「きょうだいです」と答える(女の子も)。ほかにもなにかと「きょうだい」を連発する。
五人もいたら、かりに上下関係をきめてあっても、呼び方は名前にならざるを得ないだろうけど、日本人的には「弟です」とかいいたくなるところ。ドラマ的には5人を完全に対等にしたかったのかもしれない。

蛇足ながら、「双子が生まれた時、どちらを兄にするのか」というのが話題になることがある。「あとから生まれた方が兄」とかいうひとがいるが、根拠があるのかどうだか(先に着床したほうだ、という説も)。一人目と二人目の間が何時間もあくことがあるけど、それでも後の方が兄だというのか? そのときは誕生日も別になるのだろうか。

それにしてもこんな話題がトリビアになるのも日本ならでは。

男女を含めた兄弟姉妹全体をさすとき、言葉としては「きょうだい」だが、「兄弟」と書くのは、性差別反対主義者でなくても抵抗がある。ひらがなで「きょうだい」とかくことも多いが、男兄弟を指すのと同じ単語というのはいかにもよろしくない。その点、英語には sibling という単語がある。学校では習わなかったきがするなあ。

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2008.05.08

earlier todayは、今以前の今日か

ニュース記事などで「earlier today」という表現がよく出てくる。ealier this monthとかealier this yearなども。

意味としては実に簡単で、「今以前の今日」なのだけど、もちろんそんな日本語はない。読むときは全く気にしなくていいけど、訳すとなるとどうするか。

結論からいえば単に「今日」になることがほとんど。たとえば、

Earlier today, ABC Corporation announced its new product ...

なら、

本日、ABC Corporationが新製品を発表・・・

でよくて、「本日早く」などとはしない。

というのは、まあ自然にそうしていたのだが、最近になって考えたのは「earlier」が入っている理由。なくても意味は変わらないのだけど、earlierがあることによって「過去の話」だということがこの時点でわかる。上の例でいうと、

Today, ABC Corporation will announce its new product ...

という未来の場合もあるわけだが、earlierのおかげですでに起こった、ということがわかる。そのためなんじゃないかな、と。

逆に、原文では単に JulyやMarchなのを「来たる7月」とか「去る3月」などとすることもある。



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2008.05.07

台形と不等辺四角形

どうしようもないタイトルですみません。
まずは、下にあるOALD(Oxford Advanced Learner's Dictionary)の一部を見てください。

Dscf0036

台形と不等辺四角形が、それぞれtrapeziumtrapezoidと呼ばれることが図解されているのだけれども、よくみると、「BrE」(イギリス英語)と「NAmE」(アメリカ英語)の注がついている。

うーむ、trapeziumはイギリスでは台形、アメリカでは不等辺四角形、trapezoidはそのまるっきり逆。

三角形と四角形とかじゃないから、日常生活で困ることはなさそうだけど、図が楽しいのでついつい紹介しちゃいました。

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2008.04.28

「次のソース」って何だ

Firefoxで「ページのソース」を表示すると、ウィンドウのタイトルに、

次のソース: http:/.......;

と表示される。

どこかをクリックすると次のページのソースが表示されるのだろうかと、はじめは思ったのだけどそういうことではない。その後気にしていなかったのだけど、今日ようやくこれが、
「次に挙げるページのソース」
という意味だと理解した。

そういえば、Google Toolbarには「次に送信」というプルダウンがあって、これも何かと思うと、クリックするとGmailとかBloggerとか出てきて、「GmailやBloggerへ送信する」という意味だった。たぶん。
「Send to: 」とかの訳なんだろうな。「次のソース」は「source of」かなぁ。

Macのメニューにも「移動」というのがあって悩ましいけど、あれは「Go」の訳だろう。

メニューやダイアログボックスの短かいことばの訳は苦労が多いので同情するしかないけれども、いくら何でも「次のソース」はないだろう。

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